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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
13章 いざ尋常に勝負

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第532話 狐福⑪中途半端な情報

 昼休みに部室横の屋上へアダムを誘う。

 一通り結界や盗聴防止の魔具をセットして向き合う。


「アダム、ありがとう。助かった!」


 今までずっとお礼をいうタイミングを見計らっていたんだけど、いつも周りに誰かがいて、言えなかったのだ。


「僕は指示をしただけだ。けど、よかったね。ブレドが有能だから。……それにしては浮かない顔をしているね」


「報告は聞いたのよね?」


 そう尋ねれば頷いた。


 アダムはメロディー嬢のこと聞いたのかな。あんな自信満々にわたしに害さないようにするといっていたけど、彼女はわたしにとっては攻撃をしてきたぞ。

 でもアダムに助けてもらったのも確かだから言いにくい。


「……お遣いさまから聞いたのかい?」


「え?」


 アダムは悲しげに微笑んだ。


「君のそんな顔の理由。ワーウィッツのことが片づいたのに、納得いってないのは、メロディー嬢のことを聞いたんだね。ブレドは君にそのことは伝えないと言ってたけど、お遣いさまに潜んで話を聞いてもらうことも、君ならできるからね」


 鋭い。アダムは表情を削ぎ落とした顔で尋ねる。


「それで君は、僕にコーデリア・メロディーをどうして欲しい?」


 え?

 わたしはむくれているかもしれない。


「アダムはウチに被害が出ないようにするって言ったよね? メロディー嬢にそんなことはさせないって」


 アダムは頷いた。


「わたしはわたしや兄さまや家族、領地に何かする人は許せない」


 アダムの眉がピクッとする。


「今回のことは、あなたとロサに任せたことだから、どう決着づけるのかまで、お任せします。それから、これから調べていくことで、何があったのか、こと細かにわかったことを教えてもらえると信じます。ただ……」


 アダムが微かに首を傾げる。


「先に言ったように、わたしはわたしや家族、領地に何かする人は許さない。ペネロペ商会に、今ウチの領地は攻撃をされているの。それにはメロディー嬢が関係しているんじゃないかと思っている。アダムがメロディー嬢に何もさせないっていうから、そう思おうとしてきたけど、彼女がかかわっているってわかったら、ペネロペ同様に罰を受けてもらうから」


「……ありがとう」


 ここで、ありがとうかい? まあ、いい。


「アダムも、メロディー嬢が関係していたこと、わたしに言わないつもりだったの?」


「ブレドたちが、そう決めたみたいだからね」


「不服そうだね」


「……もやもやする」


 拗ねたような声が自分から出て、少し驚く。


「メロディー嬢を守るためではなく、君を守りたいからだよ?」


「なんで言わないことが、わたしを守りたいになるのよ?」


 今度は怒ってしまった。

 アダムはあらぬ方に目をやり言った。


「それをわかってもらうには情緒とか、心の機微ってものを理解してもらわないとで……三日三晩はかかりそうだけど、聞く?」


 わたしは大きく息をつく。アダムも話す気がないってことだ。


「わたし、神聖国復興の目的がわかったかもしれない」


 そういうと、アダムは目を大きくした。


「お遣いさまの情報?」


 ん?


「なんで、そう思うの?」


「ジェエル王子から与えられた情報は、ブレドも君も同じはずだ。ブレドは目的までたどり着いていなかった。ということは、君だけに与えられた情報が追加であったと考える。だからお遣いさまから聞いたのかと思ったんだ。違う?」


「お遣いさまから、知ることができたこともあるけど……」


 シュシュ族のことは言わない方がいいのかな?


「聖女候補と一緒に誘拐された時に聞いたの。聖女は奇跡の力を使うと命を削ると」


 アダムは知らなかったのか、形のいい口が少しだけ開く。


「救出された時に、神官長さまにそれを神殿は知っていたのかを、聖女候補が尋ねたの。神殿は知っていた。けれど、聖域で力を使うのなら、寿命が縮むことはないと言ったわ」


 アダムの骨張った手が口元を覆い、何か考え出す。


「……そうか、ユオブリアには聖域があるんだね。だから代々の聖女たちがユオブリアに残った。そして聖域を開くか、作るかそんなことができるのが、神聖国を興すってことなんだね?」


 やっぱり、ブレーンに欲しい。奇跡の力は命を削るほどのものだって情報だけで、わたしが長い間かけてやっと閃いたことを、こいつは瞬時に理解した。


「そして、君は、神聖国を興すことができる唯一の人……」


 え?

 愕然とする。あと1年はあるけど、確かにわたしは条件を満たしているっぽい。

 唯一ではないだろうけど……。

 わたしの中で、そういう捉え方はしていなかったから、ちょっとびっくりしてしまった。


「これは危険だ。世界中で君の争奪戦が始まりそうだ」


 え。


「もっと何かしら条件はあるだろうけど、君がひとつの鍵であることは間違いない。もしそれが知れたら、聖域を作るために君は必要とされるだろう」


「聖域はできない」


「え?」


 あ、思わず言っちゃった。いや、ちゃんと聞いたわけじゃないけど、子狐が言ってた。聖なる方はもう降りてこないんだって。だから、聖域は作れないはずだ。


「ちゃんと聞いたわけじゃないけど、一番大切な要素が……もう無理なんだって。だから、わたしがいても、聖域ができることはない」


 アダムは少し考えてから言った。


「その証拠は出せる? っていうのは、神聖国を興そうと思っている人がいたってことは、その重要な要素がないことを知らずに、中途半端な情報で君がいれば興せると思っているということだ。フォルガード、ワーウィッツ、ホッテリヤ、セインの中で知っていたことだと思うけど、今回失敗したことでそれが広まったら? 中途半端な情報が広まっても、君は危ないままだ」


 ええっ。

 た、確かに、アダムのいうことはもっともだ。


「わ、わたし聞いてくる」


 狐の長老に聞かなくちゃ。


「え、お遣いさまから聞いたんじゃないの?」


 と背中に投げかけられた言葉は、聞こえていなかった。

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