表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
12章 人間模様、恋模様
477/1134

第477話 収穫祭⑦外国の思惑

 大人たちの話があるというので、わたしたちは部屋を移った。


 みんな頬が上気していて、興奮状態だ。

 規格外のプレゼントに度肝を抜かれながらも、みんなもっとじっくり別荘を知りたくてたまらなくて、気持ちは別荘に向かっている。


「リー、頼みがある」


 ロビ兄が真面目な顔をした。


「おれの別荘にルームを作ってくれ!」


「オレもお願いしたい!」


「うん、父さまに相談してからになるけど、いいって言われたら、みんなのを繋げるよ」


「なぁに、ルームを作るって何?」


 エリンに聞かれて、昨日一気には教えられてないので、付け足すようにルームのことを話した。


「すごい! 姉さま、やっぱり凄いのね」


「凄いのは魔使いさんだよ。わたしはその恩恵を受けてるだけ」


 本当にそうなんだよね。

 ハウスさんにしても、アオにしてもミラーダンジョンも、この恩恵がなかったら……こんなに好き勝手生きられてないだろう。





 しばらくして、父さまたちが部屋から出てきた。

 重たい雰囲気を纏っていたけれど、エリンがクジャクおじいさまに飛びつくと、一気に皆さまの表情が緩む。


 公爵さまの転移で、町の広場に向かった。

 収穫祭の始まりだ。




 広場にはもう人が詰めかけていた。


「領主さま!」


 誰かが父さまに気づいて声をかけると、父さまが広場に行けるように道ができた。


 あれ、貴族か?

 着ているものはきらびやかではないけれど、仕立てがいい。

 6年前、領地に人が流れ込んできたとき、貴族も住み着いた。でもそれは傍系の人たちだし、働きにきている貴族の人もいたけど、ここまで人数は多くなかったはずだ。集まっている中で、知らない人は全員貴族っぽくないか?

 シュタイン領の収穫祭になんでこんなに貴族が?


「リー」


 驚いて足を止めていると、ロビ兄に促される。


『どうした、リディア?』


 わたしはもふさまを抱き上げた。耳に口を寄せる。


「不安。あと、貴族多い」


 もふさまの耳がピクッと動く。


 マップを出してみたが、赤い点はない。とりあえず胸を撫で下ろす。


「お嬢ちゃん、あちらの赤い服をきたお嬢さまは、領主さまのご息女かね?」


 横にいたおじいちゃんに声をかけられた。


「そうですよ」


 答えると、おじいさんはニコッと笑う。貴族だね。エリンを見にきたのか?


「そういえば、こちらにはもうひとりお嬢さまがいらしたと思うが、王室に嫁ぐとは本当かね?」


 わたしはマジマジとおじいさんを見てしまった。


「それはあり得ませんね」


「なぜ、言い切れるんじゃ?」


「他の方と婚約しているからです」


「何を言っておる。王室だぞ。王族になれるんだぞ? そんなチャンスがあったら、誰でも飛びつくだろう?」


「……そうとも限らないのでは? その話はどこから聞いたんですか?」


 また奇怪な噂が出たのかとわたしは訝しんだ。


「何やら、王都でシュタイン領主と一族が王室に呼ばれたそうだ」


 あー、シンシアダンジョンの報告を、深読みした人がいるわけね。


「それは、ダンジョンの報告ですよ」


「ダンジョンの報告?」


「はい。魔物のことで、その時にダンジョンに入っていた人は、みんな呼ばれたんですよ」


「へぇー、そうなのかい? てっきり今度こそめでたく、王室に嫁がれるのが決まったのかと思ったよ」


 なんだそれは。


「王室に嫁ぐと、めでたいですか?」


「そしたらお姉さまは王妃さまだ。妹さまにも箔が付く。それで我が一族に嫁いでくれれば……」


 おじいさんはエリンを見たまま、にやりと笑う。

 はぁ?

 エリンへの縁談か。


「おじいさんは、どちらのお貴族さまなんですか?」


 名前を聞いておいて、その縁談は絶対阻止しなければ。


「わしかい? わしはハメール大国のドイト伯だ」


 外国人だったか。


「ユオブリア語、お上手ですね」


 まったく外国人だと思わなかったし、ましてや大陸違いなんて。


「孫の嫁にと目をつけてから、言葉を習ってな」


 手の内をこんなペラペラと話しちゃうことから、悪党にはなれなさそうだけど、一般的な貴族の結婚、つまり地位向上を目指す結婚に、エリンを行かせたくはない。


「お嬢ちゃんもどこぞのご令嬢に見えるぞ。所作も美しいな。シュタイン領は本当にいい領だ」


 収穫祭がスタートするようだ。

 父さまがスピーチに立つ。

 今更、みんなの近くに行くのも、始まってからの移動は迷惑かと、その場に居座ることにする。


「シュタイン家の血筋は素晴らしい。これで光属性をお持ちだったら、どちらのお嬢さまでも神聖国を復興させられただろうに」


「神聖国?」


 聞いたことのある国名を聞き、わたしは見上げた。


「聖女さまの末裔がお作りになった聖なる国だよ。聖なる力が衰え、国は廃れてしまったが、力ある方をお迎えになれば、そこに集う者はどれだけいることか……。本当に上のお嬢さまは惜しい。光属性がなくても、聖なる方を遣わされたと聞く。やはり王家の、聖女さまの血が流れているのだ。そんな方が神聖国に立たれたら、エレイブ大陸の歴史は変わる。ユオブリアだけがいい思いをすることもない。これからはエレイブ大陸の時代になる!」


 見上げているわたしに気づいたみたいだ。熱く語ったことが恥ずかしかったのか頬を染めた。

 なんか恐ろしい話を聞いた気がする。アダムが言ってた血筋どうこうってそういうこと? 

 王家に属する公爵家の血が流れるってことは遡っていくと、聖女さまの血を引き継いでいるかもしれないって、本当に、一般的にもそう思われちゃうの?

 神聖国も縮小され、地図から消された国のはずなのに、エレイブ大陸ではまだ名が通っていて、熱く語れるほどの国ってこと? この方はおじいちゃんだから、年配の人はそう思ってるってとこかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] この伯爵さんの感じだと以前のダンジョンの創られた木も別大陸の複数国が絡んでいるんでしょうね。 それにしてもこの人ペラペラと喋りすぎでしょうに笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ