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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
1章 ここがわたしの生きる場所
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第2話 探ってみた

本日投稿します2/3話目です。

 夕日で空も大地も茜色に染まっている。やはり緑の匂いが濃い。

 虫がいっぱいいそうなのは嫌だけれど。


「すてき!」


「すてき?」


「いなか暮らし、嬉しい」


「いなかって田舎? ひいおじいさまのいらしたところも辺境でここと同じぐらいだと思うけど?」


 そうだっけ? と兄さまを見上げる。覚えているのはゴツゴツした岩だなー。


「兄さま、あっち、行こう」


 なんだあれは、井戸かな?


「これは井戸だよ。お水をここから汲むんだ。リディーの力じゃまだ無理だからひとりでやろうとしてはダメだよ」


 うんと頷いておく。

 上に滑車がついている。そこに縄の端と端に桶をつけたものを両天秤にして水を汲むタイプのものだ。滑車がある文明度で、わたしは少し安心した。


「兄さま、なにかなってる!」


 目の前の木はオレンジ色の実をつけているではないか。見た目が枇杷っぽい。


「本当だ、なんの実かな?」


 あ、長めの木の枝だ。兄さまの手をといて枝を拾う。

 わたしの背丈より高いや。


「ちょっとリディー、何するの? そんな枝なんか持ったら危ないよ」


 わたしはそれを持ち上げて、上に向ける。

 でもわたしがちびっちゃいから、全然葉っぱにさえも届かない。

 兄さまが苦笑している。


「取りたいの?」


 わたしは頷いた。


「兄さま! リーも何してるの?」


「何してるの?」


 双子がやってきた。ブロンドの髪に青い目をしている。髪の色がちょっと薄い方がアランで、濃い方がロビンだ。ちなみに2つ上なのがフランツ兄さまで、わたしは兄さまとよび、ひとつ上の双子はアラとロビと呼んでいた。


「リディーがあの実が欲しいみたいなんだ」


「じゃあ、おれが取ってやる」


「ロビ兄、気をつけて」


 乱暴なところもあるけれど、動くことが大好きなロビンにエールを送る。


「……何、ロビ兄って。リー、オレは? オレを呼んでみて」


「アラ兄」


「兄さま、聞いた? リディーがオレのことアラ兄って」


〝さま〟まで言ってないのに、ふたりはいたく感激している。兄扱いをされたかったみたいだ。長いと噛みそうだから嫌だったのかな? リディアは、面倒くさがりだ。話すと疲れることもあり、極力単語を少なくしているみたいだ。それに……話すことが苦手なのかもしれない。口に出そうとすると、なんか違和感がというか、言葉につかえる。ご、ごめんね、ふたりとも。


 ロビ兄がするすると木をのぼりだした。木の枝の隙間から顔を出して、


「兄さま、受け取って」


 そう言って枇杷のような実を兄さまに放った。

 兄さまはそれを受け止める。

 ロビ兄は6つの実をとってくれた。受け取った枇杷をわたしはワンピースのスカートの裾を持ち袋のようにして、枇杷を入れてもらった。


「な、リー、ダメだよ。シュクジョがスカートをもちあげちゃ」


「下、いっぱいはいてるから、へいき」


 スカートの下はペチコート、さらに膝丈のズボンをはかされているのだ。スカートをめくりあげても何も困ることはない。


「それでも、オレたち以外の誰かといるときはそんなことしちゃダメだからね」


 と念を押されてしまった。わかったと頷いておく。

 木を降りてきたロビ兄にお礼を言って、収穫物を持って家に入る。


「まぁ、ビワンの実ね」


「リーがみつけたんだよ。これ食べられるの?」


「ええ、食べられるわ。食後にいただきましょう」


 母さまの後ろについていき、ビワンをキッチンへと運んだ。

 コンロはふたつと、オーブンっぽいものがついていた。

 大きな樽があって、覗き込むとお水だ。


「のど、乾いた」


 ロビ兄がそう言って、樽に柄杓をいれる。コップにそれをついで飲もうとするから、大きな声が出た。


「ダメーーーーー!」


「どうした、リー? リーもノド乾いたのか?」


「ちがう。生水、ダメ。ちゃふつしないとダメ」


 う、噛んだ。


「ちゃふつ?」


「ちゃふつ??」


 双子が仲良く噛んだ言葉を拾う。


「どこで聞いたんだ? リディーが言ったのは煮沸だろう」


 父さまに抱きあげられる。


「煮沸、ですか?」


 兄さまが首を傾げる。


「水の中には体に悪さをするものがいることがあるんだ。水を沸騰させると、その熱で悪さするものを退治することができる」


 そうだよ、どれくらいの文明かはわからないけれど、予防は大事だよ。

 母さまがお鍋を取り出す。


「それじゃあ、お水を一度沸騰させましょうね」


 お鍋いっぱいに水を入れて、コンロに置く。そして人差し指を振ると火がついた。


「なに?」


「え?」


「火、ついた」


 母さまは目をパチクリとさせた。


「ええと、生活魔法で火をつけたのよ」


「おおおーーーーーーー。母さま、すごい!」


 魔法あったんだ、うわー、やっぱり異世界だ! すごい!


「ふふ、リディーがこんなことで喜んでくれるなんて」


「リディーももうすぐ5歳だから属性検査が受けられるよ。そしたら魔法が使えるようになるし、ギフトもわかる」


「魔法? ギフト??」


「リーどうしたんだ? 今まで魔法にちっとも興味がなかったのに」


「うん、今日のリーは面白い。いつもとちがう」


 そうか、わたしは魔法にも興味がなかったんだな。


「レギーナも今日は疲れただろう。あり合わせのものをいただいて、今日は早くに寝よう」


「そうしましょう」


 晩ご飯は茹でたお芋と硬いパンだった。塩つき。申し訳ないが枇杷が一番おいしかった。

 キッチンを探ったけれど、調味料っぽいものが塩とオイルしかなかった。片付けられてなくても使う部屋に物は持ち込まれているみたいだから、調味料自体これ以上ないのではないかと思う。


 トイレは洋式みたいに椅子に座るタイプのもので、魔石で排泄物を肥料にしているそうでほっとした。トイレはキレイで清潔だ。

 お風呂はない。布切れを水に浸して体を拭く。嘘ぉー。全然、清潔じゃなかった。


 淑女、淑女と言葉が飛び出していたが、父さまは伯爵らしい。それで使用人が一切いないってどういうことなんだろう。わたしが本で読んだことのある異世界事情ともまた違い、爵位があっても使用人などいないのが普通なのか。可能性として高いのが、貧乏ってやつ。使用人が雇えるほどでない、とか。その方がありそうだな。


 部屋はいくつもあるけれど、ベッドは父さまたちのお部屋と、わたしたちの子供部屋にあるだけだ。大きいベッドだから4人で寝て寝返りうっても問題ないけど。


 ご飯を食べ、体を拭いて、夜着に着替えてベッドに放り込まれる。

 灯りは消されてしまったが、カーテンの隙間から月明かりが溢れてくる。

 ゴロンとしながら、目を擦り兄さまたちの持つ生活魔法を教えてもらう。

 今日は昼間に2回も眠ったのに、ベッドにいると眠れてしまいそうだ。

 生活魔法の属性は5つあるそうだ。火、水、土、風、光。

 フランツ兄さまは火と風。

 アラ兄は水と土。

 ロビ兄は火と土。


 ギフトは特殊なもので、家族にも何ができるか言わないのが普通だそうだ。作ったりやったりすることで概ねわかるけれど、どう応用しているかはわからないものだから、ギフトそのもののことは伏せるんだって。


 ちなみに、父さまは水と土と風。

 母さまは、火と光をお持ちだそうだ。

 わたしは何の魔法が使えるんだろう? 早くもワクワクする。

 興奮してきて眠れないんじゃないかと思ったけれど、母さまの真似をして兄さまが背中を叩いたら、わたしはしっかり眠ってしまった。

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