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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
13章 いざ尋常に勝負

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第521話 痩せた狐

 そっと手を伸ばす。

 小さく反応して顔を上げる。じーっとわたしを見る。背中を撫でるとゴツゴツした骨に当たる。前に触ったときはもっと毛並みも良かったし、こんな痩せてなかったのに。


「マヌカーニ先生?」


 狐は首を落として目を閉じた。


「お嬢さま、ここにいては風邪をひいてしまいます。中に運びますか?」


 わたしじゃ持ち上げられない。わたしはアルノルトにお願いした。


 狐って何食べるんだろう?

 もふさまに相談すると、正しくは狐ではなくシュシュ族だから、雑食だろうとのこと。


 アルノルトは何か言いたげだったけど、わたしの部屋に運んでもらい、毛布を置いてその上に狐を乗せてもらう。そして毛布をまた上からかけた。


 お水とスープのお皿を用意しておく。

 ちょっとだけ光魔法を当てると、少しだけ目を開け、また閉じる。


「寒くない? 大丈夫?」


 無反応。


「わたしに会いに来たんでしょう?」


 無反応。


「眠るから。なんかあったら、起こしてね。あ、手洗いは……もふさまたちの出入り口は小さいか」


 ドアを少し開けておく。

 ここを開けると、この位置じゃ寒いか。

 毛布ごと引きずって、場所を少しずらす。


「人用の手洗いは、ここを出て右側に行った端。みんなのトイレはね、ドアを出て右側のすぐ横よ。カマクラになってるから」


『終えたら、ちゃんと砂をかけろよ』


 レオが声をかける。ルールがあるらしい。


「じゃあ、おやすみ」


 わたしはザラザラの毛の狐の頭を撫でた。




 夜中に起きて、狐の様子をみようと思っていたのに、朝までぐっすり眠ってしまった。

 狐は毛布の中で目を閉じている。

 でもスープのお皿も、お水のお皿も空になっている。

 良かった、食べられたんだ。


「先生、朝ごはん行くよ」


 着替えてからご飯に誘っても起き上がらない。

 まあ、ひとりになれば食べるみたいだから、ご飯を運んでこよう。

 わたしはお皿を引きあげた。


『リー、バカ狐が何か企んでたらどうするの?』


「んー。どうもしないよ」


『簡単に家に入れたら、ダメなんじゃないの?』


「でもガリガリに痩せてるし。お腹空いてるなら放り出せないでしょ。みんないるし。ウチを訪ねてきたみたいだからね。急にいなくなって気になっていたから、また会えてよかったよ」


 こんな痩せていて、毛並みの悪い姿は見たくなかったけど。

 まるで昨日までのわたしを、見せつけられたような気がした。



 わたしは昨日母さまが持ってきてくれたおかゆを。もふさまやもふもふ軍団は普通のボリュームご飯。狐には昨日までのわたし用のスープ。残りが山のようにある。

 狐の分はアルノルトが運んでくれて、わたしはご飯をいただいた。


 メイドのヘリが来たので、狐のことを頼んだ。

 もふもふ軍団はミラーダンジョンに向かい、わたしは学園だ。馬車で優雅に学園まで。


 もうちょっと食べられるようになったら、ダンスの授業も出ないとだな。でも今週は辞めておきたい。元々ない体力が削られちゃってるから。




 あ、兄さまだ。門の所に兄さまがいた。

 馬車を降り、デルにお礼を言って、別れる。


「兄さま、おはよう」


「リディー、おはよう」


 眩しい笑顔だ。手を差し出されて、その手を掴む。ズンズン歩いていく。


「兄さま、どこ行くの?」


 人気のないところで振り返り、わたしをギュッとする。


「食べられるようになったって、よかった」


「うん、ありがとう。ロサのおかげで」


 ギュッが強くなる。


「に、兄さま、苦しい」


「ご、ごめん。また痩せたね」


 頬に手を添えられる。


「もう食べられるようになったから大丈夫だよ。少しずつ量を増やしていく」


「いつも危険な目にあって。できることなら、安全なところに閉じ込めてしまいたいよ」


 に、兄さまが言うと洒落にならない。


「閉じこもっていたら守れないもの。そうだ、兄さま、伝達魔法の魔具を貸して。いろいろなところに連絡しないといけないの」


「私のことを、伝達魔法の持ち主としか思ってないだろう?」


「朝から兄さまに会えて嬉しかったよ」


 勢いよく言っておく。勢いで言っておかないと、恥ずかしくなるからね。


「いろいろなところって、何を始めるんだ?」


 魔具を借り、歩きながらペリーに探られたことを話した。対策でいくつか思いついたことも。


「リディー、リディーの負担が多すぎる。それじゃあ、また倒れちゃうよ」


「でも兄さま、これはタイミングが大事なの。裁判の結果が出るタイミングで売り出さないと!」


 兄さまはコートのポケットから封筒をいくつか出した。


「おめでとう。……いくつかの声をかけた国から返答がきているよ」


 わたしは封筒に飛びついた。

 封を開けて中を見る。

 ふふふ。いいじゃん、いいじゃん!


「そんなに嬉しい?」


「うん! だって、成功すれば奴らを出し抜けるわ」


 あーあ、もうすぐ教室だ。


「もう、寮に戻るの?」


「うーうん、しばらくは家から通う」


「そうか。気をつけて過ごすんだよ」


 兄さまがわたしのおでこに口を寄せた。めちゃくちゃナチュラルに。

 登園中の生徒がいっぱいいる中で!

 黄色い声が上がる。


「お、送ってくれてありがと!」


 教室に逃げ込む。兄さま人前でそういうことする人じゃないのに。

 どうしちゃったんだろう。


 さてさて、お手紙にはお返事書かなくちゃね。ウッドのおじいさまとホリーさんにも手紙を書いて。エリンとノエルにもお願いしなくちゃね。

 いちいち兄さまに魔具を借りにいくの面倒だな。今まで貯めてきたお金で買えないかな。父さまに相談してみよう。


 年末の試験が近づいてきて、教室はガリ勉モード一色だ。

 魔法戦の授業も男女混合になり、クラス対抗で争わされることも増えてきた。

 わたしは見学だったので、外から見ると、それぞれの欠点がよく見えた。

 D組男子は素早い子が多かった。魔法より、武道が得意なのかと思えば、魔法も使おうと思えばちゃんと使えた。これは指揮系統がしっかりすれば、かなりできるのではと思えた。とりあえず、次の実習の時は武道封印で魔法だけで戦ってみろと言ったら、最後の時間まで配分もできていたので、うん、優秀だ。

 女子はバランスがいい。武術も魔法も使えている。ただ秀でているところがないというのが弱点といえば弱点っぽかった。

 A組の子は圧倒的に魔力が多いので、こちらは効率的に魔法を使わないとだ。


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