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第433話 眩しく見える時

「お願い、リキの力が必要なの!」


 ん? と見ると、チェルシーがリキを引っ張ってきている。

 体格が良く、困っている人を放っておけない、優しいリキを助っ人に連れてきたか。

 リキは恐らくチェルシーに、問答無用で連れてこられたのだろう、わけのわからない顔をしていたけど、現場に到着して一瞬にして把握したようだ。


「俺一人じゃ無理だよ、あと何人か連れてこないと……」


「私たち支えるから、このパイプを挿してほしいのよ」


 リキはわたしたちを見て、不安そうな顔をしている。


「リキ、ごめんね、お願いできる?」


 メランが首を傾げて言うと、リキの顔がぽっと染まった。

 あら。リキはメランが? さっとチェルシーに目を走らせると、チェルシーは三角屋根を持ち上げるべく移動していたので、見えてないだろう。

 なんとなく胸を撫で下ろす。


「やってみるけど、あとふたり持ち上げられている人がいないと……まぁ、一回やってみようか。なるべく背の高さを合わせて並んでください」


 あ、そっか。背の低いわたしは一番端に追いやられた。

 三角屋根の片方を地面につけたまま、反対側を持ち上げる。

 わたしは精一杯支えたが、背の高さが違えば腕の長さも違う。チビたちは腕をまっすぐ伸ばして届いている体勢で辛い。そして、支えているというより。倒れないよう引っ張っている感じで、力が入りにくい。というか、体勢がヤバイ。

 真ん中の支柱をリキが差し込んでいる。おお、入った! みんながやっても全然入らなかったのに!

 リキは急いで向こう側の支柱も入れに行った。

 お、重いし、辛い。手が痺れてくる。


 これ、ヤバイ!

 もふさまが体を膨らませて、大きくなろうとした。

 間に合わない? 倒れる!


 隣のダリアと目を合わせた時に、グイッとパイプが引き戻された。


 

 ニョキッと出てきた手が、パイプを持ってくれていた。


「こんなチビたちに持たせてたら、あぶねーだろ?」


 うわぁ、イシュメルだ。あ、D組男子たち。ドムとニコラスが持つのをかわってくれて、こちら側の支柱も立ててくれた。

 反対側もたったか組み立ててくれて、下の重石まで運んでくれた。天幕になる布をきちっと結びパイプと一体化させてくれる。

 わたしたちがすったもんだーして、時間をかけてもちっとも進まなかったものを、あっという間に組み立ててしまった!


 凄い!


「あ、ありがとう」


 素直に感動した。すっごい手こずっていたのに、あっという間に!


「あんなー、リキを連れ去るなよ。チェルシーがとにかく引っ張ってったっていうから、何事かと思っただろ?」


「ご、ごめん!」


 チェルシーが謝る。

 先輩たちからも、ありがとうとお礼が飛び交う。


「で、コンロの設置はできるのかよ」


 イシュメルが肩をすくめる。

 わたしは慌てて見せ収納袋から出すようなふりで、収納ポケットから魔石コンロや鉄板などを出していった。


「このコンロって置くだけでいいんだよね?」


 食べ物の出店をやるコンロは学園が用意したもので、ちょっと古いタイプ。

 わたしが普段使っているものとそう大差ないとは思うものの、ちょっと不安だった。


 イシュメルは受け取ったコンロを逆さまにして見た。


「こっち側とこっち側の近くに物は置くな。あと、前に風除けしとけ。倒れないようにだぞ」


 と教えてくれた。


「あ、ありがと」


「きゃー、イシュメルかっこいい、ステキ!」


 向こうの方でアイデラの騒ぐ声が聞こえる。イシュメルは舌打ちをした。


「あなたたちは学園祭で食べにきてくれたら、〝トッピング〟を無料でつけちゃう!」


 資金のこと全般を請け負ってくれた、マイナ先輩が太鼓判を押した。


「とっぴんぐって何?」


「具材の付けたしのこと!」


 クラリベルが教えると、手伝ってくれた男の子たちが、ちょっとだけ嬉しそうな顔をした。


 みんなでもう一度お礼を言った。後ろ姿を見送る。


「男子、頼りになるね」


 と言ったのはライラかな? みんなちょっと呆けた感じで頷いていた。


「ほらね、だから、イシュメルはかっこいいのよ!」


「イシュメルだけじゃないよ」


 ちょっと強く言ったのがジニーだったので、先輩たちが意味ありげに目を合わせていたけれど、何も言わなかった。


 コンロを2つ設置し、器具も置いていく。テーブルの配置も考えて、みんなで当日の手順を確認し合う。

 包装の仕方、お釣りのこと。


 先輩から布を手渡された。


「なんですか?」


「広げて見て」


 広げると、エプロンだ。胸のところにDawnと刺繍されている。


「これ、どうしたんですか?」


「みんなでお揃いのものが欲しくてさ、シュタインさんが商会に口きいてくれたから、安く仕入れられたものも結構あって。その分使うのもどうかとも思ったんだけどさー」


「すっごく、いいです。嬉しい!」


 わたしはエプロンを胸に抱いた。


「そう、よかった! みんなそう言ってくれるの」


 マイナ先輩が嬉しそうに笑った。




 テント設置に思わぬ時間がかかったけれど、男の子たちのおかげでことなきを得た。お釣りや包装は、みんな家で手伝いをしていたこともありスムーズにいってるし。食材なども届いていて下処理済みだ。収納袋があるとほんと便利だ。


 そして最後にわたしは魔具を使っているふりをして、テントごとシールドをかける。すべて弾かせていただくよ。

 聖樹さまの護りがあるし、生徒もそんなことをしたら学園祭じたいなくなるかもしれないからやらないとは思うけどね。念には念を入れて。


 それにしても、男子の株が一気にあがった。四の五の言わずに助けてくれたのはポイント高い。どこかで恋が始まる……予感?

 みんなの表情を見て、ちょっとだけそう思った。

 

 

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