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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
6章 楽しい学園生活のハズ
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第258話 お好み焼き

「リディア、上機嫌だね。いいことでもあったの?」


「クラブ、入部してきた」


「え? もう決めたの?」


「うん、創作同好会に」


「「「「創作同好会?」」」」


「うん。あ、そろそろひっくり返してもいいかも」


「え? ひっくり返す?」


「最初にやるから見ててね」


 話を中断して、料理に集中だ。

 食材は目に入った食べられる物を水で溶いた粉と一緒に焼くだけの〝お好み〟焼きだ。


「フライ返しをこうやって入れて……もうくっついているところがない状態にして、こう」


 パチパチパチパチ。無事きれいに裏返るとみんなが拍手をしてくれた。


「あ、こっちもひっくり返さないと。誰やる?」


「私やりたい!」


 レニータが挑戦だ。

 初めて扱うフライ返しだそうだが、難なく使いこなしている。


「えいっ」


 掛け声と共に、まあるいお好みやきが裏返った。

 上手だとみんなで拍手だ。


 もふさまが背を伸ばす。

 誘われるようにそちらを見ると、新入生たちだ。


「な、何やっているの?」


「昨日の夜も、森に入って行ったから……」


 図書委員ふたり組メランとジニー、その後ろには3人ほど。ライラとケイトとクラリベルだ。


「お腹空くじゃない? 厨房は手続きするまで時間がかかりそうだから、こうやってここで作って食べてるの」


 ごくんと誰かが唾を飲み込んだ。


「一緒に食べる? 働かないもの食うべからず、だけど」


「働く?」


「料理、もしくは後片付け」


 5人はお互いアイコンタクトをとって頷いた。


「後片付けする!」


 それじゃあと焼けたものはお皿に移すようにして、新しいタネ生地を作っていく。キャベツの刻んだものや野草、芋はすり下ろした。小麦粉とお水と足して、ぐるぐるかき混ぜる。鉄板の開いたところに新しい生地を焼いていく。

 鉄板からおろし大きめのお皿に盛った物の上に鰹節もどきを舞い踊らせジョウユをたらして、マヨソースをかける。ソースを作っておけばよかったな。それを4等分して、お皿ごとシートの上に並べていく。それぞれにお皿とフォークを渡して、食べ始める。


「まだまだ焼くからいっぱい食べようね」


 味見としてひと口食べてみる。ベチョっとした生地だけど、そこにいろいろな野菜の食感があって楽しい物となっている。醤油と油の相性もいいし。これはこれでおいしいね。熱々を頬張る。お好み焼きより、マヨソースの反応がよくて笑えた。

 もふさまもホフホフ言いながら食べている。

 粉物は少し時間がたつとお腹が膨れる。


「お腹、いっぱい!」

「おいしかった」

「あの黄色いソースは何? 初めて食べたけど、すっごくおいしい」

「あれと一緒にいろんな物食べたい!」


 かしましくお喋りしながら食べ、片付けをした。


「ああ、お腹がいっぱいで夕飯はいらないね」


「あ。もし食べなかったらさ、そのパンをもらっておいて、今日は食べずに明日のおやつにするのどうかな?」


「おやつ?」


 ライラが反応する。


「硬いパンをね、卵とミルクとお砂糖の液につけておいて、バターで焼くの、わたし好きなんだ」


 みんなが目を輝かせる。


「おいしそう」


 ふふ、おいしいよ、絶対。


 そんなに長い時間ではなかったと思うのだが、わたしたちはかなり打ち解けた。話題は主に今日の2コマ目の「古代語」。これがわからなすぎてヤバイというものだ。実際わたしは古代語も読めてしまうのでなんとかなるが、単語が今と意味が違っているものや正反対のものまであるので、わかりにくくなっている。しかもそれを教えてくれる先生が、声はいいんだけど話し方が単調で、お経みたいでさ。頭に入ってこないで、ただただ眠くなってくるのだ。


「あれ眠っちゃいそうなんだけど」


「私も!」


 なんだ、みんなそうなんだ。


「ミスター子守唄だよね?」


 とクラリベルがいうからウケてしまった。言い得て妙!


「シュタインさんは」


「リディア」


「え?」


「リディアって呼んで」


 クラリベルたちはライラを見て、ケイトを見てから少し照れたように言う。


「……リディアって、貴族っぽくないね」


「私もそう思う」


 ジニーが賛成の声をあげる。


「いい意味でだよ。私たちにはありがたい」


 ライラが微笑んで言った。


「あ、そろそろ夕飯の時間じゃない?」


「大変、パンを確保しないと、明日のおやつが!」


 レニータが一大事とばかりにいうのでみんなで笑った。

 まだ明るかったので気にならなかったが、タボさんに時間を確認すると10分前だ。ダリアは体内時計でもあるのか、時計を見なくても時間がわかるようだ。すごい能力だな。

 わたしたちは足取りも軽く寮に帰った。

 ちなみにみんなから預かったパンは卵と砂糖と牛乳液に漬け込んでおいた。




 次の日2コマ目、2限目の後に、廊下側にいたメランから呼ばれた。


「リディア、先輩が呼んでいるよ。貴族の先輩」


 最後は小さな声で。

 廊下にはアイボリー侯爵令嬢とマーヤ令嬢がいらした。最上級のレディーに見える二人を、D組の生徒たちは遠巻きに見ている。


「おふたりとも、どうなさったんですか?」


 言ってから、あ、何かわかったのかと思いつく。


「ご連絡いただいたら、わたしが参りましたのに」


「いいえ。お話をしたいのです。わたくしたちとお昼をご一緒してくださいませんか? その時にお話ししますわ」


「……ええ」


「では、予約をしておきますね」


 ふたりはわたしの目を見ないようにして話し行ってしまった。

 なんか、よくない感触。


「ねぇ、リディア、華やかな髪型の赤毛の方は侯爵令嬢さまよね?」


「もう一人の髪が短い方、貴族になったハバー商会のご息女では?」


 わたしはその通りだと頷いた。交友があるのか聞かれたので、執行部の方々と兄たちが親交がある関係で面識があると答えた。


「やっぱり、貴族だね!」


 ライラによくわからない感心をされた。

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