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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
7章 闘います、勝ち取るまでは
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第283話 聖女と瘴気

 先生が再びわたしの前の椅子に座る。


「緑草が普段使いされているのは魔力が多くなければ問題がないからです。魔力が20000越えしていても遮断手袋をして作業すれば大丈夫です。それに実習では草の段階から作業しますが、粉やペースト状になったものが売っていて、薬師もそれを使って作ることが多いです。さて、シュタインさん。君の魔力は150。それなのに、どうして緑草が暴走したのか、わかりますか?」


 わたしは首を横に振った。

 それに本来の魔力も2万越えはしていない、17032のはずだ。


「うーーん、聖樹さまと相性がいいそうですし、本当に君の魔力はおいしいのかもしれないですね」


 鳥肌が立って、わたしは膝の上のもふさまをギュッと抱きしめた。

 リュックもギュッとしちゃった。ぬいぐるみになってくれていてよかった。


「メーゼを施したことにより、万一に備え胞子は根絶やしにされたはずです。少しすれば取られた魔力も戻ってくるはずですが」


 先生は失礼と言ってからわたしのおでこに2本の指をのせた。


「大丈夫、魔力もそこまで取られなかったようです。処置は終わりました。何か聞きたいことはありますか?」


 あ。


「緑草のことじゃないのですが、質問していいですか?」


「……どうぞ」


「家族から聞きました。わたしが聖女にはなれないと。その根拠を教えてください」


 メリヤス先生は、わたしに哀しそうな顔を向けた。


「もっと慎重に告げるべきでした。申し訳ありません」


 あ、わたしが何で聖女になれないってあんたにわかるのよ?って質問したって思ってる?


「あの、先生。わたしは聖女は然るべき方がなるものだと思っていて、それがわたしだと思えたことはありません。ただ断言されるということは、先生は何かがわかるってことですよね? でしたらその根拠となることを教えていただきたいと思ったんです。もしまた〝お前が聖女になるべきでない〟と言われるようなことが起こった場合、わたしが聖女にはなり得ないと説明するために」


 先生は、なるほどと頷く。


「聖女になり得る条件は私の一存で話すことはできません。それに神官力というものが身についてなければ見極めることは不可能なのです」


 そうだろうなと思うので頷く。


「逆に絶対になることがない条件はお教えできます。シュタイン嬢にはそれが当てはまります。といってもこれも神官力でしか見定められないことですが。人は魔力を持って生まれてきます。ご存知ですね?」


 わたしは頷く。


「同時に〝瘴気〟を持ち、生まれてくるのです」


 〝神官〟はそれを知っている、つまり神殿では〝わかっている〟ことなんだ……。


「聖女さまはその時に誰も解決できないようなことを解決できるお力を与えられる方で、歴代の聖女さまたちには光の属性があり、強い浄化の力をお持ちでした。強い浄化は瘴気で身を侵されることになります。元々瘴気を体に蓄えていないと瘴気に耐えられないのです。シュタイン嬢は瘴気をそんなに持たずに生まれてこられたのでしょう。体が弱かったと聞きましたし、魔力も漏れていたとか。典型的な瘴気が少ない方の例と一致します。瘴気が少ない方は、聖女さまの力を授かることはありません」


 とても残念なことのように、メリヤス先生は言った。


「光の属性も、瘴気が少ないと授からないものなのですか?」


 わたしは怖々と聞いた。


「……光、ですか? 光属性ぐらいなら瘴気が少なくても問題はありません」


 胸を撫で下ろす。よかった。

 わたしはよくわかったとお礼を言った。ニコニコしてしまったのではないかと思う。

 聖女とは体に瘴気スペースが少ないとなれないという。もし光属性も瘴気が少ないとならないよと言われたら、わたしは瘴気が少なくても光属性持ちだから定義が崩れてしまう。すると、聖女の定義も崩れてしまうと怯えたのだ。

 でも、定義が壊れないなら、結構。わたしの瘴気が少ないのは、地の主人さまの折り紙付きだ。ゆえに、わたしが聖女になることはない!

 いや、悪いけど、世界の明暗を分けるような重要人物になるのはごめんだ。

 瘴気少なくて、よかった。神さま、ありがとう。


「……今、祈りましたか?」


「え?」


「今、神聖力のようなものを感じたので」


「何も祈ってませんが?」


 ありがとうって思ったぐらいだ。お礼だよ。お礼は祈りじゃないよね?


「そうですか……」


 先生は壁にかけてある時計をチラリと見た。


「授業に戻ってもあと10分ぐらいですが、どうします? 保健室でこのまま休まれますか?」


「教室に戻ります。あ、地図は持っているので大丈夫です。いろいろとありがとうございました」


 残りの授業を受けるために歩き出すと、リュックからぴょこんとレオが顔を出す。


『……ちゃんと周りの気配を探ったぞ。誰もいない!』


 授業中だから大丈夫か。


『リディアが聖女にならないのは残念だ』


「わたしは……ごめんね、聖女にはなりたくない。でもなんでみんなわたしが聖女ならって思うの?」


 リュックのとば口からぴょこっと顔が増える。


「女神さまの想いをおいらたちお手伝いするでち。お手伝いするなら……女神さまの決めた方なら従うでちけど、それがリディアだったら喜んで手伝えるでち。だからでち」


『うん、リディアだったらいいのになー』


 レオが言うとリュックの中からも声がする。


『リーだったらなぁ』


『リーがいいなぁ』


『リディアが聖女なら楽しそうですねぇ』


「そっか。みんなありがと。でも、ごめんね。わたしは聖女じゃないんだ。わたしは何者でもないけど、わたしはみんなが好きだよ」


 アオとレオは顔を見合わせている。


「おいらだって、ただリディアが好きなだけでち」


『私もだ!』


 リュックが開いてみんなが飛び出してきた。

 もふもふがわたしに飛び込んでくる。

 聞こえない〝大好き〟を感じる。

 ギュッと抱きしめる。


『リディア、急がないと授業が終わるぞ』


「そうだった!」


 みんなにリュックに戻ってもらい、教室へと急ぐ。


 滑り込みセーフで、最後のまとめだけ先生の話を聞くことができた。

 手荒れに効くクリームが出来上がっていて、わたしの分もちゃんとあったのが嬉しかった。

 わたしには次の実習から持ってくるようにと魔力遮断の手袋が支給された。


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