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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
13章 いざ尋常に勝負

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第528話 狐福⑦熱くなる

「ハッ! 取引相手になってくれると言うのですか? リディア嬢との仲を口外しなければという条件で?」


 ジュエル殿下は鼻を鳴らして、不愉快そうに兄さまの短剣を払う。


「まだ立場がわかっていないようですね。私とリディアのことはどう捉えて、どう口外しようとも構いません。信じる人はいないでしょうから」


 ジュエル殿下の目が大きくなった。


「リディアを守るための陣を敷いてきた。私たちは何も困ることはありません。ただ殿下が、同じ王族として困っていることがあるなら、助けてもいいと思った。あなたの知っていることを話すのならね」


 そこまで言ってから、ロサはわたしの手をギュッと握る。


「リディア、いい子だから、自分の部屋へ行っていてくれるかい?」


 いい子? 何そのお子ちゃま扱い!


「わたしは、ロサさまのおそばにいたいですわ」


 どんな会話がされていくのか、最後まで聞いておかなくちゃ。

 ロサはすこぶる笑顔になった。


「私から一刻も離れたくないと?」


 そんなことは言ってない!


 ロサがわたしの頬に手を添える。

 愛おしそうに微笑む。アイリス嬢のシアターで見たとろけそうな笑顔で。

 え。近い、近い、近い、近い、近い!

 わたしは立ち上がる。


「わかりました。部屋に行きますわ」


 最初からわたしを途中で退場させる気だったんだ。それで居づらくするためにベタベタのシチュエーションを作ってきたんだ!

 それを見抜けなかったことが悔しい!


 もふさまと部屋を出て、自分の部屋に戻る。

 ベッドの上にダイブ。

 うーーーーー、何を話しているの?

 足をジタバタさせていると、もふさまが言った。


『モニターとやらで見ればいいのではないか?』


 もふさま、賢い!

 すぐさまルームに移動する。

 フランキーにモニターを出させ、応接室の様子を映し出させる。

 盗み見するのは良くないけど、個人の部屋の中じゃなくて応接室だし、わたしにも関わってくることなんだもの。バツの悪さを正当化して、画面を見入る。


 アダムもそうだけど、ロサも、王族ってのは秘密主義なの?

 なんでわたしに聞かせないようにするのよ。

 わたしは椅子にふんぞりかえった。

 もふさまとモニターを見つめる。


「ずいぶん過保護なのですね。本当に大事にしていらっしゃる」


「彼女は悪意に敏感なのでね、聞かせたくないのですよ」


 ジュエル殿下の目が細まる。


「誰ですか? 彼女をワーウィッツに連れていくよう言ったのは?」


「ロサ殿下の勘違いです。私はただリディア嬢が毛皮に興味があるようなので……」


「そんな戯言を私が信じるとでも? なんでも現在バンデス山で、山狩りをされているそうですね」


 王子が真顔になった。


「バンデス山で狩る狐の襟巻きは特別なものだとか。でも妙な噂があるのですよね。狩人が狩るのを嫌がると。狐が人のような悲鳴をあげるとか……」


 王子の顔が強張る。

 ロサはこの話をするのに、わたしを退場させたのか。秘密じゃなくてアダムが気を遣ってくれたんだろう。

 自分の短絡思考を少しだけ反省する。

 わたしは収納ポケットから聖水を出して、ひと口飲んだ。


「リディアはそんなあなたの国に怯えているため、ワーウィッツに行くことはありません」


「噂というのは根も葉もないから噂なんですよ」


「本当に噂ですか?」


 ロサが威圧的に言った。

 ジュエル王子は声の調子を変える。


「……婚約者候補を決めるお茶会でも、彼女と一緒にいる時間を作っていたのですね」


 ロサがピクッとする。


「知っているんですよ。彼女は婚約者候補ではないのに、ユニコーンの角の検査を受けた。そう文書に残さなくてはいけないようなことがあったのですね。殿下との仲が嘘でも事実でも、そんな噂がリディア嬢について回れば、令嬢としての評判も地に落ちることでしょう」


「それがどうした? そんなことで彼女は傷つかない。逆に彼女の存在を高めることとなるだろう」


 二国の王子が睨み合う。そしてロサが動いた。

 目にも止まらぬ早さで、兄さまから短剣を取り上げ、それをジュエル王子の首元にピタリとつけた。

 兄さまも驚いた顔をしている。

 わたしも口を押さえていた。攻撃的というか、こんなロサは初めて見たから。


「言え。リディアを使って何を企んでいる? どこの国と繋がっている?」


 剣が首筋に……。


「何熱くなっているんです? こんなところで私を害しても何も変わらないと、わかっているでしょう?」


「フランツ、ミーア王女を連れて来い」


 兄さまは胸に手をやり、身を翻した。


「待て! 気がおかしくなったか、ブレド!」


「セイン国は元々なぜかバンデス山に目をつけていた。第一王女の婚約の流れもよく考えてみろ、誰が何を企んできたのか。セイン国は婚約破棄の理由を王女側に押し付け、ワーウィッツの大きな収入源となっている取り引きを打ち切った。その後甘味を輸入先はどこだと思う? ホッテリヤだ。ホッテリヤとセインは繋がっていて、ワーウィッツを食い物にしてバンデス山をいただこうと思っているんだよ、わかるか?」


 ! 激昂だ。

 ロサが剣を突き出したまま、片手でジュエル王子の首元を掴んでガシガシと揺すっている。


「そしてユオブリアにも喧嘩を売っている。リディアにも手を出そうとしている。ユオブリアはワーウィッツのようにやられっぱなしにはならない。ワーウィッツが多少気の毒に思えたから、手を差し伸べてやろうと思ったが、情報源にもならぬなら捨て置くまで。何か言いがかりをつけられても面倒だ。今ここで手打ちにしてやる。なに、ここはユオブリア。王子といえど、お前のことなどどうにでもなる。フランツ、何をしている? 早くミーア王女を連れて来い。全て被せる」


「待て! ミーアは関係ないだろう? それに本当に勘違いをしている。確かにセイン国に甘味の取り引きを打ち切られたが、リディア嬢が女王の素質を備えていると教えてくれたのはフォルガードだ!」

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