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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
5章 王都へ
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第197話 侍女見習い①支援団体の仕事

 次に会うときは夏の終わり頃だろう。

 昨日シヴァが合流した。一晩ウチに泊まって、今こうして小さくなっていく背中を見送っている。

 ケインはわたしたちのために置いて行ってくれた。

 アンダーさんのところから4頭も馬をレンタルしているので、領地を行き来させるのは牛車になりそうだ。

 父さまたちがいない間、しっかり領地と母さまと弟か妹を守らないとね。




「お嬢さま、今日はプリンとオムレット、こちらで全部ですか?」


「そうよ、ビリー、そこにあるので全部」


 出店はビリーとマールが舵をとってくれている。

 会計のボスはサロ。そんなふうにみんなが得意分野を受け持ち、短い時間ながら回してくれている。わたしは売る物を渡すだけでいいので大変助かる。


 今はいつもより人手を増やし、ご飯を売っている。おにぎりとスープとおかず2品だ。それは多くの家が芋を茹でたものとか、肉をからっからに干したものとか、携帯食をそのまま食べているというのを聞いたからだ。どこの家もお母さんの具合が悪いんだと聞いて伝染病?と焦ったが、どうやらおめでたラッシュらしかった。

 弟か妹の同学年の子が領地にいっぱいできそうだ。

 お母さん方が体調不良で食事を作れないため、お腹を空かせている子が多く、一食でも栄養のバランスが取れる物をとお弁当のような形で売り出した。これがめちゃくちゃ売れる。でも中には、好き嫌いやそれぞれの家の事情で外食にかけられるお金の問題もあるから、一揃えのお弁当としても個別にでも買えるようにした。


 普通の食事が食べられないお母さんたちにも、母さまが食べられたものを売ってみた。

 天草が欲しかったので、貢物を持って海辺に行った。あたりに誰もいないのを確認してから眷属さんたちを呼び出し、海の主人さまと皆さんでお召し上がりくださいとプリンとクッキーを持っていき、できましたら天草をくださいと願い出たところ、山のような天草をもらった。その他にも天草に混じって海の幸がいっぱい。海藻類もいっぱいだ。

 その天草でところてんと、ミルク寒天を作って売っている。こちらも妊婦さんに好評だ。暑くなってきたことで妊婦さん以外も食欲が落ちたりするので、暑い時にでもつるんと食べられるような物も何か考えたいな。






「お嬢さま、こちらが届いたのですが……」


 ある日、アルノルトが手渡してくれたのは、子供自立支援団体宛ての手紙だった。

 セズたち5人のために立ち上げたものだが、10歳以上で仕事がない子は溢れていた。家の手伝いなんかをしていたみたいだけど、領地自体が栄えていたわけでないので働くところもなく、だからといって領地から出るお金もなくというところだったようだ。年齢はバラバラだが、領地の多くの子が登録している。全部で73名だ。

 町や村で、子供でもできる仕事を割り振るのがわたしたちの仕事だ。いずれは登録者たちの中で仕事の手配もできるようになってほしいと思っている。

 このところ、お茶会で寄付をしてくださった方々が、仕事をふってくださることがある。ただ、それは遠くの地なので、ほとんど断ることになっている。


「こちらはモロールのハンソン家の方からのご依頼です」


「モロールのハンソン家?」


「ハンソン伯の姉君の家ですね」


 手紙には子供自立支援団体の話を聞き、とても感銘を受け、自分も何か役に立てないかと思ったと書いてある。書き手は、10歳の男の子のようだ。9歳と8歳の妹がいて、下の妹が病弱で寝込んでいることが多いそうだ。同じ年代の子と遊ばせると、ついて行けなくて息切れしてしまう。そこで、9歳の妹の侍女と8歳より下の子の遊び相手がほしいと言う依頼だった。普段は王都にいるのだけれど、妹の療養のために伯母のモロールの家に来ているそうだ。


 場所もモロールと行けない距離ではない。セズが侍女仕事に自信を持てるようになるかもしれないし、セズとペルシャでハンソン家に行ってもらうことにした。

 8歳のベスちゃんは、少し走っただけでゼーゼーと呼吸が荒くなり、疲れると横になるほど体の弱い子みたいだ。

 セズはお姉ちゃんの方の身支度を整えたり侍女の仕事を頑張り、ペルシャは本当にただ一緒に遊んでいるらしい。


 4日ほど通いつめたが、ペルシャが風邪を引き熱を出してしまった。お給金がいいので、セズは行きたいみたいだが、ふたりセットが決まり事だ。登録をしている8歳以下の仕事なしの子がいなかったので、わたしが行くことにした。たまにはそんなことがあってもいいだろう。侍女の仕事となるとできないが、ペルシャの代わりならベスちゃんと一緒に遊べばいいだけだ。


 おじいちゃんに馬車で送ってもらい、モロールに。

 セズと手を繋いで、ハンソン家についた。

 伝達魔法でオッケーをもらった、もふさまも一緒だ。

 ベスちゃんは起き上がっていたけれど、コンコンと咳をする。

 初めて会うわたしにもじっとしたが、もふさまを見て目を輝かせた。


『リディア、この娘は病気ではないぞ』


 体が弱いって言ってたからな。でも人目がある今は、もふさまに伝えられない。


「初めまして、リーです。お嬢さま」


 挨拶すれば


「ベスよ」


 と頬を赤らめる。わたしより確実に体は大きいが、8歳にしては小柄かもしれない。そして町の子の8歳より幼い印象だ。


「ペルシャは?」


 小首を傾げる。


「ペルシャは風邪をひいてしまいまして、わたしが代わりに来ました」


「そう。可哀想に。その子はあなたの?」


「もふさまです」


 わたしはもふさまを紹介した。

 もふさまが撫でやすいように近づけば、優しく頭に手を寄せる。


「うわぁ、ふわふわ。あったかい」


 遠慮がちに撫でていた手が本領を発揮した。ああ、頬擦りしちゃってる。

もふさまは我慢している。

 ノック音がした。

 薄い金髪に青い瞳。


「お兄さま!」


 ベスちゃんがスクっと立って、男の子に駆け寄る。

 兄さまよりも大きい。ベスちゃんは普通にかわいいが、そのお兄さんは兄さまに張れるぐらいかっこよかった。

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