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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
5章 王都へ
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第202話 ちっちゃペンギン

 応接室に戻ると、アルノルトにじろりと見られた。


「アダムさまと川でお会いしたとか?」


「不在時は町の家に預けてほしいと伝えていました」


 わたしに非はないと先回りして言ってアダムを見れば、彼も頷く。


「ええ、そう聞きました。ただ直接届けたかったのです。お店の子供たちに聞いてみたら、川に行ってるんじゃないかと言っていたので足を伸ばしました」


「お嬢さまは、川で何を?」


「え? それは、もちろん……魚を獲ろうと思って」


「……魚を?」


「ええ。そしたら転んで濡れてしまったの!」


 ふふふ、わたしはよく転ぶからね、疑われないはずだ。

 よし、これで髪が濡れていたのも繋がった。


「リディア嬢、魚の獲り方を明日、馬車の中で教えてくれる?」


 明日? はぁ? 行かないって言ったのに。

 アダムは口パクで言った。「服」と。

 服?


「どんな格好で、魚を獲るのか、とか?」


 あ。

 アダムはニヤリと笑う。

 ウチの人に水遊びのことを言ってないのに気づいたんだ。

 魚の取り方の格好と、その時の服装の格好を含ませているわけね。

 わ、わたし、今脅されているの??

 行かなければアルノルトにショートパンツをバラすと言うの?

 そんな後ろのアダムの様子に気づかず、アルノルトはわたしに確認を取る。


「アダムさまと明日お出かけのお約束を?」


 アルノルトはショートパンツを知ったら母さまに報告するだろう。……母さまは卒倒するかもしれない。


「……ええ。推薦状のお礼に、イダボアを案内することに……」


「あ、婚約者がいるから二人だとまずいのですよね? セズでもペルシャでも、一緒で構いませんよ。うちの馬車で行きましょう。今日はこの町に泊まるので」


 毎度あり。カトレアのうちにお客が増えるのはいいことだ。

 誰にイダボアへ一緒に行ってもらおう。ペルシャは病み上がりだし……他の子は仕事あるしね。でもアダムとふたりは嫌だし。もちろんもふさまはいっしょだけどさ。


 帰りがけにミニーのうちに寄ってもらった。明日の予定は特にないというから、イダボアへのデートに誘ってみた。貴族のお荷物がいてイダボアを案内するんだがと、もちろんわけを説明した。ミニーは頷いてくれた!

 ミニーのお父さんたちに許可をもらって、明日一緒に行ってもらうことが決まった。

 ふふふ、面倒な予定のお出かけだもん、楽しみがないとね。

 あ、ミニーとデートならおしゃれして、おいしいもの食べて。

 おばさんにこっそり尋ねる。人差し指と親指で丸を作ってくれた!

 明日の時間を言って、アルノルトと家に帰った。





 デートの用意をしていると、母さまが不思議顔だ。


「アダムさまと行かれるのよね?」


 わたしはミニーが一緒だと話すと、母さまはクスッと笑う。そして準備を手伝ってくれた。


「リディア」


「ん? なあに?」


「おいらも一緒に行きたいでち」


 !

 アオは言ってからしまったという顔をした。


「無理言ったでち」


 アオが自分がどうしたいとか要求することはほとんどない。控えめなのと、我慢する癖があるんだと思う。そんなアオのお願いは是が非にでも叶えたい。


「……ううん。一緒に行こう!」


「え、でも……」


「考えてみれば、いい案が出るかも。もふさまは本当はもっと大きいんだよ。アオは小さくなったりできる?」


「小さくでちか?」


「もふさま、コツとかあるの?」


『それだけ魔力があればできるだろう。我は小さくなっているわけではない、赤子の頃の姿になっているだけだ』


 なんと! もふさま、赤ちゃんの時の姿だったんだ。小型化じゃなくて若返っていたんだ。


「過去の姿ってことでちか。なるほど、それなら」


 アオはギュッと目を瞑った。


「どうでちか?」


 こ、これはみたまま赤ちゃんペンギンだ。白いところがいっぱいでふわふわだ。やーーーーん、かわいい!

 思わず手を伸ばして頬擦りする。


「リディア、なんでちか?」


「アオ、いつもかわいいけど、さらにかわいい!」


『魔物の赤子を連れ回すのか?』


 そっか、そうなるか。

 でも、ふわふわ赤ちゃんペンギンのアオ。ぬいぐるみにしか見えない。


「違うよ」


 そう、わたしはアオの赤ちゃんの姿をぬいぐるみと認識した。


「そうだ、コーティング。ぬいぐるみ防御をコーティング!」


「ぬいぐるみ防御をコーティング?」


 アオの目がまんまるでかわいい。元からまんまるだけど。

 ギフトって感覚で使うものじゃないかとこの頃思っている。考えているとうまくいかない。だけど、直感でこれ、と思ったものはピタリとハマるのだ。


「ギフト、プラス! ふわふわ赤ちゃんの姿、逆行のアオの魔法に、ぬいぐるみ防御をプラス!」


 アオは真っ黒の瞳をパチパチした。


「アオ、心で唱えて、ぬいぐるみ防御って」


 心の中で思ったのだろう。コロンとアオが転がる。


「アオ、解除と思って」


 アオが起き上がる。


「な、今のなんでちか?」


「わたしのギフトでアオの小さくなる魔法にプラスしたの。防御している時はぬいぐるみみたいに扱われても、痛くもなんともないからね」


 一応試しにもう一度防御してもらって、触りまくらせてもらった。大丈夫とのことなのでもう一度防御してもらって、今度はこねくり回してみた。解除して聞いてみると、痛くもなんともなかったとのこと。万全でないのは伝えた。わたしの思うぬいぐるみの接し方までしか防御できない、というか想定されてないはずだ。もちろん触らせる気はない。もしもの時のための保険にね。もふさまにリュックを背負ってもらい、そこにアオをセットした。真っ白なもふさまが薄いグリーンの羽付きリュックを背負い、そこからちょこんとアオが顔を出す。


 なんてかわいいの!

 もふさまがお座りしても、リュックだから問題なくてアオは顔を出したままだ。このリュックはいつかもふさまに背負ってもらいたくて作っておいたモノだ。母さまが盛り上がって作ってくれた。

 わたしはアオを抱えて、アオ専用のポシェットを母さまに頼んだ。赤ちゃんアオに母さまも大興奮! 頬擦りしたとき、遺伝だと思った。ポシェットは明日の朝までには仕上げてくれるとのこと。やったー!


 防御のプラスができないものかと試したことがある。結果、無属性の魔法でシールドを張ることはできたが、ギフトのプラスでは作りだせなかった。

 でも、アオの赤ちゃんの姿になる魔法には、プラスはできた。魔に魔を乗せる方が簡単なのかもしれない。


「これで、一緒にいられるね」


 そう言えば、アオは照れたように下を向いてから頷いた。





 アルノルトには申し訳なかったが早めに家を出る。もふさまはリュック装備。わたしも母さまが作ってくれた、アオ専用のポシェットもかけている。その時々でどちらにいるかアオに選んでもらうつもりだ。


 ミニーの家に行く。わたしが持ってきた一揃えの服に着替えてもらう。色違いの双子コーデだ。お出かけ用のドレスまではいかないが、ワンピースよりワンランク上の装い。服を買う時、選ぶのが面倒なので、ひとついいなと思ったのを色違いで買っている。女性陣はつまらないと嘆いていたけれど、思わぬところでミニーと双子コーデができる。昨日おばさんにミニーにツインテールできるかを聞いたらできるとのことだったので、その飾り紐もお揃いのもので持ってきた。髪型もお揃いにできる。

 着替えて出てきたミニーはとってもかわいかった。ツインテールも髪飾りも、フリルのあしらいがある服も、靴下も靴も、全部色違い。


 えへへと笑いあって手を繋ぐ。

 おじさんやおばさんに見せると、とってもかわいいと褒め称えてくれた。サロもかわいいよと言ってくれた。

 わたしたちは気をよくして、宿屋に向かった。

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