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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
6章 楽しい学園生活のハズ
232/1132

第232話 合否

「嘘じゃなくて?」


 父さまはエキサイトしたわたしに微笑む。


「嘘なんかつかないぞ」


 う、やったー!

 サブサブサブルームで、父さまに飛びつく。

 もふもふ軍団もわたしがはしゃいでいると、一緒に跳ねて喜んでくれた。


 わたしは春から学園に通うことを許された! 再試験を受けさせてもらったものの、試験結果はあの15分受けた方の結果を採用なので、落ちると覚悟していた。

 憎まれるとか、そういうのは嫌だけど、始まってもいないうちに悩むのもどうかと思って、何かあってから考えることにする。聖女候補にはアンテナ張るけどね。


 早速ほうぼうに連絡して、わたしの入園式に間に合うよう出立してくれた。留守の間、領地はおじいさまがみてくれる。領地にもフォンタナ家の人たちが大勢働きにきているので、領主代理を立てず留守にしていても今までに問題が起こったことはないんだけどね。


 おじいさまと一緒に砦からアラ兄とロビ兄も帰ってきたようだ。空っぽダンジョンを使い時短したみたい。サブルームもハウスの仮想補佐を育てたので、アオがいなくても登録者はなんなく使える。空っぽダンジョンからミラーダンジョンへの移動もアオともふさまの共同作業で魔具を作れたので、移動が可能だ。

 わたしの入園式に出席のため、みんなが協力してくれた。




 フォンタナ男爵の夫人であるアマンダおばさまに相談して、寮暮らしに必要なものを買いに行った。母さまの到着がギリギリになりそうだからだ。

 入園式のあとすぐに入寮となるので、それまでに準備をしておかないとなのだ。


 まず制服だ。冬服、夏服、中間服。既成のサイズがあり、体形に合うようにお直ししてもらう。1番小さなサイズでも大きかったので、つめつめだ。今用意するのは冬服と中間服。あとはそれぞれ着る前にこちらでまた測ってもらうそうだ。ちなみにこの制服は1年から3年までで、高学年の4年と5年生ではバージョンアップの装いとなる。それから体操服みたいなもの、体を動かす授業で着る服だね。正装の時のマント、ベレー帽。新しい筆記具はおじいさまとフォンタナ家の方々からのプレゼントだ。ペンにはわたしの名前が入っている。


 寮で過ごす格好に規定はない。侍女は認められない。食事は決まった時間に食堂に食べに行く。下着は自分で洗濯。それ以外は配られる専用の袋に入れて8時までに指定のところに出すと、2日後には洗って返してくれるようだ。どんな身分の者も洗濯のやり方と部屋の中の簡単の清掃はマスターしてくるよう注意があったようだ。

 おばさまたちが通っていた頃は、全ての洗濯を自分たちでやったそうだ。洗濯をする場所はそんなに広くない。いい時間は先輩に取られてしまうので、夜遅くか朝早くやるしかなく辛かったとか。部屋干しが基本で、風魔法を持ってる子は重宝され、お小遣い稼ぎをしていたそうだ。

 部屋干しか、冬場なんかなかなか乾かないから大変なことになりそうだ。風持ちで良かった。

 部屋割りは学園が決める。貴族社会らしく、爵位が高い親を持つほどいい部屋で、伯爵家は広さはないが個人部屋を貰えるらしい。学園の敷地が尋常ではないわけがわかる。寮もかなりの広さがいるだろう。男女で別れ、男女ともクラス別の寮に分かれる。


 ひとクラスだいたい40人、それが4クラス。一学年につき160人を受け入れている。第二王子殿下と同学年となる3年生が一番受験者数も多かったし、受け入れたのも多かったそうだ。ちなみに第一王子は5年生で、特に生徒数も増えなかったとか。第一王子は体が弱いそうで学園にはほとんど通われてないそうだ。

 今年も160人の募集だったはずだが、220人の受験生がいたようだ。

 寮もクラス別で1年生から5年生が集まる。ひとクラス40人、そのうち女生徒だけだと半分として20人。それが5年生まで1つの寮に100人が一緒に暮らすのね。

 しかも寮でもその顔ぶれなわけだから、クラスが最悪と思ったら辛すぎる毎日になるだろうな。


 暮らすのに必要な細々としたものを揃えていく。

 知り合いはこぞってお祝いしてくれて、入園試験のあれこれなんて、もう遠い過去のことのような気さえする。




 入園準備に奔走していれば時は過ぎ、父さまたちが王都に着いた。

 馬車から1番に降りると、制止の声にも構わず、わたしを目指して走ってきて抱きついてくる。


「姉さま!」


 わたしもぎゅーっと抱きしめる。


「エリン!」


 兄さまと似たプラチナブロンドのサラサラとした髪。深い青い瞳。色が白くて、好奇心いっぱいの瞳は大きく、ぷくんと膨らんだ唇は小さい。ゆるいカーブを描いた頬は薔薇色。見た瞬間にあまりのかわいさにノックアウトされること間違いなし! エトワール・シュタイン、わたしの大切なかわいい妹だ。家族は愛称でエリンと呼んでいる。


「姉さま!」


 エリンの横からわたしにしがみついてくる。わたしはふたりを抱きしめ直した。

 アラ兄に似たミルキーブロンドで、真っ青な瞳。エリン同様、母さまにそっくりで完璧にかわいい男の子。エリンとは双子のノエル・シュタイン、わたしの大事なかわいい弟だ。エリンがどこまでも行ってしまう性格なので、そのストッパー役になっているところがある。


 起きているふたりに会うのは3週間以上ぶりかな。ふたりには何かあった時にシェルター的な意味でサブルームがあるのは伝えてあるが、行き来が可能なことは話していない。知ってしまったら、何をしだすか予測ができないからだ。頭もいいし、分別もあるのだが、興味あることに一直線となるので何をしでかすかわからない。わたしたちは双子の奔放なところを恐れている。


 生まれてすぐから双子は規格外だった。5歳になり魔を通してもらわないと魔法は使えないはずなのに、言葉も話せないうちから自由に魔法を使っていた。

 ミルクが飲みたくなれば母さまを引き寄せたし、オムツが濡れればオムツが飛んできた。それは属性って何?っていうぐらいカテゴリ分けをされないことを、もう、自由に無意識に使いこなしていた。大人たちはみんな頭を抱えた。意思の疎通ができるようになってからは、魔法の使い方を教えて、自由に使えることがわかると離れ離れになってしまうと説いて、今は属性魔法しか使わないようにしている。

 そんな理由で双子たちには話せていないことが結構あり、ルームで行き来できることは知らない。受験のために兄さまとこちらに来てから、夜には家に行ったりして双子の寝顔を眺めたりしたが、起きているふたりとは3週間ぶりなのだ。

 並べば、家族ってすぐわかる。わたし以外は。美男美女の輝かしい家族だ。



「姉さま、合格おめでとう!」


 ノエルに祝ってもらって、お礼を言いおでこにチュッとすれば、エリンが怒り出す。


「あたしが最初にいうはずだったのに!」


 エリンを気にするわけでなく、わたしの胸に顔を埋めている。


「だったら、エリンもちゃんとお祝いを言わないと」


 アラ兄がノエルを抱えたわたしを引き寄せ、額にちゅっとしてくる。


「リー、合格、おめでとう」


 13歳としているが本当は15歳となったアラ兄は、背も伸びて少年を離脱しようとしている。


「アラ兄、ありがとう」


「オレにはチュッってしてくれないの?」


 強請られ、おでこには難しいのでほっぺに口を寄せる。


「リー、おめでとう」


 ガバッと抱きしめてきたのはロビ兄だ。こちらも成長が著しい。

 本当、みんな格好よく成長してくれちゃってさ。やはり強請られたので頬に口を寄せる。


 父さまと母さまともギュッと抱擁をする。


「姉さま、もふさまは?」


「中にいるよ」


 エリンが元気に家の中に駆け込んでいく。ノエルはわたしと手を繋ぐ。

 玄関から兄さまが出てきた。


「道中お疲れ様でした」


 父さまと母さまが兄さまとハグをする。


「フランツおじさま、会いたかった!」


 ノエルが兄さまをギュッとする。

 下の双子は、兄さまを〝おじさま〟と呼ぶ。誰もそんな呼び方をしていないのに、初めから兄さまのことは〝おじさま〟だった。ちなみに、シヴァは〝シヴァ〟だ。どうして兄さまをおじさまっていうの?と聞いてみたところ、おじさまだからって返事だった。おじいさまのことは正しく〝ひい爺さま〟と呼ぶし、不思議だ。

 兄さまがアラ兄、ロビ兄と軽くハグする。


 双子は魔力も高く、全属性持ちだ。もちろん属性は絞り魔力も絞って隠蔽済み。それでも能力が高い。母さまにまた娘が生まれたとあって、3歳で届けを出した時、世間は沸いたが、ウチには手を出さない約束を陛下は守ってくれている。5歳になり、魔力の測定を受けた時も注目を集めたが、光がないので収まっていった。わたしもなかったことから、まあそういうものかと思われたらしい。


 光属性はなくても、見目麗しく優秀で魔力もある方なので、早速婚約をと言い出す貴族や、双子と出会うとあの子と結婚するとバタバタ騒がれたりしたが、双子はそれを華麗に自分たちで回避した。

 エリンは、自分と結婚したいなら、父、伯父、兄たちより見目がよくないと嫌だし、彼らより強く賢くないと考えられないといい、ノエルは、エリンが認めるような人じゃないと考えられないと言った。

 父さまや兄さま、アラ兄、ロビ兄、シヴァより容姿がよく、強く賢いはなかなかハードルが高いと思う。その台詞でスゴスゴと引き下がっていった。



 家の中から、もふさまが飛び出してきた。

 わたしにジャンプして肩に飛び乗る。

 その後ろをエリンが駆けてきた。


「エリン、もふさまを追いかけまわしちゃダメでしょ」


「だって、まだ少ししか顔を埋めていないのに、逃げるんだもの」


「逃げたってことは、それ以上は嫌なのよ。エリンも嫌なことを続けられるのは嫌でしょう?」


「はぁい。じゃあ、姉さま、買い物に行こう!」


「エリン、まだ着いたばかりでしょう? みんなでまずはお茶にしましょう」


 エリンはパワフルなので、買い物なんかに行かされたら、走り回って長い時間隅から隅まで見ることになり、わたしが死ぬから。


「はぁい。ノエル、お茶の前に部屋に行こう」


「エリン、ノエル、自分の荷物を持って行きなさい。そうして部屋を整えてね」


 母さまに良い子の返事をして荷物を持っていく。王都の使用人は最低限しかいないので、何事も自分たちでやるのだ。


「ギリギリになってしまって、準備をするのに間に合わなかったわね、ごめんなさいね、リディー」


「ううん、来てくれて嬉しい。アマンダおばさまが買い物に一緒に行ってくださったから大丈夫だよ」


 それに週末は帰って来られるしね。

 そう告げれば、母さまは安心したように微笑んだ。


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