第414話 初陣②作戦会議
「私たちに強みがあるの?」
「長いこと魔法を親しんでいる人たちみたいに、安定しては使えないけれど、短い時間ならみんなの魔法が、A組に負けてるとは思わない」
それに魔法を出せるかわからないからか、常に全力でやるので瞬発力は勝ってるぐらいだと思う。
でも、火魔法以外は禁止されないことから、みんなの魔力の攻撃では誰も怪我することはないぐらいのものと見られているということだ。それは少し悔しく感じる。
「短い時間?」
頷いてから言う。
「時間を区切ろう」
「え?」
「D組は戦うことに慣れてないでしょ、A組の子たちと違って」
貴族の子たちも魔法戦を習うのは初めてだけれども、多少の護身術など習ってきている人が多い。それにエリーみたいに騎士を家族に持つ人もいる。D組より戦うことを肌で感じられているはずだ。
「魔力量も貴族ほど多くないし、慣れない戦いに集中できる時間も、わたしたちは短い」
実は言い訳だ。わたしが〝戦う〟ぐらいに動ける時間は3分だと思う。魔力量を少なく言ってる学園では、魔法を使うのも3分が限度だ。
ダンジョンである程度の魔物を狩れるが、一回一回の戦う時間は短い。魔力使い放題を掲げレベルの高い魔法でほぼ終わらせているし、わたしの体力がなくなる前に誰かしらの手助けが入るので、実際わたしが武力で活動している時間はいつも短いのだ。体力ないから。
わたしが大将。帽子を守り、最後の3分で敵の帽子を取る。そうするためには、12分間わたしが動かず体力を温存し、なおかつ相手だけを疲れさせる必要があり、その協力がいる。
敵地への突撃の隊と大将を守る隊を決めた。
足が早かったり、運動神経のいい子は突撃隊に自ら志願した。8人の突撃隊、隊長はアイデラだ。2人組のバディーになってもらい、5分のうち前半と後半、どちらかが武力で戦い、もう片方が魔法を使うようにしてもらう。武力か魔法かを決めれば使う時間が少なくてすむし、どちらかなら集中できる。
みんな魔法で攻撃をするのは自信がないと言った。ま、そうだよね。それも人に向けて攻撃するなんてハードルが高い。平民である彼女たちは持っている魔法を〝戦い〟でも使うのだと意識したのは学園に入ってからだ。だから〝魔法〟自体は1学期の間に使えるようにはなったけれど、戦いに組み込むのは自信がないというところだろう。
それでも運動神経がよかったり、勘のいい子は突撃隊に志願した。守りの子はどちらかというと運動が苦手、反応に自信がない子が集まった。
非常に言いにくそうにひとりが切りだす。
「守りに、攻撃に適した子いないのまずくない?」
突撃隊の子たちが、守り組を見て、なんともいえない表情をした。
「そうね、……不安だわ」
ウォレスが呟いたのだが、本当に不安そうなので、守り隊の子たちの眉が八の字になる。
バランスが悪いのを指摘したのはアンナだが、アイデラが陣地が攻撃されたら攻撃隊が戻ってくれば良くない?と意見した。
『人の子は面白いな』
もふさまはわたしたちがあーでもない、こーでもないと言い合うのをご機嫌で見ている。
守り組もわたしを抜かしてふたりひと組で組み、半分の時間で魔法を使うのを交代する。
役割が決まったところで、わたしは戦略を説明する。
「最初の5分は攻める。突撃隊はとにかく攻める。できたら大将の帽子を取れたらそれがいい。あちらの攻撃部隊を蹴散らして。守り隊は陣地で帽子を守る……」
突撃隊の子たちが頷いた。
「次の5分はもし優勢でも、帽子を最初の5分で取れなかったら、押されるように戻ってきて、こちらと合流する」
「優勢でも?」
「最初の5分で決着がつかなかったのなら、戦力が拮抗しているんじゃなくて、あちらが余力をとっているんだと思う。火の使い手は魔法を使えないけど、あちらには風と水、土の使い手がわんさかいるから。きっと上手な使い手ほど、後で使うようにしてくると思う」
みんな離れた陣地にいる、A組女子に目をやった。
「合流してどうするの?」
「敵をさらに引き寄せる」
「引き寄せる?」
「敵をなるべく引き連れてきて」
わたしは守り隊のダリアに2分30秒毎に時間を教えて欲しいのと、残り3分になったら教えて欲しい旨を話した。
戦略を話すと、みんなそれに納得して、その通りに戦うことになった。
そして暗号というかわたしたちだけの合図をいくつか決めた。
魔法戦の最初の授業で情報が戦うための命綱になることを習った。
1学期の間、わたしたちはA組女子と一緒に授業を受けてきた。魔法だけじゃない、戦い方も得意なこと、苦手なことも見てきた。ま、お互いにだけどね。
だから、戦略が立てられる。
あちらの大将はおそらくユリアさまになるだろう。爵位的にはもっと上もいるが。
攻撃的な魔法を使える人がほとんどだ。あちらはD組を甘くみているから、突撃に半数以上をつぎ込むだろう。陣地まで人が来ることもなく、ユリアさまも戦えるし、守りを少なくする。それでケリがつくと思っている。魔法は最後まで取っておく。
作戦会議の時間は終わりとなった。
それぞれの陣地に固まる。
A組の陣地を見れば、あちらも腕を組んでこちらを見ていた。
「これより、A組対D組の魔法戦を始める」
大きな声で宣言がくだされる。
先生のおろされていた手が上にあがる。
戦いの火蓋が切られた。
いざ、尋常に勝負!
帽子を被っているのはやはりユリアさまだった。
陣形から見て、エリーが突撃隊長だ。
あちらも2つに分かれる。突撃隊と守りの人たちだ。
アイデラが声をあげ、A組陣地に向かって走り出す。
陣地と陣地のほぼ真ん中でお互いの突撃隊がぶつかり合った。
ショートソードを模した木刀と魔法が炸裂する。
風魔法でひとり倒れた。すぐに起き上がったが、アイデラの木刀を避けられなかった。服が真っ赤に染まって見えた。
先生がレッドカードを掲げた。〝棄権〟者が出た。A組に。
それからふたりにレッドカード。ふたりともA組だ。
それでもA組の突撃隊の人数の方が多かったが、力は拮抗しているように見えた。




