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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
10章 準備が大切、何事も
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第419話 ある女生徒の野望(前編)

 園内は早くも学園祭ムード一色だ。活気づき、浮き足立ってもいた。

 毎日ヘトヘトになってベッドに倒れこむ。

 体はきついけれど、達成感があり、それも心地いいと感じていた。

 そんなある日、アラ兄に呼び出された。


「会ってもらいたい人がいる」


「会ってもらいたい人?」


「5年生のコビー・マグノリア」


「コビー・マグノリア?」


 誰だっけ? 首が傾いでしまう。


「リディーの部屋に、録画の魔具を取り付けて退学になった、マグノリア嬢のお兄さんだ」


 ? 

 わたしは先生にマグノリア嬢と話をさせてもらえないかと尋ねたのだけど、先生は相手側に打診してみるといい、そのままになっていた。

 それが本人とじゃなくて、令嬢のお兄さんと? なんで?


 コビー・マグノリアが、アラ兄とロビ兄に話があると教室まで訪ねてきたという。

 妹のしでかしたことを謝ってから、アラ兄たち同席の元、わたしにも謝らせてもらえないかと言ってきたらしい。


 アラ兄はそれを妹に確認することはできるが、処分は何も変わらないと言ったそうだ。

 コビー氏はそれはわかっていると言ってから、現状を話しだした。


 マグノリア家はお金に困っているほど切迫はしていないが、あんな録画の魔具を買い与えられるほど裕福ではない。あれは妹がどこからか調達してきたもので、誰かにやらされたことだと。


 ロビ兄がそんな主張をリーにするつもりなのかと突っぱねると、そうではないと言う。

 結局やったのは妹だから妹のしたことに変わりはない。言いたかったのは、妹・ウィットニーにはそんなことを思いつける頭はないということだった。そして魔具を買うことができる財力も。


 誰かにやらされた、それは学園もお見通しのことだろう。けれど、ウィットニーと手助けをした者にだけ処分を下したということは、その誰かは学園が罰を与えられないぐらいの者か、様子を見るために泳がしていると考えられる。

 ウイットニーに誰に頼まれたのかを聞いたが、どうしても言わなかった。

 ただ、妹は言うことを聞けば、第二王子殿下の婚約者候補になれると思っているようだと沈痛な面持ちで言った。

 妹は完全に利用されている。それでもやってはいけない事をやったのだから弁解のしようがない。だから謝りたかった。

 ことがあってすぐそうできなかったのは、学園側からシュタイン家への接触を控えるように言われていたからだそうだ。

 それがこの間、ウイットニーにシュタイン嬢と話す気はあるかと学園から打診があった。それで、兄であるコビー氏はわたしの兄ふたりに接触を試みた。


「本当に謝りたいだけ?」


 ロビ兄が再度尋ねると、コビー氏はいきなり跪いた。土下座した。

 助けて欲しいと。

 助ける?

 アラ兄とロビ兄は顔を見合わせる。


 その誰かはウィットニーにまた何かをさせるかもしれない。

 ウィットニーは家で軟禁状態ではあるが、爵位の上の人が訪ねてきたら、会わせることになるだろう。……そして次に何かをしたらウィットニーに、いや、マグノリア家ごと未来はない。そこでコビー氏は考えた。


 主犯を知ることはシュタイン家にとっても悪い話ではない。

 だったら包み隠さず全てを話して指示を仰ごうと。

 それで今、裏の池のところにロビ兄とコビー氏がいるようだ。


『ほう。兄は馬鹿者ではないようだな』


 説明を聞き終わったところで、もふさまはそう言ってから大きなあくびをした。


「どうする? 会う、会わない? リーが決めていいんだ」


「会う」


 心を決め、わたしはもふさまに向かって頷いた。






 裏庭でわたしに礼を尽くしたのは、華やかな顔立ちの人だった。


「コビー・マグノリアです。会ってくださって感謝します。また妹のしたことを、心よりお詫び申し上げます」


 深く頭を下げた。

 なかなか頭を上げないので話しかける。


「ウイットニー嬢の様子はいかがですか? 兄からあらかたのことは聞きました」


 コビー氏は重たい頭をあげた。


「はい、部屋にて大人しくしています」


「妹さんの交友関係はわかりますか?」


 コビー氏は胸ポケットからメモを取り出した。


「1枚目がクラスメイトです。2枚目に寮生の仲よくしてくださる方と、クラブが一緒の方、3枚目はここ1年でお茶会に誘われた方のお名前を書いてきました」


 アラ兄が受け取り、目を通している。


「むしがいいのは百も承知ですが、私どもは一体どうすればいいでしょう? 妹は大人しくしていますが、今後何かあったらどうなるかを話して聞かせたので怯えているからです。改心しているわけではないでしょう。もしいい条件を言われたらその気になってしまうかもしれません」


「わたしは主犯者を知りたいです。それにはマグノリア嬢のよき理解者になってあげてください」


「よき理解者に?」


 思ってもみなかった提案だったのか、固まっている。


「耳に心地いい提案にのったのは、それなりに理由があるはずです。今回のことをやり過ごせたとしても心に隙があれば同じようなことが起こるかもしれません」


 ハッとした表情になり、胸に手をやる。


「そうなれるよう努力したいと思います」


「もし誰かが訪ねてきたり、ウィットニー嬢が頼まれごとをしたらそれを探れますか? そしてわたしに教えて欲しいのです」


「信頼できる侍女をつけておりますので、家のことは全て私の耳に入るようになっています。誰かと会った時には妹から話を聞き、それをシュタイン嬢に伝えます」


「知らされたことに関しては、そのことでウチに何かがあっても、それは協力として不問とします。ですが、知らされていない何かがわたしの身に起きた場合、相応の罰を受けていただきます」


 コビー氏は深く頷いた。

 コビー氏は1から10まで言わなくても、理解したようだ。

 

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