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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
6章 楽しい学園生活のハズ
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第253話 寄付⁉︎

 青い髪を長く伸ばした養護の先生はメリヤス先生というそうだ。お世話になっておきながら、初めて名前を知った。

 体調を尋ねられ、目周りの皮膚の色を見たり、舌の色や喉の奥などチェックされた。

 それからおでこに二本の指を当て、


「魔力はしっかり戻ったようですね」


 とにこりと笑った。

 ステータスを見るとわたしの魔力は732までしか戻っていない。魔力は150マックスに隠蔽しているから、150に達してはいるけれど、わたしの本当の魔力は17032だからまだ全然戻ってない。

 先生はわたしの魔力が満タンかという基準で診ているのではないってことだ。数値で見ているのだとしたら732と上限を超えているとバレるはずだから、そういうわけでもない。どういうふうに診断しているのかめちゃくちゃ興味がある。尋ねられないけど。


「はい、なんともありません。ありがとうございました」


 ニコリと笑えば、先生も微笑んだ。



 午後の授業2コマも終わり、合間の休み時間には保健室にも行った。残すはホームルームだけだ。

 終わりの鐘がなる前に廊下が騒がしくなった。


「行き過ぎた勧誘は禁止しているが、違反者は毎年出る。各自、気をつけるように」


 先生は短く言って、ホームルームは終わりとなった。


「行き過ぎた勧誘って何?」


 とジョセフィンに尋ねれば、あ、リディアは昨日は倒れたからいなかったのかと納得している。

 同好会の勧誘が凄いらしい。貴族クラスにはクラブの勧誘が集まり、我がクラスにくるのは同好会ばかりなのだとか。6人へと会員数が増えればクラブに昇格でき、予算なども違ってくるので、なかなかしつこい勧誘となるらしい。


「リディアは目星つけてあるの?」


 尋ねられて頷く。

 ジョセフィンもレニータも、キャシーもダリアも候補があるみたいで、様子を見に行くそうだ。

 わたしもクラブと同好会1つずつ迷っているところがあって、どちらもどんな様子なのか見てみたいと思っている。

 でもそれよりまず、生活部に行かなくては。


 みんなも一緒に行ってくれる気でいたようだが、今日は申請の仕方を聞きにいくだけなので遠慮した。だって、クラブや同好会の先輩たちが勧誘にくる理由のひとつは、迎えにきてもらえないと地図を持たない新入生が部室にたどり着けないからだ。廊下で声を張り上げている目当てのクラブに声をかけ、先輩について行かないとだからね。


 わたしはみんなと別れて、もふさまと第五校舎に向かった。


『ここは騒がしく気が入り混じり面白い。室にも道にも魔力が宿り好き勝手に動いている』


 もふさまは授業中もわたしの横に控えていてくれるが、時折顔を上げて遠くを見て耳を澄ませたりしていた。気になっていたんだけど、そういうのを感じていたみたいだ。


「勝手に動くから地図が必要なの」


 最初は探索マップがあるから地図を持たなくてもいいかと思っていたけれど、目立たないために手に入れた方がいいかもしれない。一通り学園を案内されたとはいえ、場所が変わったところにも迷わず辿り着けるのも鋭すぎるものね。ポイントが貯まったら最初に地図を買おうと思う。


 第五校舎にたどり着いた。ノックをすると、またずいぶん間を置いてからドアが開く。

 こんにちはと挨拶をすると、挨拶の後に、体は大丈夫ですか?と心配された。話は届いているらしい。


「質問ですか?」


「はい、教えていただきたいことがあります」


 白衣の先生に部屋の中へ通された。

 ソファーに座れば、足元にのっそりと、もふさまが寝転ぶ。

 先生が対面に座ったところで、わたしは予算の使い道の開示方法を教えてくださいと言った。

 先生は長い足を組み替えた。


「先日、あなたがいらしてから、私の方でも調べてみました」


 え? 興味なさそうにしていたのに、調べてくれたんだ。


 先生は、ファイルをわたしの向きに合わせ開いた。


「見てもよろしいのですか?」


 先生は頷く。


「驚くぐらい切り詰めていますが、やましいところはありません。その浮いた全てを寄付にまわしています」


 寄付? え?

 これはわたしたちが入る前の3月分のものだけど、今月とそう変わりはないだろう。

 食費にがーーーんとなる。

 これじゃあ、あの人数をとても賄えない。パンが必ずあることがおかしいぐらいだ。料理人も3人しかいない。掃除は休息日のみ人を雇っているが、それもひとり。その切り詰めたのを全て寄付していた!

 食事以外はまだわかる。でもわたしたち子供よ。成長期だぞ。その食費を削るってどういうこと?


「ミス・スコッティーが寄付しているのですか?」


「いいえ。手続きをするのは寮母だと思いますが、ドーン寮が寄付をしています。これは今年になってから続けていて、その多額さから年度末にも良い行いをしたとして、学園からドーン寮にポイントが加算されたはずです」


「寮にもポイントが付くのですか?」


「寮に加算され、それが寮の生徒たち全員に振り分けられました」


 どういうこと?


「寮でした行いについては、寮にポイントがつき、それが関係者のみだったり、担当した生徒だったり、全員にだったり振り分けられることがあります」


 先生は続ける。


「ドーン寮では今のところなんの不正もみつからず、注意することもないということです」


「寮内部の問題ということですね?」


 そう結論づければ先生は頷いた。

 そりゃ厄介だな。コトによれば外からのアプローチだけで片付くことがある。例えば横領とかなら、横領した人を罰してもらえばいいだけだ。そのほうがはるかに楽ちんなんだけど、そういう問題ではなかったようだ。なんか面倒くさそう。自分たちの暮らすところだから、そう言ってもいられないか。


「……寄付というのは他の寮もやっていることなのでしょうか?」


 尋ねれば、先生は首を横に振る。


「……いいえ、寮としてやることはありません」


「寮でなければあるのですか?」


「貴族であれば、寄付は頻繁にあるでしょう」


 ああ、まぁ確かに。ノブレス・オブリージュね。身分の高い者はそれに応じて果たすべき社会的責任と義務があるとされる。社会貢献かぁ。

 でもそれは身分の高い者の務めであって、だし、子供はまだ自分で働いてないじゃん。


「寄付をしなくてはいけない規定が、あるわけではないのですね?」


 念のためそんな校則はないかを確かめる。


「少なくとも学園にはありません」


「……学園以外にはあるということですか?」


 先生は首を傾けた。さぁ?って感じ? 紛らわしい言い方だな。

 とりあえず、寄付はしなくちゃいけないことではないようだ。

 ということは。

 誰がどう決めたのかは知らないが、食費を削った人がいる。

 その浮いた分は寄付され、多額の寄付をしたことで寮生がポイントを受け取っている。

 寄付をするのが目的か、ポイントが目的か……。


「ポイント付与について調べるのに、書かれた物とかありますか? 図書室にありますでしょうか?」


「図書室にもありますが、こちらをお貸ししましょうか? 私は読み終えているので」


 わたしはそれを借りることにした。それから寮と学園の規定など、わかりやすく調べるにはどうするのが効率的かと尋ねると、それぞれ図書室に詳しく記したものもあるが、その前にこれを読んでおけば寮則にも学園のこともある程度はわかるという本を貸してくれた。そこまで分厚くない。

 わたしはお礼を言ってありがたく全てを借りることにした。

 生活部を後にすると、もふさまが先生の魔力は凄いと教えてくれた。

 そのとき、わたしは先生の名前も知らないやと思い当たった。次に来たときは先生の名前を聞こうと思う。



 まだクラブ活動の時間内だったので、クラブの方を見に行こうと決める。

わたしが目星をつけたうちのひとつ『文芸クラブ』だ。

 未来の作家を夢見る人たちが集まったクラブで、切磋琢磨して書き物をしているのだとか。在学中に賞を受賞された先輩もいる。

 部室は第二校舎の3階の部室棟とされる並びと、ガイダンスでもらった冊子には書いてあった。

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