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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
7章 闘います、勝ち取るまでは
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第277話 呼吸を感じろ(中編)

 今日は炊き込みご飯のおにぎりだ。

 具沢山のものを大きめな握りにした。パン粉をつけて揚げた、とんかつもどき。卵とツナも入れたパスタサラダ。スティックサラダにはマヨディップ、味噌マヨ、醤油マヨを作ってみた。三つ葉と貝のお吸い物。

 海鮮チヂミもどきはポン酢でいただく。炭水化物が多いけれど、ダンジョン攻略の時は特にお腹にたまるものが喜ばれる。

 トライカという魔物のお肉と鑑定で出たものは、大きめに切って串に刺して焼いた。脂がたき火に落ちておいしそうな演出バッチリになり、頬張れば予想を裏切らないおいしさだった。塩だけで十分おいしい!

 みんなお肉とおにぎりを交互に頬張り満足気だ。

 ちょっと食べ過ぎたとお腹に手をやる。みんな食べ過ぎたみたいだったので、レモネードをいただきデザートは家に帰ってから食べることにした。


「リディー、昨日、寮で何かあった?」


 兄さまに尋ねられる。まだ話してないんだよね。


「リーがダンジョン行きたいなんて、変だもんな」


 ロビ兄の横でアラ兄もその発言に頷いている。みんなわかっていたみたいだ。


「……兄さまこそ、昨日の人たちがどうなったか、教えてくれる?」


 兄さまが帰ってきたのは夜になってからだった。どうなったかを聞こうとしたんだけど、夜も遅いからとアルノルトに止められたのだ。兄さまにお風呂に入ってご飯を食べ、ゆっくりしてもらいたかったので、わたしたちは頷いた。

 そして朝になったが、朝練で早起きする時間より早く、もふもふ軍団がみんなを起こしてまわった。ダンジョンいくぞーと。どれだけ楽しみなんだと寝ぼけ眼でわたしはそう思った。


「じゃあ、私から話そう。当事者家族だから話せるのだと心に留めてくれ。それから、全てがわかったわけではないんだ」


 兄さまはそう前置きした。


「生徒会と2年A組の担当教諭と1年D組の担当教諭、保健医のメリヤス先生、そしてメソン・メッシー他4人の男子生徒を交えて話をした。先生たちには聖樹さまから連絡が行っていた。よくない行いと遣いが判断をしたようだと。それで彼らが言うことには、ロビンとアランの鼻をあかしてやりたくて、リディーをいじめる気だったらしい。リディーがドーン寮長を引きずり下ろしたのはやりすぎだという雰囲気になっているから、それに便乗してリディーを叩く気だった」


「あいつら!」


 拳を握り締めて、ロビ兄が立ち上がる。


「ロビン、落ち着こうか。先生たちもこれには呆れて厳重注意となった。保護者にも連絡がいく。年下の女生徒ひとりを5人で追いかけたわけだからね、そこでもう、問題だ」


「あいつら、ボコボコにしておくべきだった」


「……そうだね、歯向かう相手を間違えないように、教えておくべきだったね」


 低い声でいうアラ兄から、冷気が出てくるような……。


「そう吐かせるのに、時間が掛かったのか?」


 ロビ兄が不思議に思ったのか首を傾げた。


「いや、それはわりとすぐ終わったんだけど、ひとりが変なことを言ったんだ」


「変なこと?」


「……父さまに相談してから話そうかと思ったんだけど、リディーは当事者でもあるから話すことにする」


 なんか、そんな前置きをされると怖いんですけど。


「アラン、ロビン。マル・フォンはメソン・メッシーの一派ではないのか?」


 アラ兄とロビ兄は顔を合わせた。


「そういえばフォンもいたな。でもいつもメッシーとつるんでいるのは3人だ。フォンはメッシーの手下じゃない」


 ロビ兄の言葉にアラ兄も頷く。


「2年生の担当教諭がそれに気づいてマル・フォンを残したんだ。今日に限ってなぜメッシーたちといたのかを尋ねるために。先生は脅されたかなんかと思っていたようだけど、どちらかというとマル・フォンが扇動したかのようだった」


「そいつがリディアに何かしようとしたってことでちか?」


 アオが兄さまに尋ねる。

 兄さまが静かに頷いた。


「わたし、マル・フォンって人知らないよ」


 怖くなって思わず声を上げてしまう。メソン・メッシーたちも知らなかったけどさ。


「彼は、リディアが聖女であるはずはないからって言うんだ」


 はい?


「どういうこと?」


 アラ兄の声が乾いている。


「マル・フォンが言っていただけで、まだ確認はとってない。だけど、どうやらリディーが聖女になるんじゃないかって噂があるみたいなんだ」


 へ?


『リー、聖女なの?』

『リー、かっけーー!』


「聖女じゃないから」


 キュルンとした目を向けられて、慌てて否定する。


『……でもリディアはこうしてわたくしたちの声を聞くこともできるし、主人さまとも親しい。聖樹さまにも認められていて……今はそうでなくても聖女になられるんじゃありませんかね?』


「みんな〝聖女〟を知ってるの?」


 アラ兄はもふもふ軍団が〝聖女〟という存在を知っていることに驚いたみたいだ。


『女神さまが聖女さまに力を分け与えるんだ』


 レオが元気に言った。


「女神さまは魔物に祝福くれる方でち。その女神さまが力を与える聖女さまでちから、おいらたちは聖女さまを助けるでち」


 兄さまとアラ兄、ロビ兄と目を合わせる。聖女さまと魔物にはそんな絆が。


「そうなんだ……。でも、わたしは違うと思う。聖女候補はちゃんといるから」


「そうだよ、リーは聖女候補じゃないのに、なんでそんな噂が?」


 アラ兄が鋭く兄さまを見た。


「聖樹さまとお遣いさまの件でそんな噂がたったのかと思ったんだけど、リディーが入園する前、いやもっとずっと前からリディーは聖女候補って噂があったみたいなんだ」


 ヤーメーテー、とわたしは心の中で叫んだ。だって、めんどくさそうな匂いがぷんぷんするじゃない?


「マル・フォンはリーが聖女候補であるはずがないからって言ったんだよね?」


「うん。リディーが聖女候補って噂の下地があって。そこからリディーが聖女であって欲しい派と、リディーが聖女であって欲しくない派があるみたいなんだ」


『ははは、リディア、大人気じゃないか』


 もふさま、笑い事じゃないから。


「今、聖女候補として神殿が推しているのがふたり。アイリス・カートライト令嬢と、留学生のルーシー・ユーハン令嬢。この国出身ということでアイリス嬢が一番人気というか、なって欲しいと盲目的に崇拝している人たちがいる」


 そしてコホンと兄さまは喉を整えた。


「だけど当のアイリス令嬢は、聖女になるべきは自分ではなくてリディーだと言っているみたいなんだ」


 はい?

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