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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
6章 楽しい学園生活のハズ
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第257話 同好会見学

 今日は週の真ん中なので、兄さまたちとご飯の日だ。


 格式高い東食堂に行った。〝お遣いさま〟も一緒と話を通して個室を予約してくれたそうだ。こちらの食堂はチケットだけではなく、飲み物ひとつでもプラスしてポイントがいるようなので、その分は恐らく兄さまが出してくれている。ひもじい思いをしている寮のみんなの顔が浮かび申し訳ない気持ちになったが、ごめん、とってもおいしかった!


 週末まで待てなかったようで、兄さまたちは聖樹さまとの挨拶で何があったのかを知りたがった。その時のことと、友達には聖樹さまと魔力の相性の関係で倒れ、心配されていてお遣いさまをつけてくださったんだと思っているみたいだと告げると、生徒にはそう説明があったと教えてもらった。

 兄さまたちも聖樹さまがポインターの役目を果たしているのは知っていたが、聖樹さまに魔力を摂取されているのは知らなかったみたいだ。わたしが祝印したというと、不安そうな顔をしていた。聖樹さま以外にはわたしの魔力が行き渡ってもわからないようにしてくれると言ってたことも伝えてみたが、ますます不安そうにしていた。

 その他に寮のことも尋ねられたけれど、調べているところでまだよくわかっていなくてと言葉を濁した。

 アイボリー令嬢とマーヤ令嬢と話をしたいのだが、執行部に行っても大丈夫かどうか聞いてみると、兄さまがエスコートしてくれるとのことなので、それに甘えることにした。

 今日は気になっている同好会へも見学に行きたいから、長居をしないように気をつけよう。真ん中の土の日は午後の授業はひとコマのみで、クラブも早上がりになるのだ。



 放課後になると兄さまが教室まで迎えに来てくれたので、一緒に執行部へと行った。同じクラスだからだろう、アイボリー令嬢たちには話を通してくれていて、スムーズに話すことができた。

 ダニエルが紅茶を入れてくれた。おいしい。寮ではお水しか飲めないからか余計に美味しく感じた。ミルクをたっぷり入れてもらったしね。

 みんなお遣いさまがもふさまに似ているというので慄く。


「真っ白なところが同じですね、あはは」


 と笑っておいた。


「それで、わたくしたちに聞きたいこととは?」


「あ、はい。あの、アベックス寮とドーン寮で何か勝負をされたのを覚えていますか?」


「勝負ですか?」


 二人とも思い出そうと視線がさまよう。


「マーヤさま、どうだったかしら?」


「そう言えばずいぶん前に試験の点数がどうとか言われたような気が」


「今聞いて、微かに聞いたような気がしたけれど……。ごめんなさいリディアさま、記憶がはっきりしませんの。同じ寮の方に聞いてみて、後日お話ししますわ。それでよろしいかしら?」


「あ、はい。とてもありがたいです。わかったらで結構ですので、よろしくお願いします」


「リディア嬢。なんとはなしに聞こえていたのだが、それは生活部からドーン女子寮の予算の使い方の開示を求められたのと関係しているのか?」


 ロサが鋭いところをついてきた。


「まぁ、そうです」


 と言えば、アイボリー嬢もマーヤ嬢も顔を合わせている。


「わかったらで結構ですので、よろしくお願いします」


 みんながジロジロみるので、居心地が悪くなり、わたしはそこでお暇した。




 さて、同好会だ。まだ十分間に合う。

 本校舎の屋上に小さく小屋を建てましたというようなのがわたしが目指した部室だ。

 小さいけど煙突がついていて、煙を出していた。

 火を使っているってことだろう。いいのか?

 まともな同好会、まともな人たちだといいな。

 心を落ち着けてノックをする。


「はい!」


 元気に飛び出して来たのは、金髪に青い瞳の小柄な少女だった。


「もしかして、見学に来てくださったの?」


「は、はい」


「タルマ先輩、新入生が見学に!」


「こんな小さな部屋なんだから、大きな声を出さなくても聞こえてるよ」


 苦笑しながら後ろからのっそり現れたのは体の大きな、顔というか体も四角い男の子の先輩だった。ワイシャツ姿で腕まくりをしていて、エプロンをつけていた。


「見学でも、ようこそ、創作同好会へ」


 部長だというエプロン姿の大きな先輩は人好きのする笑顔を向けてくれた。


「俺は4年C組のタルマ・ロジャー。物を作るのが好きなんだ」


「私は3年C組のユキ・ビンガーよ。絵を描くのが好きなの」


 ふたりに招き入れられると、中にもう一人男の子がいた。

 教室の半分もない狭い部屋ではあったが、手作りだろう物で溢れていて、温かい感じがする。簡易キッチンが取り付けられていて、男の子は何か作っているようだった。甘い匂いがする。


「彼は、2年生。無口だけど、おいしいお菓子を作るの」


 緑色の髪をした茶色の瞳の無口という男の子はこちらをチラッとみて、ギョッとしている。多分、もふさまを見たのだろう。


「1年D組のリディア・シュタインです。こちらはお遣いさまです」


 ただの動物じゃないよーとアピールしておく。お菓子を作っているところに、もふさまを連れてきたら衛生面でぎょっとしちゃうものね。


「ああ、聖樹さまと、君が……」


「大変だったわね」


 同情的な目で見られた。


「ああ、どうぞ、座って」


 椅子に勧められて座れば、すっと飲み物が出て来た。リンゴンティーだ。出してくれた少年に軽く礼をする。


「あの、こちらはどのような活動をされるんでしょうか?」


「ああ、放課後好きに来て、好きな時に好きなだけ物を作るの」


「物と言っても、規定はなくて、自分で考えて作るならなんでもいいよ」


 そう聞いてほっとした。


「不器用ですけれど、物を作るのが好きです。今作るとしたら、わたしは物語を書き留めようと思っています」


「物語?」


 それまで光り輝くような目で見られていたが、残念そうな色が濃くなる。


「……だとしたら、人ももっと多い文芸クラブがあるわ。あそこは賞を取られた方もいるし、顧問の先生が書き物に造詣の深い方だから、それを望まれるのなら、あちらの方がいいかもしれないわ」


 気落ちしたのを隠すようにユキ先輩が言ってくれて、胸の奥があったまる気がした。部員を増やしたいと望んでいても、新入生のために適したことを勧められる人……。わたしはここがとても心地よく思えた。


「許していただけるのなら、わたしはこちらに入りたいです」


「え?」


「今の話聞いてた?」


「はい」


「同好会だぞ?」


 大きな先輩が意味がわからないというように声をあげる。


「はい」


 3人は顔を見合わせている。


「先ほども言いましたが、1年D組、リディア・シュタインです。どうぞよろしくお願いします!」


 わたしはぴょこんと頭を下げた。


「本当に入ってくれるの?」


「はい」


 先輩たちはお互いを見遣って声を揃えた。


「「「ようこそ、創作同好会へ」」」


「リディア・シュタイン嬢、私たちはあなたを歓迎します!」


 そう言ってもらって、わたしはますます嬉しくなった。


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