第453話 貢献の種類
学園祭が終わった。
上半身を起こして、伸びをする。
ううーーーー。ラグは敷いているけど、床の上で寝たから体が強張っている。
まだみんなすやすや眠っていた。もふさまもだ。
後夜祭が終わってから、寮でも打ち上げをした。
食堂で騒ぎながら楽しくご飯を食べ、お風呂に入り、仲良し同士で部屋に集まったようだ。1年生はわたしの部屋に集まり、そのまま雑魚寝した。
鳥のさえずる声に誘われ、カーテンを開けて窓を開けた。夜更かししたから、心ゆくまで寝かせてあげたいけど、そうすると食堂がしまって朝ごはんが食べられなくなっちゃう。
気持ちのいい朝に、ひとり、またひとりと起きあがり、伸びをする。
今日から2日間、学園祭休みだ。そして次の日が休息日なので、実質3日間お休みとなる。保護者が王都へ来ていることもあり、届け出をすれば、みんな外出やお泊りをすることもできる。泊まる場合は保護者に該当する人からの書面も必要だけど。わたしは今日1日寮で過ごし、その後王都の家に帰るつもりでいる。
クレープ屋はチョコ以外あまり元手がかかっていない。ってなわけで、お客さんがいっぱいきてくれたこと、みんなが高速に捌けたこともあり、寄付額を突破することができた!
みんなでもちろん大喜びしたが、余っている材料でお礼をできないかとみんなが言う。テントの設置、解体を手伝ってくれたドーン男子寮の子たち。それから、保護者の宿を提供してくれたフォンタナ家に。
それはいい案だと、いっぱいクレープを作って、寮とフォンタナ家に届けに行った。わたしは道案内も含めて、フォンタナ家にも行く。
兄さまたちに報告すると、一緒について来てくれることになった。
後ろから何人かが駆けてきた。イシュメルたちだ。アダムもいるから驚いた。どうしたの?と聞くと、フォンタナ家にお礼が言いたいと。それじゃあと大所帯で向かうことになった。
フォンタナ家の人々、アマンダおばさまは快く迎えてくださって、お礼を受け取ってくれた。男の子たちは揃ってフォンタナ家の鍛錬に目が釘付け。なぜ?
いろんな話をしているうちに、クレープ屋の売り上げが寄付額に届いた話になり、おばさまたちは首を傾げた。それでわたしたちは、寄付をすることになった経緯を話した。黙って聞いていたおばさまは、その後にちょっと出かけましょうかと言った。
ドーン寮の女の子たちをゾロゾロ引き連れて、教会にたどり着いた。教会を通り過ぎ、その敷地の奥にある建物に入る。
そこは併設されている孤児院だった。
小さな子供たちが身を寄せ合っていた。おばさまを見ると嬉しそうに走り寄ってきた。わたしたちは子供たちと遊んだり、掃除したり、繕い物をしたり、お料理をしたりして過ごした。
帰りにおばさまは「奉仕活動を手伝ってくれてありがとう」とわたしたちに言った。
「寄付も奉仕活動のひとつなの。お金を必要とする時もあるし、人の手を必要としているところもあります。自分のできる範囲内で支えていくのが、社会貢献だと思うわ」
おばさまは笑った。
そっか。わたしは寄付ばかりに頭がいってしまったけれど、社会貢献は何もお金だけじゃない! こういう奉仕活動だっていいんだ。
わたしたちは目を合わせた。そっか、そうだったんだ!
それからフォンタナ家に着くまでの間、わたしたちは奉仕活動について、おばさまにいろいろと話を聞いた。わたしたちにもできそうなことがあった。お金を捻出しなくても、社会貢献をする方法が!
フォンタナ家に戻ると、父さまもきていた。
そこでフォンタナ男爵さまや、みんなと話している。
どうしたのだと尋ねると、明日、ダンジョンに行くことになっていた。
D組の男の子たちがダンジョンに行きたがったみたいだ。
魔法戦を1学期の間学んでいれば、初歩的な武術は身についたとみなされるらしい。
でもダンジョンは危険な場所だ。怪我をしても自己責任。軽々しく人を連れていけるところでもない。ということで、冒険者ギルドに入っていること、それから魔法戦の成績が3以上であれば参加OKとなったそうだ。
それを聞いてもふさま大興奮。わたしの周りをぐるぐると走り回る。これ、わたしは〝生贄の舞〟と呼んでいる。ただ走ってるだけなんだけど。でも、これをやられると、わたしは生贄にするための儀式でもされているような気分になるのだ。
それからダンジョンで、最低限ひとりマモメットを2匹を狩るのが決定事項らしい。
ケラが日帰りで行っているから王都の近くにダンジョンがあるのかと思ったらそれは違った。正しくは転移門から行くそうだ。王都とか、大きい街には転移門なるものがあるらしい。門を潜ると、他の転移門に通じる。シュタイン領のある北方面には転移門はあまりないようだ。でもシュタイン領が栄えたことで、その道筋にも人が集まり出したため、転移門を設置する案も出ているそうだ。
そうなったら、行き来しやすくなる!
今日は南方面のシンシアという街へ転移をし、そこからすぐのところにあるダンジョンに向かうという。王都からシンシアへの転移代がマモメットと同じくらいだそうだ。その往復代金分のマモメットを自分で狩るようにということらしい。
D組男子はほとんどギルドカードを持っていた。びっくり。家の手伝いで隣町まで行ったりするのは普通のことなので、10歳になると身分証明書を持ちたいがために、加入することが多いらしい。それで薬草採取みたいなのをやればお小遣い稼ぎにもなるし。
イシュメル、オスカー、ニコラス、リキ、スコット、レズリー、アダムが参加するという。今日はアダムが一緒に来て驚いた。ニコラスからアダムは寮でもあまり見ないと聞いていたからだ。学園でも身バレしないためか、教室以外では見かけないし。フォンタナ家にお礼という口実で、外に出てみたかったのかなと思った。
でもアダム、あんたギルドカード持ってるの? というか、父さまと一度会ってるよね、いいの?と思ってしまったが、顔を合わせていたものの、父さまは6年前に会ったアダムと、ゴーシュ・エンターが同一人物とは思わなかったようだ。
女子からはラエリンとロレッタがダンジョンに行くといい出した。
一応参加者はフォンタナ家の人と木刀で打ち合いをして、みんなオッケーが出たみたいだ。
わたしはテストなしでダンジョンオッケーなので、みんなから訝しげに見られた。家族がいるからテストがないわけじゃないよ。わたし、ダンジョンで魔物倒したことあるから。実績だから!