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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
10章 準備が大切、何事も
421/1133

第421話 穢れ

「リディア嬢?」


 ロサの声を聞いた気がする。目が重たい。

 なんとか目を開けると、ロサとイザークとラストレッド殿下がいた。

 わたしは座り込んでいた。

 体を起き上がらせようと思うのに、うまくいかない。


「オーラの色が、ところどころ変色している」


「どういうことだ?」


「ルシオかメリヤス先生に診てもらった方がいい」


「保健室に連れて行こう」


「殿下、兄である私が運びますので」


「そんなことを言っている場合ではないだろう!」


 ……なんとなくそんな会話が聞こえた気がしたが、次に気がついた時、わたしは保健室のベッドの上だった。




「リー、大丈夫?」


『リディア大丈夫か?』


 横からアラ兄と、もふさまに覗き込まれた。

 ゆっくり体を起こす。アラ兄が手助けしてくれる。


「大丈夫だけど、いったいどうなって?」


「イザークや殿下たちと会ったのを覚えてる?」


「なんとなく」


「その後気を失っちゃったんだ。それで慌てて保健室に」


「どうやら穢れに触れたようですね?」


 後ろから現れたのはメリヤス先生だった。


「穢れ、ですか?」


 耳慣れない言葉だ。


「穢れというそのものがあるわけではありません。悪しき思いが精神や魔力を蝕むことを指します。瘴気が極端に少ない人は、人が多いところで穢れに触れやすいと書物にありました。学園は人が多いですが、シュタイン嬢は今までならなかったから大丈夫かと思ったのですが、今日は体調が悪かったのかな?」


 先生は探るようにわたしを見た。


「寝不足でした」


「それが原因かもしれないですね。弱っているときは、悪しきものに、支配されやすい。これからこんなふうに気分が悪くなったら、これを手に少しとって、自分に数滴ふりかけて」


 先生は話しながら後ろにある備え付けられた棚に手を伸ばした。部屋はいつも清潔で整えられている。棚だけが異質で所狭しといろいろな薬の類が置かれているが、見る人が見ればその法則性はわかるのだろう。一番上の先生しか手の届かないところに手を伸ばし、瓶のようなものを掴んだ。

 それを持ってきて、わたしに差し出す。

 ちいさな綺麗なガラス瓶だ。


「これは?」


 アラ兄が尋ねると、


「聖水ですよ」


 とメリヤス先生は微笑んだ。

 そっか、こういう時、聖水が効くのか。聖水ならもふさまの水浴び場にあるから、なくなったらもらいに行けるか。


「ごめんね、リー、オレが驚かせたから」


「驚いたは驚いたけど、そのせいではないよ」


 多分。

 メリヤス先生が微笑んだ。


「お兄さんから何を聞いたんだい?」


「それがその、この間学園に不法侵入して捕らえられた人が亡くなったことを。知ってると思ってつい言ってしまったら、みるみる顔色が悪くなって……」


「確か侵入者が捕らえられた時、シュタイン嬢も一緒にいたんでしたね?」


「……はい」


「今はどうですか? そのことを思い出して気分が悪いですか?」


「なんともないです」


「今まで人の亡くなった話を聞いて、ここまで気分が悪くなったことはありますか?」


「……いいえ」


「そうですか……。神託を得られる神官は皆、聖水を持っていました。神は〝高エネルギー〟の存在で人族と話すときは人族のレベルまで自らを落として〝同エネルギー体〟レベルになるそうです。そういったことができるから〝神〟なのですが。でもそれは魔のある高位の者もできることのようです。人を誑かそうとして、神のふりをして話しかけてくる者もいるらしく、昔、悪しき者ではないか聖水を撒き、その反応で見極めたと聞きます。その名残で神官は悪しき何かを退けるために聖水を常備しています」


 アラ兄がごくんと喉を鳴らした音が、わたしまで届く。


「それが妹に何か関係が?」


「神託を聞ける者でなくても、人以外の存在に耳を傾けることができるものは、悪しき力の余波を受けたりするのです。ふと、そのことを思い出しました。怖がらせるつもりはありません。けれど、私も神官の端くれ。ふと思いついたことに、今は繋がりが見えなくても何かあることを経験上知っています」


 先生は申し訳なさそうにした。


「確かなことを言えなくて申し訳ありませんが。シュタイン嬢、気をつけてお過ごしください。あなたは良くない何かを感じ取ったのかもしれません」


 わたしはアラ兄と顔を見合わせた。


「先生、ありがとうございました」


 アラ兄に続いてわたしもお礼を言ってから保健室を出た。

 廊下の角を曲がってから、アラ兄にお願いする。


「アラ兄、兄さま……あと、レオたち大丈夫か父さまに伝達魔法で聞いてもらってくれる?」


「わかった。リーはどうする? 行ってくるから、ここで待ってる?」


「ううん、寮に帰る」


「じゃあ、送っていく」


「ううん。早く結果を知りたい。わかったら、伝達魔法でわたしにも知らせてほしい」


 アラ兄は下に視線をやり一瞬考えたけれど、即決した。


「わかった。もふさま、リーのこと頼みます」


 もふさまは頷いた。

 アラ兄は廊下を走り出して、あっという間に見えなくなった。どちらかというとアラ兄が勉強、ロビ兄が運動方面に力を発揮するように見えていたけれど、その走りっぷりはロビ兄と全く同じだった。



 部屋に届いた伝達魔法の手紙には、兄さまもレオたちも無事で何も起きてはいないから安心しなさいと書いてあった。

 レオたちもなんだかんだ楽しそうにやっている旨を父さまが教えてくれた。

 ほっとする。

 先生が雰囲気出していうから、なんかわたし感じ取っちゃったのかと思って、気が昂ってしまったみたいだ。


 侵入者が亡くなっていたことを聞いた時、口封じ?と頭に浮かんだ。嫌な話ではある。でもあそこまで気分が悪くなったのは、おかしいと思える。その前に魔力が暴走しそうになった。それを引きずっていたのかな?

 それが一番しっくりくる気がする。


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