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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
10章 準備が大切、何事も
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第400話 動き出した2学期

 再び鐘がなり、1限目の始まりを告げた。先生が入ってきたので、みんな席へと戻っていく。


 令嬢の暮らしぶりを見たいとした理由は、やはり誰から見ても言い訳に聞こえるってことだよね。よく知らないだろうイシュメルでさえ、聞いただけでわたしの〝敵〟と捉えた。話をしたこともないマグノリア令嬢はわたしの〝敵〟なのだろう。

 彼女がルチア嬢が聞いた声の主なのかな? わたしが学園に入ってきたらきっと憎んでしまうだろうと言っていた……。

 わたしはマグノリア令嬢に何をしてしまったんだろう?


 聞きたい、彼女と話したい。強くそう思った。そう先生に頼んでみよう。そう行動すると決めることで、自分の気持ちを落ち着かせた。



 最初からトラブルはあったけれど、2学期は忙しすぎてそれだけに心を割いてはいられなかった。

 学園祭に向けての本格的な準備も始まった。

 学園祭の実行委員であるスコットとレニータは、きっちり計画を立てる派で、週ごとに目標が定められ、それになぞって驀進していくことになった。

 わたしは体験型劇の脚本を書くことになったので、みんなに案出しを要求した。

 劇で使うつもりのトランポリン中敷きは練習してきてくれていて、やっぱりわたしが一番下手なままだった。


 劇を出し物にすると講堂と教室で劇を公演することができる。講堂は1度きり。くじ引きにより2日目の午後一番目の枠を取ることができたそうだ。持ち時間は30分。それをメインとして、教室では1日目は11時からと13時からと15時から。2日目は11時からと15時からの2回公演することにした。裏方と劇に出る人を決め、わたしの脚本が待たれることになった。

 案はポンポン出てきて楽しかった。できればみんなの見せ場を作りたいなーと思いながら、出してもらった案をノートに書き込んでいく。


 寮の出し物も夏休みの間に練習してきてくれたみたいで、手つきがプロ並みになっていた。ガネット先輩がタイムテーブルを作ってくれて、クラスの出し物とぶつからないよう書き込んでいく音頭をとってくれた。

 食材の発注などは、それを得意とする人が受け持ってくれて、みんなが助けてくれる。


 クラブは人数が少ないから、話はすぐにまとまった。わたしの朗読は2日目の午前中にすることになった。店番は1日目の10時から11時までと、2日目の16時から16時半まで。1日目は部長と、2日目はエッジ先輩と組む。みんなクラスや寮でも役割があるので、完全に閉める時間帯が多くなってしまった。4人しかいないので仕方がないけれど。


 そんな慌ただしい中、アイリス嬢がラストレッド殿下に追い回されているのを見た。聞いたところによると質問攻めにされているらしい。それでアイリス嬢が逃げ回っている。殿下はクールそうに見えるのに、なかなか粘着質のようだ。これはもう近寄りたくない。



 兄さまは3日に一度メロディー嬢の護衛をしている。それが〝怪しい〟と噂がたった。いい雰囲気だったそうだ。わたしは兄さまと話していてよかったと思った。思いを伝えあっていない状態でこの噂を聞いたら、どうにかなっていたかもしれない。知っていても、ムッとくるのに。

 メロディー嬢は第1王子の婚約者だ。彼女に付随して婚約者以外の男性の名前が出るだけで、とんだスキャンダルなのだ。……他にも2人、生徒からの護衛がいるのに、兄さまの名前だけ聞こえてくる。スキャンダルと捉える人が出てくるんじゃないかとヒヤヒヤしている。そんなことに兄さまを巻き込まないで欲しい。

 そして噂の広まる速さに悪意を感じる。メロディー嬢を失墜させたいんだか、兄さまに打撃を与えたいんだか知らないけど、これにイライラくる。

 ラストレッド殿下に近づかないために、兄さまのクラスには行かないよう言われているのでそれもストレスだ。普段だって特別な用事がある時しか行ったことないのに、禁止されると窮屈に感じるのはなんでだろう?



 家族を学園祭に呼びたかったが、王都の宿は高いし、もう塞がっているというのを耳にした。父さまに相談して、狭くてもよければと王都の家に泊まることを提案した。D組の子、そのうちドーン寮の先輩からも相談された。そこまではスペースがないと困っていると、どこから聞いたのかフォンタナ家が空いている部屋を解放してくれることになり、宿の心配がなくなった。先輩たちにすると、王都で宿を取るのは難しいことだから、今年も学園祭に家族を呼ぶのは諦めていたそうで、とても喜ばれ、そして張り切りだした。


 学園祭があるからと授業が簡略化されるものではない。夏休みの宿題が終わったところだというのに、普通の授業でも容赦無く課題は出された。

 脚本と言ったら言い過ぎの、劇の流れを書く作業が追いつかない!

 寝不足が続いているので、古代史のミスター子守唄の授業ではうっかり眠りそうになった。あ、いけね。あだ名だってどう転んで人を傷つけるかわからない、そう自分で体験したばかりなのに。あまりにもピタリと合いすぎていると思えて、そう呼びたくなってしまう。


 覚醒したのは夏休みの宿題だった暗誦ができているかのテストをすると言われたからだ。

 わたしは「君を想うて我があり」という恋歌集の78節の5の歌が割り当てられていた。これは恋歌を集めた詩集らしい。だけど、どこが恋歌なの?って思うぐらい言葉選びが微妙で、意味がわからないんだよね。


 ひとりずつ、暗誦とそして現代語訳を発表していく。アダムは59説の1だったようだ。こいつのなんでもそつなく、いやかなり上出来にできるところが気にくわない。どこかみんなアダムを胡散臭いと言うし思っているのに、彼が暗誦しだすと彼を振り返り、ほぉとした表情で見ている。

 確かに声もいいしね。やっぱり意味のわからない歌だが、アダムが読むとそれっぽく聞こえるマジックだ。意訳を聞いても、どうしてそれが恋歌なのかわからん。

 みんなしっかり覚えてきたみたいだ。つかえながらでも、最後まで詠み、そして意訳を言った。


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