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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
13章 いざ尋常に勝負

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第545話 魔法戦③ズル

 中央に近づくにつれ、トラサイズの魔物に遭遇するようになった。ダンジョンに行ったことがある子、狩りなどしたことがある子が中心となって、倒しながら進む。腕輪が点滅した。1時間経った合図のようだ。まだ中央にはたどりついていない。帰り着くのに同じぐらい時間を見ないとだからな。もし2時間かかったら往復で4時間。白い像をいただくのに1時間しか残り時間はない。

 何が起こるか、どんな状態かもわからないから、時間はできるだけ多くそっちで確保したい。

 と、思っているけど、1時間もハイペースで歩けば、いいかげん疲れてくる。

 その心の声に気づいたかのように、アダムが休憩を取ろうと言った。


 わたしは体力回復のおまじないをかけた聖水を配った。それとお菓子も。

 レニータたちから休んでろと言われて、彼女たちが聖水やお菓子を配ってくれる。

 アダムから大丈夫かと聞かれた。

 実際、体力が削られていた。たった1時間でこうなのだから嫌になってしまう。普段ダンジョンに行っても自分のペースで歩くから、ここまで疲労度が強くはない。

 レニータたちが集まってくる。


「リディア、大丈夫?」


「顔色、悪いよ」


 ダリアがわたしの頬に手を伸ばす。小指を首に少し触れさせ熱をみたようだ。


「お前、ダンジョン行ってる時はどうしてるんだよ……あ、お遣いさまか」


 イシュメルが尋ねてきて、自分で答えを導き出す。


「それに過保護な婚約者とお兄さんたちが、君を運ぶか」


 アダムが付け足す。

 その通りでもあるけれど。


「……魔具を使ってるの」


「え? なんだって?」


 小さい声で言ったからか、聞き返される。


「移動するのに、魔具を使ったりしてる」


「「「「「「「使えよ!」」」」」」


 何人もの声が重なる。


「君のことだから、持ってるんだろ?」


「……でもみんな使わないのに」


「リディア」


 ズルになるからと言おうとしたら、マリンに遮られた。


「身体のことだから言いたくはないけど、あんた体力なさすぎだし、歩くのも遅いのよ」


 アンナがマリンの袖を引っ張っている。

 男子がこえーと小さな声で言った。


「あんたがその魔具を使えるなら、私たちはチンタラ歩かなくてすんで助かるの!」


 え、あのハイスピード、チンタラ歩いてたの?


「魔具を使って悪いと思うなら、他のあんたのできることで役立てばいいでしょ? あんたが運動系以外ではすごいのみんな知ってるんだし」


 そっか。移動手段ではズルすることになるけど、他のことでサポートすれば許してくれるし、それができるでしょと言ってくれてるんだマリンは。


「ありがと」


 わたしはみんなにズルいけれど、移動を魔具に頼ってもいいかを確認した。

 みんな頷く。


 わたしは家宝の収納袋から出すふりをして、スケボーを取り出す。

 本当はスクーターが安定感があっていいのだが、あれはちょっとやりすぎな気がする。座るわけだからね。その点スケボーなら立って乗る物だから。

 それにスケボーは魔石ひとつにつき、ひと工程と、普通の魔具と同じようにして作っている。簡素な魔具だからだ。その代わり、魔石を永久に使えるヤツを仕込んでいるだけだ。


「何、その板」


「それで移動できるの?」


「スケボーといいます。移動が楽にできます」


 主に男の子たちの目を釘付けにした。


「どうやるの?」


 リキに聞かれて、わたしはボードに乗っかり、後ろのボタンを踏んで魔具を発動させる。ふよふよと浮かび上がる。


「おおーーーーー」


「どれくらい速度出るの?」


 アダムに聞かれた。


「結構出る。でもバランス取るのは難しくなるの」


 わたしも歩くスピードだったらスケボーに乗れると思ったのだ。


「リディア、座った方がいいんじゃない?」


「うん、落ちそうだよ」


 え。

 わたしがスケボーにブランコのように座ると、みんな安心したみたいだ。


「リディアはそう乗ったほうがいいよ」


「うん、それなら安心」


「……ありがと」


「なー、シュタイン、一度のらせてくれねー?」


 うずうずした感じでイシュメルが言った。


「いいよ」


 ボードから降りて渡すと、イシュメルは飛び乗った。そして踏み込んで結構な勢いで先に進み、木を避けながらまた戻ってきた。

 次々に俺もとみんなが乗りたがり、……初でどうしてみんな乗りこなせるかなー?


「シュタイン家はすごいね。どこで乗るの?」


「ダンジョンとか」


 そう答えるとアダムは大きく頷いた。


「さ、そろそろ行こうか」


 スケボーを返してもらう。そしてスケボーに腰を下ろし、少し高めの位置で飛ばした。


「少し休んだら、回復したな」


「お前も? 俺も」


 アダムがチラリとわたしをみる。


「何?」


「いや、なんでもない」




 それから15分ぐらい経っただろうか。魔物や鳥さえも気配がなくなった。


「あ、あれじゃない?」


 ジョセフィンが指さしたのは、一際背の高い木。


「あ、あっちにも」


 みんな3本の木を見つけた。その真ん中って言うと……。

 あのあたりか。


 A組もまだ来ていないようだ。ちょっとそれはおかしいと感じる。

 わたしたちは最初攻撃を受けないように逃げた。その分余分に時間がかかっているはずだ。それなのにまだ来てないって……持ち帰る物が違うのかもしれない。


「あ、穴が開いている」


「そのままだな」


「どうする?」


 リキがアダムに尋ねる。


「行くしかないだろ」


「ちょっと待った」


「どうした?」


「シュタインさん、そのスケボーちょっと貸してくれない?」


「いいけど、どうするの?」


「中がどうなのか、偵察してくる」


 スコットが言った。


「偵察って、お前」


「だって、穴もどれくらいの深さなのかわからないだろ? 落ちて怪我するかもしれない。ドラゴンがどこにいるかもわからないし」


「でも、お前が危険じゃん。それにひとりになってはいけないし」


「ペアの私が一緒に行くわ」


「ライラ!」


 女子の声が重なる。


「私、土の属性持ってるの。なんとかなるわ」


「俺は魔法はあんまり使えない。けど、こういうのならできそうな気がするんだ。見てくるだけ、すぐに引き揚げてくる」


 みんなが司令官であるアダムを見上げる。


「頼んだ」


 アダムが短く言うと、スコットは嬉しそうな顔をした。


「気をつけて」


 そう言って、みんなで送り出す。

 不安だったけど、スケボーに乗り込んだ二人は数秒で戻ってきた。

 ふたり乗りもできちゃうって、体幹バランス素晴らしすぎ。


「どうだった?」


「中は広い草地だ。所々に木がある。地面まで3メートル以上ある」


 先生……。生徒落ちたらどうするんですか。


「あ、風」


 ダリアが呟いた。


「風?」


「うん、今下から微かにだけど」


「スコット、もう一度見てきてくれないか。風の通り道って書かれていたし、例えばどこかを押せば風が吹くとか、何分置きに風が吹くとか、生徒がここを降りても問題ない何かがあると思うんだ」


 スコットとライラはもう一度穴へ降りて行った。

 長く感じたけど数分だったと思う。


「当たりだ。数分置きに下から風が吹き上げている。そこに立っていたら吹き上げられた。風が止むと落ちた」


 風がない時に飛び降りていたら大惨事じゃん。

 ということで、みんなで風が吹いた時に順番で下に降りることになった。

 わたしは風魔法が使えるので、通り道の風の補佐をするというと、ライラも自分は土で補佐するからと、先に下に降りることにした。


 スケボーはしまい、4人で淵に座った。微かな下の方の風の音がした時、アダムに手を引っ張られて、下に落ちる。

 それはまさに落ちる感覚だった。

 落ちたっと思った時に下から吹き上げられる風で速度が緩み、風が止むと落ちた。お尻打った。みんな上手い体勢で降りてて、お尻を着いたのはわたしだけだ。


「風魔法使えるんじゃなかったの?」


 ………………………………。

 アダムはそういいながら、手で引っ張って立たせてくれた。


 すぐに場所を空け、ライラと補佐をするよう待ち構えた。

 でも魔法を使うようなことは起きなかった。

 みんな上手に吹き上げられた風を使い、地面に降り立つ。



 わたしたちはその広い草地を見回した。

 山となった何かが見える。ドラゴンか、……ドラゴンだろうな……。

 わたしたちは気を引き締めて歩き出した。 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 勝つ気があるなら使えってやつですね。クラスメイト達は正しい。 [一言] 運動能力を生贄に前世の記憶を召喚したと言われても納得するくらい現地民の運動能力がみんな凄い。 リディア級のポンコツは…
[一言] 久々に登場したスケボー。 リディアは相変わらず乗るのが得意で無いようですね。 クラスメイトが初見で乗りこなすのも同じと。 連続更新ありがとうございます。
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