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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
1章 ここがわたしの生きる場所
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第5話 鞄

本日投稿する2/3話目です。

 うちに針と糸があるかを聞いた。あといらない布があったら欲しいとも。尋ねると手をわずらわせることになるので気がひけるが、バッグがないと小さいから持てるものも少なく何も始まらない。

 布を二つに折って端をぬい、下は三角処理をしてマチを作る。手提げ部分を作れば手提げ袋の完成だ。


 糸を針に通すのも大変なら、縫うのも大変だった。なみ縫いさえも力がないため普通にはできなくて、下から上に刺す、上から下に刺すをひたすら繰り返した。時間もかなりかかった。でもこれで、収穫し持ち帰えれるものが増える。

 あとわたしのバッグがいる。こちらは布を三つ折りにして蓋がある感じにする。長めの紐をつけて斜めがけできるようにして。魚を包む布やら何やらを入れるのだ。


 兄さまたちはわたしのやることを、興味深そうに見ていた。そして、ちょっと納得いかないけれど、彼らは器用で優秀だった。わたしのやることを一度見るだけで、意図を汲み取り、そしてもっといいものを作り出すことができる。それは父さまと母さまもだった。

 わたしがバッグを作って見せびらかすと、それいいなぁとみんなあっという間に自分のものを作り上げた。見栄えもいい。なんでそんな上手なの? ずるくない?




 今日は午後から市場に行くというので、午前中は大人しく過ごした。お昼寝を午前中にするという荒技もした。時間が余ったので、兄さまに頼んでビワンの葉を多めにお茶っぱにしておく。


 午後にはみんなで町長さんの家に行った。初めましてのご挨拶だ。おじいちゃんだった。厳しい目をしていたが、市場に行くというと馬車を貸してくれた。いい人みたいだ。


 しばらく馬車を走らせると市場についた。わたしはヘロヘロだった。舗装されていない道を、ゴムではない車輪の上で揺られるのは、かなり過酷だった。領地に来たのも馬車だったと思うので、その時に前世の記憶がなくて良かったと思った。この距離を歩くのも大変だが、馬車厳しい!


 楽しみにしていた市場は活気はそこそこだが、領地の人々に嫌われているのを感じた。初めましてなのに、どうしてだろう?

 それでも父さまや母さまはにこやかに挨拶をして回った。野菜やパンもあまり質が良くなかったが、結構な量を買い込んだ。それからバターとミルクを買った。お金や値段のことがよくわからないので、帰りに教えてもらおう。お肉は塩漬け肉を。野菜の苗などが売られていたので、高いのか兄さまに聞いてみる。安くはないとのことだ。そんな話をしていると父さまが覗き込んできた。欲しいのか?と聞かれて躊躇っていると、マルネギ(玉ねぎ)の苗とニンジ(人参)の種を買ってくれた。えへへ、大切に育てるよ。

 調味料は目を光らせて見ていたけれど、オイルと塩、そしてバカ高い値段の砂糖があるぐらいだった。


 帰り道、お金のことを教えてもらう。十進法で助かった。

 単位はギル。

 1ギルは軽貨。1円玉みたいなアルミニウムみたいな軽い硬貨で枝の絵が描かれている。

 10ギルが青貨。青くて軽めの硬貨。花の絵が描かれている。

 100ギルが銅貨。飴色の硬貨で、教会みたいのが描かれている。

 1000ギルが銀貨。鹿の横顔みたいのが描かれているらしい。

 1万ギルが金貨。獅子の顔が描かれているらしい。

 10万ギルが中金貨で、金貨よりさらに大きい。

 100万ギルが大金貨で、中金貨よりさらに大きい。

 1千万ギルは板チョコサイズの金版で、1億ギルは大金版っていうのがあるんだって。


 6人家族の1日分のパンが1200ギルだった。ミルクは瓶で売られていて1本2リットル入りぐらいで500ギル。野菜は言い値だ。


 ついでに時間のことなど聞いてみたら、前世と似通っていた。

 1時間は60分で、1分は60秒。1日は24時間。0時から24時まであり、午前と午後とで12時までの呼び方があるのも一緒だ。

 火曜、水曜、土曜、風曜、光曜、休息日の6日を1週間として5週の30日でひと月。12の月を巡り1年とするようだ。春夏秋冬と四季があるんだって嬉しい!



 馬車で町長さんのお家に帰って、馬車を返却する。父さまはお礼にお酒を買ったみたいだ。おお、お酒あるのか、それなら料理の幅も広がるね。

 町長さんはわたしの頭を撫でた。そして斜めがけしている鞄に目を止めて、これはなんだと尋ねられた。


「カバン、です」


「北部ではこういうのが流行っているんですか?」


「いえ、それはうちの娘が考えたものです」


「なんと」


 と驚いている。いや、バッグぐらいあるだろうと思ったが、斜めがけするのが珍しかったらしい。ひょっとしてリュック系もないのかな?

 だったら売れるかも!


 買ってきたものを片付けてお茶を飲んでいるときに、わたしは父さまの膝に乗り込んだ。


「ん、どうした?」


 頭を撫でてくれる。


「兄さまたちが、父さまは伯爵言った。本当?」


「……ああそうだよ。シュタイン伯を賜っている。リディーは伯爵令嬢だ」


「ここ、シュタイン伯の領地?」


「リディーは賢いな。そうだよ」


「父さま、うち、貧乏?」


 頭を撫でる手が止まる。


「そうか、リディーは前の記憶があるんだもんな。そうなんだ、うちも領地も貧乏で。でもそれは先代がこの地を貧乏にしたんだ。だから父さまはこの領地を立て直さないといけないんだ。せっかくの伯爵令嬢なのにがっかりしたかい?」


 わたしは膝から降りて、父さまを見上げた。そして首を横に振る。


「貧乏なら、これから豊かにするだけ! わたし、ここに生まれてよかった!」


「リディー」


 ぎゅーっと抱きしめられる。えへへ。


「父さま、他の領地にバッグ売ろう」


「バッグ?」


「えと、かばん。いろんな形、キレイ、可愛い。お金ある人に売るもの作る」


「ああ、なるほど! それはいいな。ただその前にその布やら何やらを買う先立つものがない」


「まず、一個作る。それで手応えみよう」


 頭をかき混ぜられる。


「そうだな、そうしよう」


「……母さま、具合悪い。心配。なるべく休んでほしい。わたし、いろいろ手伝う!」


 父さまの目が大きくなった。


「……レギーナがそうか、無理をさせてるな。わかった。父さまも気をつける」


 そうと決まれば、母さまはなるべく休ませる方向で。

 食糧の確保。家事の分担。それからカバンの試作品を作るのと。森ももうちょっと探検しないとね!

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