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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
6章 楽しい学園生活のハズ
233/1131

第233話 ようこそ、ユオブリアの学び舎へ

 ここに本当に5年間通えるんだ。

 幾度か見てきた景色を期待を持って見上げる。

 どんな出来事が待っているんだろう?

 わたしは何を想い、この道を歩くのだろう?

 門から続く通路はまっすぐで、花壇や噴水を挟み荘厳な校舎がその奥に見える。


「リディー」


 父さまから声がかかる。

 受験日はなんだかんだあったので、かなり早く家を出た。そのためか、まだ人はまばらだ。


「式の会場はあちらのようだ。リディーは新入生だからそちらだな」


 張り紙がされていた。


 父さまにぎゅーっと抱きつく。

 離れると父さまは屈み込んでわたしの頭を撫でる。


「また後でな」


 後で顔は見られるけれど、今日から寮に入るので、週末の3日後にならないと家族には会えない。そして週末が明ければ父さまと母さま、エレンとノエルは領地へと帰ってしまう。母さまにもハグする。サブルームがあるので定期的に会えるわたしでさえ淋しいのだ。他のみんなは淋しくても耐えるしかないんだなと思うと、胸が締め付けられる。双子の〝行っちゃやだ〟も大変だったけど、もふもふ軍団も抑えるのに大変だった。ぬいぐるみで紛れ込もうとしていたからね。


 わたしだって離れるのは淋しい。だけど、他の子は会いたくても会えなくて。それも我慢している。それが学園に入り学ぶことのひとつなんだと思う。そう言えば、なんとか納得してくれた。わたしは週末には帰れるから恵まれているのだ。これで長い休みしか会えなかったら、本当に淋しいだろうと思う。



 父さまたちと別れて張り紙通りに校舎に向かえば、逸れるようにして横に並木道があった。その先の建物まで続いている。


 アルネイラの薄い水色の花びらが舞っている。水色版の桜ってところかな。桜と違って4枚の花弁だけど。中央の強い水色から花びらの先に薄い水色へとグラデーションとなっている。アルネイラの花は満開で風に揺すられてはハラハラと舞い落ちる。

 きれいだなーと見ていると、見つけてしまった。花が散ったアルネイラが実をつけているのを。ベアがいうことには、たくさんあるアルネイラの花の中から実が育つのは半分以下だという。酸味もあるが甘くて鳥類の大好物。実は鳥が啄んでしまうので、出会う確率も少ない。が、とてもおいしいという。サイズは親指の爪ぐらいの青い実だ。あ、そこにもある。

 風魔法を使いそうになり、押し止まる。

 学園内で魔法の多用は禁止されている。実を落とすぐらいの魔法は大したことないけれど、魔法を使ったという事実は残るそうだ。聞いといてよかったよ。それにね、光魔法なんか使ったものなら、すぐにバレるとのことだ。使わずに教員に治してもらってよかった。


 あ、良さげな枝発見!

 引きずってきて、実へと突き出す。届かない。

 ジャンプしてみても……だめだ。

 いっそのこと、木に登ってみるか。

 誰もいないよねと確かめるのにキョロッとすれば、ロサが憐むような目でわたしをみていた。


 あ。背中に枝を隠す。今更と思いつつ、笑顔を貼り付けて挨拶する。


「ご機嫌よう、殿下」


「ご機嫌よう、リディア嬢。そんなところで飛び跳ねて何をやっていたのかな?」


 わたしの隣までやってきて見上げる。ロサが青い実を見ている。


「花をとろうとする者を見たことはあるが、実を取ろうとした者は初めて見た」


 ええ、ええ。わたしは食い意地が張っていますよ。

 あ、ロサはわたしよりずっと背が高い。

 周りにお付きの人はいないみたいだ。


「ロサ、取れない?」


 ロサは額を押さえる。


「あのなー、生徒会の者が、学園の公共物に手を出せるはずないだろう?」


「甘酸っぱくておいしいんだって。市場にもあまり出回らないみたいだよ」


 ロサがため息をつく。


「まったく、お前は……」


 ロサは嫌々を装いながらも、わたしから枝を受け取ると、それを天へと掲げる。狙いを定めて、軽くタンと飛び上がれば、枝が実の根本に当たり、青い実が落ちてくる。それを難なく受け止めてわたしに渡してくれる。


 わたしは見つけたもうひとつを指さした。

 ロサは眉を八の字にしながらも、もうひとつ実を取ってくれた。


「ありがとう。はい」


 ひとつをロサに渡す。


「なんだ?」


「稀少ものだよ。食べておかないと」


 口に含むと、張りのある皮がプチッと弾けて中から柔らかい果肉が出てきた。酸味もあるけれど、爽やかさがあるぐらいで圧倒的に甘い。


「甘い、おいしい!」


 そう伝えれば、ロサも青い実を口に含んだ。


「これは……なかなか」


「ね?」


「……リディア嬢、口中が真っ青だぞ」


「……ロサも青いよ」


 ベア、食べると口が青くなるところまで、教えておいて欲しかった。

 ロサが吹き出す。

 わたしも吹き出した。

 ロサが足を揃えたと思ったら、胸に手をあて、わたしに頭を下げるような仕草をした。


「入園、おめでとう。ようこそ、ユオブリアの学び舎へ」


 ロサに言われて、現実味が出てきた気がする。


「制服も似合っているよ」


「そう?」


 嬉しくなって自分でも見てみる。

 セーラーにジャンパースカート、そしてジャケットを着ている。今日は正装なので、その上にマントを羽織り、頭にはベレー帽を乗っけている。


 ロサが学園に入園する年にこっそり教えてくれた。陛下との試験に合格したと。恐らく領地の発展を見据えたり、それを手助けしたり、周りとの調和の取り方とかそういう試験だったのではないかと思っている。


 そのうちのひとつの領地がウチで、ウチの領地は目覚しく発展させたからね。よくわからないけれど、王位継承者として着実に力をつけているのだと思う。

 そんなことがあったことからも、ロサとわたしの関係も良好だ。

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