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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
8章 そうしてわたしは恋を知る
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第338話 憂鬱なメロディー嬢<前編>

 公爵家の馬車がウチに横付けされる。メロディーさまはわざわざ馬車から降りて家族に挨拶をしてくれた。そして一緒に馬車に乗り込む。


 今日もものすごく儚げで、華奢で、かわいいというコンボだ。白い涼しげなドレスは上品な総レースだった。それでも真っ白な肌が際立って見えるのだから、どんだけ肌が白いんだって話だ。


 メロディー嬢は盛んに話しかけてくれたが、それどころではなかった。

 馬車に乗る機会は少ないし、ウチの馬車は改良して乗り心地を追求しているから、辛い馬車は久しぶりだ。公爵家のものだから、他とは比べ物にならないくらいいいもののはずだけど。進行方向への加速、そして横揺れ、上下揺れ、わたしは早くも酔いそうになっていた。王都のショッピング街まで本来なら歩いていけるぐらいの距離で、短い時間だったからなんとか堪えた。……助かった。

 ぐったりしたまま馬車を降りる。しっかりと帽子の位置を正す。


「そのような帽子は、初めて見ますわ。編まれたものですの?」


「あ、はい。ムギーラという植物のツタを編んだものです」


「素敵ですわ。それに涼しそう」


「はい、日差しを遮り風を通します」


「どちらで買われましたの?」


 メロディー嬢の目が輝く。


「まだ売ってはいないのです。いずれ売り出しますが」


「ということは、それもシュタイン領のものですの?」


「はい、そうです」


「売り出されたら、絶対に買いますわ」


 わーい、お客さまゲットだ。


 公爵令嬢がお店に足を踏み入れれば、店員さんたちが整列して一斉に頭を下げる。お店の偉い人が出てきて、ソファーに案内される。

 すげーな、公爵令嬢。というか、本当に身分社会なんだなと認めざるを得ない。

 お嬢さまはお店の中の商品を見て歩いたりはしない。

 ソファーで寛ぎお茶を飲んでいると、店員さんたちが、良きものをあれこれ運んでくるのだ。定期的にきている店のようで、新商品を見せてもらっているようだ。こういう買い方もあるんだね。何軒かをひやかし、いや、メロディーさまはどこででも大量に買っているからひやかしじゃないね。

 わたしはいちいち意見を求められた。気に入ったものはないのかと何度か言われたが、これ子供が手を出す値段のものじゃないでしょと思えた。必要なもので物が良くて高価というなら話は別だけどさ。特にどうしても欲しいというものはなかったから。



 やっとお茶のお店に入る。トイレが心配なので、お店でのお茶は口をつけられないでいた。通されたのは個室だ。メロディー嬢がお気に入りの焼き菓子と紅茶をいただくことにした。


「私の買い物に付き合わせてしまったようですね」


「いいえ。いいものをいっぱい見せていただきました」


 それに店員さんたちが麦わら帽子に目を留めて、質問を受けたりしたので、それも収穫だ。これは売れる、確信に変わった。帰ったら、そのことを伝えて生産ラインに持ち込もう。

 お茶とお菓子が運ばれてきた。


「ご存知だと思いますが、私の婚約者は第1王子さまです。だからでしょうか、皆さま私をたててくださいますが、親しくなれる方がおりませんでした」


 伏し目がちに言って、紅茶を飲まれる。そんな姿もキュンとさせる魅力を持っている。


「……第1王子さまって、どんな方なんですか?」


 令嬢は顔をあげた。そして少し哀しげに言った。


「優しい方ですわ。でも、目の前にいると全てを見透かされているような気になります」


 鋭い方なのかな。


「お体が弱いと聞きましたが、そうなのですか?」


「私はそう思ったことはありません。逆になんでもできる力のある方だと。学園は休みがちのようですけれど……シュタイン嬢は第1王子さまに興味があるのですか?」


 そう瞳を覗き込まれた。

 え?

 わたしは慌てた。


「いいえ、婚約者のことを尋ねられるのは嬉しいことかと思ってお尋ねしていました。ご不快でしたらお許しくださいませ」


「まぁ、婚約者のことを、なるほどね。シュタイン嬢はランディラカ伯の弟君と婚約されているんでしたね、彼はどんな方ですの?」


「とても優しくて、頭がよくて、強い人です。尊敬しているし、頼りにもしています。いつまでも一緒にいたい人です」


「まぁ、そうですの。ロサ殿下のことはどう思われています?」


「……優しくて、頭のいい方だと思います」


 試されているような気がして、なんだか怖くなる。


「執行部の方たちが仲がいいのは知っていましたけれど、シュタイン嬢も仲がいいので驚きました。あの方たち、気軽に心を開く方たちではありませんから」


「……皆さま、お優しいです。フランツさまの婚約者でもあるわたしに優しくしてくださいます」


「いいえ、もちろんそれもあるでしょうけれど、皆さまシュタイン嬢のことが好きなんですわ。明るくて、かわいらしくて、聡明で、優しいお嬢さまですもの」


 そうにっこり微笑まれた。

 温かい笑みであるのに、わたしは自身でも笑みを浮かべながらごくんと唾を飲む。これが女性の地位、次代ナンバーワンのオーラか。


「シュタイン嬢はロサ殿下の婚約者候補でありましたのよ? そうだったら、私たち姉妹になったかもしれませんわね」


 また爆弾発言をかましてきた。

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― 新着の感想 ―
[一言] リディアは根が小市民だから高位貴族の買い物の仕方は似合いませんね。 メロディー嬢のこの雰囲気、公爵令嬢故なのか別の理由があってなのか気になります。
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