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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
12章 人間模様、恋模様

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第515話 攻撃⑪口撃

「少し、お話がしたいのです」


 弱々しい微笑みを浮かべるのは、その方が断りにくいと、わかっているからじゃないかと邪推してしまう。

 ここで逃れて、いつまでもつきまとわれても面倒だ。

 仕方ない。もふさまと一緒にメロディー嬢についていく。

 中庭のベンチに彼女は腰掛けた。わたしも少し間をあけて隣りに座る。


「リディアさまが、私のことを誤解なさっているんじゃないかと思いましたの」


 誤解?


「あなたの最愛の婚約者を護衛にして、さぞお怒りのことと思います」


 いつの話だ。


「誤解などしていませんし、そのことで怒ったことはありません」


 メロディー嬢は、プッと吹き出した。そんな仕草も、上品から外れないのだから、嫌になってしまう。


「リディアさまは、正直でいらっしゃること」


「そうおっしゃるメロディーさまは、嘘つきでいらっしゃいますね」


「まぁ、酷い言われようだこと」


 笑うところじゃないのに、メロディー嬢はにっこりと笑う。


「私はリディアさまのことが、少しも怖くありませんわ」


 は?


「わたしもメロディーさまのこと、怖くありませんわ」


 ふふふとメロディー嬢は笑う。


「あら、怖くないのに、私のこと探ってますの?」


「わたしがメロディーさまを探ったと? なぜそんなことする必要があるんです?」


「そうね、あなたは今困りごとがある。そしてそれを私がしたことだと思っている。そうじゃありません?」


 違うとでも言いたげだ。

 アダムは早速、探り出したのかしら?


「私はあなたを傷つけないわ。婚約者と約束いたしましたしね」


「本当ですか?」


 わたしに向けていた目を、前方へと戻した。


「私の気持ちは誰にも理解できないと思いますわ。だからあなたも私を非難するような目で見るのでしょう」


 隠せてないとは思っていたけど、メロディー嬢にダイレクトに伝わっていたわけね。でも、わたしはあなたを、おいそれと信じることはできない。

 なりふりかまわず兄さまを傷つけようとしたあなた。心に傷を残すやり方で。

 アダムがあなたを止めるというから、彼の意思をひとまず尊重する。


 そうね、兄さまへの執着はなりを潜めたように思う。また気持ちがロサに戻ったのかとも思う。でもそれもまた危険だよね。

 彼女は絶えず、自分以外の何かに執着しているということだから。それがまたいつ、ロサから他のものに移り変わるかはわからない。

 胃のあたりがキリキリと痛んだ。


「あなたがどんな目で私を見ても、どう私を思おうと、それくらいのことで私は傷つきませんわ。だって、あなたに私の気持ちがわかるはずありませんもの。だから怖くないの」


 わたしはイライラしていたんだと思う。お腹が空いているし、胃も痛いから。

 気がついたら〝口撃〟していた。


「わたしが怖いのは野望がある人です。成長したいと思っていて、良くなるためになりふりかまわず行動して。そういう人は人を惹きつける力があって、人を巻き込んでみんなで良くなっていくんです。そしてとんでもないところに登り詰める。そういう人は良くも悪くも怖いです。でも、人の足を引っ張るためだけに何かに執着する人なら、ちっとも怖くありません」


 メロディー嬢の手が膝の上で固く握り締められた。

 メロディー嬢が冷たい目でわたしを睨む。

 彼女に睨まれたのは初めてだった。憎悪がむき出しだった。

 お腹の下の方まで痛み出す。


『わふっ!』


 もふさまが犬のように鳴いて、現実に引き戻される。


「リディアさま、具合が悪いんですの? 顔色が悪いですわ」


 え、幻覚でも見ていたのかと思うほど、打って変わってわたしを心配するメロディー嬢がいた。

 わたしは微かに首を横に振る。


「寮に帰っておやすみになられた方がいいですわ。送りましょうか?」


 わたしは断った。


「そうですね、嫌いな相手に送られても、気まずいだけですわよね?」


 とニコッと笑う。

 具合の悪いときに時間をとってもらってごめんなさいねと、メロディー嬢は謝った。そして微笑む。


「ねぇ、リディアさま。ご忠告、申しあげますわ。同じことが起こっても同じ行動を選ばない人だけが、その行動をした人を責めることができるのだと思いますわ」


 忠告?

 どういう意味?

 同じことが起こっても同じ行動を選ばない?


 ウチの領を潰しにきてるのよね? まずは商会から。

 商会を潰されても、ペネロペを潰すなってこと?

 潰されたからってペネロペを潰したら、あんたも同じ穴のムジナよって言ってる?

 あー、思考がまとまらない。イライラする。お腹はすくし、痛いし。

 そんな取り散らかった思いで、メロディー嬢の背中が小さくなっていくのを見ていた。




 それから2日が過ぎた。

 週の真ん中の家族のランチもパスした。

 ヤバイ。マジでヤバイ。食べられない。

 砂糖水と蜜水で繋いでいる。

 だって固形物を口の前に持ってくると、まだ口に入れてないのに吐き気がするんだもん。

 もふさまやもふもふ軍団にもいい加減、怪しまれている。

 なんだかんだ理由を作って、一緒には食べていないから。

 これが物理的な怪我なら光魔法で和らぎそうだが、いかんせん心の問題なので、光魔法は効かない。

 医者に相談するとしたら、あの出来事を話す必要があるわけで……。そうしたら何もかもバレてしまう。

 元気そうにしているつもりだけど、食べていないのに身体は重たくて、動くのも億劫だ。でも学園を休んだら、先生に知らされ家族にも連絡がいくだろう。

 大人しく何もしないのが得策に思えた。


「リディア、やっぱり体調悪いんじゃない? 保健室に行こう?」


 ダリアに心配される。


「ちょっと寝不足なだけだから」


 机に伏せる。


「リディー?」


 兄さまの声? ノロノロと体を起こすと、兄さまが両目を見開き、そして愕然とした顔になり、わたしの顔を両手で包んだ。

 どうして兄さまが?


 兄さまが静かにわたしを抱き上げた。抵抗する気も起きなくて、兄さまの胸に頭をもたせかけた。



<12章 人間模様、恋模様・完>

いつもお読みくださり、ありがとうございます。

リディアピンチですが、12章完結です。

次章では、やっとこさ年末の試験と魔法戦メインのあれこれとなります。

ペネロペとも衝突予定です。

読んでいただいたことがわかるPVを見て、モチベーションを持ち続けている日々です。ありがとうございます。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

御礼申し上げます!

次章でもお付き合いいただければ、嬉しいです。

kyo 拝

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― 新着の感想 ―
[気になる点] メロディーは自作自演騒動がどこまで、誰までバレてるのか知ってるんだろうか? [一言] アズとお酒コンボは光魔法で治せていたのかな? 双子の予知のこともあるから同じことが起こっても〜は…
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