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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
13章 いざ尋常に勝負

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第547話 魔法戦⑤起きた!

「みんな、静かに離れて。ドラゴンが起きてる」


 わたしは震えた声でみんなに伝え、後ろ向きで下がる。みんなもしずしずと下がり始めた。

 ドラゴンはわたしたちを攻撃したりはしなかった。

 多少遠くにやられた骨に気付いて、顔をあげ口を使って骨を引き寄せた。

 あーーーー。骨の一部がドラゴンの足の下におさまってしまった。

 ひとところに固まって、押さえた声で相談する。


「足の下だぞ、どーすんだよ?」


「総攻撃しかねーだろ?」


「なんだか可哀想」


「あんた、試験をなめてんの?」


 怒りの声をあげたのはマリンだ。


「そうじゃないけど」


「白いの持ち帰らなかったら負けるのよ。A組に負けるのよ? それでいいの?」


「それはよくないけど」


「魔物に同情なんかしてんじゃないわよ」


「ダリアは優しいだけだわ。そんなふうに言わないで」


 キャシーが勇気を奮い起こすように言う。


「骨だって気づいたら誰だって心苦しいのは一緒でしょ? それをわざわざ言葉にして、みんなの士気を下げるなって言ってるの。あんたが空気を読めないっていうのはそういうところをいうのよ」


「マリン!」


 アンナがマリンを言い過ぎだと嗜める。


「で、どーすんだよ、大将?」


 イシュメルが、コトをおさめろといいたげにアダムにふった。


「僕は魔物と人は分かり合えないと思っている。……リディア嬢、君は?」


 え。いきなりだな。聞かれたので、わたしは答える。


「人族を捕食としない魔物とは、共存できる世界になったらいいなと思ってる」


「今、思想を語ってる場合?」


 アイデラがイラッとした声をあげた。


「ごめんごめん。ハハ、やっぱ、リディア嬢は僕の思いつかないことを言うね」


 アダムがわたしを、なぜか哀しげに見る。


「魔物と分かり合えないと思っているけど、ここは誰かの作った空間で、あのドラゴンも生きている魔物じゃなくて、魔の森のために作られて存在すると思うんだ」


「作られて?」


「ああ。記憶かもしれない。昔そんなドラゴンを見たのかもしれないね。それが今魔の森で息づいているんだ」


「それと試験と何か関係があるの?」


 チャドが問いかける。


「あるかもしれないし、ないかもしれない。でも、試験の一部には組み込まれている」


「どういう意味? ズバッと言ってよ、ズバッと」


「ばか、お前、声おっきぃ」


 イシュメルがアイデラの口を押さえた時は遅かった。

 ドラゴンが顔をもたげてわたしたちを見た。息を吸う。


「風、来る、散って!」


 みんな走り出す。

 アダムに手を取られた。

 勘は当たって、ドラゴンは口から風を吹いた。


 恐らくあちらにしては、うるさいからふっと風を出したぐらいだろうけれど、わたしたちはその風に巻き込まれて、風の通り道の中でくるくると回転する。

 風が止み、アダムに抱えられていたのでわたしに衝撃はなかったけれど、アダムは体を打ちつけた。みんな起き上がる。

 ダメージは受けたみたいだけど、そこまででもない感じ。わたしを庇ってくれたアダムが一番痛かったはずだ。


「だ、大丈夫?」


「……僕は鍛えているから平気。そんな顔をしないで」


「ごめん、ありがと」


 お礼を言うと、アダムは笑った。

 手の打ち身に傷薬を塗り、アダムは勘がいいので、ほんの少しだけの浄化にした。それから聖水を飲んでもらった。体力回復だ。


「これって……」


 やっぱり何か感じてるんだね。


「聖水なの。メリヤス先生に穢れを払うのにもらった。飲むと、体が楽になるでしょ?」


 これで聖水にそんな効能があったのかと思うだろう。カモフラージュだ。

 さて、振り出しに戻ってしまった。どーするよ、あの白いの。

 ドラゴンの一息でわたしたちは転がされるぐらいだ。


「そういえば、A組は違う物だったのかな?」


 レズリーが呟いた。そういえば来ないね。


「違う物だったのかもね」


 と隣のニコラスが頷いている。


「総攻撃しても負けそうだな。どうする、本当に」


 オスカーがアダムに尋ねる。

 わたしは考えた。


「さっき、白いの引き寄せたよね?」


 わたしが言うと、隣にいたベンが不審な顔をする。


「うん、大切なんだろ?」


 あの白いのはドラゴンにとって大切……。


「アイデラ 、幻影であの骨を少し離れたところに見せて、ドラゴンが引き寄せようとしたら、幻影をどんどん遠くにやるとかできる?」


「……できると、思う」


 アイデラはごくんと喉を鳴らす。


「その間に本物を砕くの? さっきできなかったよ」


「けど、丸ごと持って帰るのは、無理そうだ」


 うーーむ。


「あ、収納袋! リディアの収納袋になら入れることできるんじゃない?」


 あ。ラエリン天才!


「それさ、どうしても骨の一部が取れなかった時にしない?」


 ドムが言って、その発言にダリアが顔をあげた。


「そうね。それがいいんじゃない? 試験のためにあのドラゴンの守っているものを奪う、どう考えても私たちの方が悪者だもの」


 ジニーが冷静な声音で言った。


「異議なし」


 マリンがそう言って、他の子もみんな頷く。


 アイデラが幻影で白い物を見せて、ドラゴンに取りにいかせる。幻影部隊はアイデラ、オスカー、イシュメルだ。

 その他の子で、骨の一部をなんとか……。


「シュタインさんは、ベトラジアーゼなんて、やっぱり持ってないよね?」


 エトガルが頭をかきながら言う。


「ベトラジアーゼって、薬草学で使った薬品よね?」


 ジョセフィンが聞き返す。


「あ」


 アマディスが小さく叫ぶ。


「何? どうしたの?」


「あ、悪い、エトガルが言って思い出した。あれ骨をもろくできるんだよ、だろ?」


 エトガルは嬉しそうに頷いた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎日たくさん読めて嬉しい。ありがとうございます。 [一言] 取ってくる物が違うと難度も違うと思うけどA組もドラゴンが大事にしている物を取ってくる級の難度じゃないと試験として公平さに欠けそう…
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