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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
1章 ここがわたしの生きる場所
19/1135

第19話 手がかり

本日投稿する1/3話目です。

「お前たち、器用に魔法を使うんだな?」


 後片付けをしながらビリーが兄さまに言っている。


「そうだね。生活魔法ってけっこういろいろできて便利だって、最近知ったんだ」


「へぇー」


「魔力も多い?」


 ヤスが尋ねる。


「わりとある」


「貴族みたいだな」


「いや、貴族だろ」


 ビリーがヤスに突っ込む。


「え? 嘘」


「嘘じゃねーよ、領主の子供だぞ、貴族に決まってんじゃん」


「だ、だって、貴族には絶対近くなって言われてるのに、ビリーが普通に話すし、一昨日なんか突っかかるから」


「前領主には頭に来てるから、つい、な」


 貴族に関わるもんじゃないという不文律があるみたいだ。でも、しょっぱなからビリーが突っかかっていたし、普通に話すから、貴族ではないのかと思っていたみたい。

 まあ、父さまや兄さまが貴族だというのを聞いただけで、わたしもよく知らんけど。


「でも、それなら納得だ。だから貴族んとこのメイドが気にしてたんだな」


 !


「その話、詳しく!」


 わたしは走ってヤスの前に行った。


「え? 詳しくは……ヨムの方が」


 ヤスが目で探すと、オレンジ色がかったふわふわ髪の女の子は顔を赤くして目をそらした。


「人見知りなんだ。隣の家で野菜を売ってる。昨日来た客が変だったんだよな?」


 わたしはヨムの前に走った。


「ヨム、わたしリディア、よろしく。とても大切。その話、聞かせて」


 見上げると、ヨムはおどおどと視線を彷徨わせたが。


「ヨムよ。よ、よろしくね。昨日、お店の手伝いをしていたら、この町では見ない人が野菜を買いに来たの。茶色の髪で、大きな素敵な帽子をかぶっていたわ。服もいいものを着ていた。けれど、貴族ほどではないと思うわ。うちの野菜をいっぱい悪くいうの。新鮮じゃないとか、形が悪いとか。形が悪くたって味は変わらないのに」


 さっきまでおどおどしていたのに、そうとう腹が立ったのか、熱がこもってくる。


「母さんが、隣の領地からいらしたんですか? って聞いたら、それには答えないで、領主さまが変わったんですよね? 領主さまの家族には会いましたかって聞かれたの」


 !


「母さんは、少し前に市場に領主さまご一家が来て挨拶したけれど、そのあとから奥様の具合が悪いらしいって言ったの。私から聞いたって言ったら、領主さまの奥様は具合はどんなふうなの? って私に聞いてきた。だから、私、具合悪くてあなたたちがとっても心配しているんだって言ったの。そしたら、それは大変ねとか言いながら文句を言った野菜をいっぱい買っていったのよ」


 兄さまたちと顔を合わせる。絶対その人、関係者だね。


「あ、あの人か。おっきな帽子の人、家にも来た」


 サロが言った。


「なんか、言ってた?」


 尋ねると、サロは思い出そうと眉根を寄せる。


「そういえば、領主さまの奥様の様子を聞いてた」


 やっぱり、媒体が壊れないからおかしいと思って調べにきたんだ。


「ヤス、貴族のメイド言った。どうして、わかった?」


「あ、ごめん。神父様が高貴なところに仕えるメイドは大変だって言っているのを聞いたんだ。帽子かぶっている女の人を送りながら。ヨムから野菜を悪くいったのに上機嫌で買っていった変な見たことのない客がきたって聞いていたから、同じ人だと思ったんだ。ほら、うちの領地には、あんまり外から人がこないから。貴族んとこのメイドがなんで領主さまたちを気にするんだろうと思ってたけど、同じ貴族だっていうから、だからかと思ったんだ」


「本人に聞いたわけじゃないけど、父ちゃんが隣のモロールの人じゃないかって言ってた。やっぱり、いいところのメイドだろうって」


 サロが凄い情報をくれた。


「その人がどうかしたのか?」


 ビリーに聞かれる。

 本当は全部話す気はなかった。ただ、ウチのことを気にしている人がいないか耳をそば立ててもらおうと思っていただけだ。

 でも、みんな幼いながらも思いやりのあるいい子たちだ。だから打ち明けてもいいと思った。


「兄さま、話そう」


 そういうと、兄さまたちは頷いた。


「この話、子供だけ、秘密してほしい」


「秘密?」


 わたしはヨムに頷く。


「お願いある。ウチのこと、母さまを探ろうとする人の情報欲しい。でも、危険あるかもだから、聞いたりなんだりはしちゃダメ。大人たちが話していた、そういう聞いたこと教えて欲しい」


「まあ、それはいいけどよ、なんでだ?」


「母さま、呪いかけられた。呪いやっつけるのに、呪った道具壊す。呪った人知りたい。道具手に入れる。だから情報欲しい」


 川の流れる音だけが響いた。


「な、なんだよ、呪いって」


「呪いって、あの呪い?」


 顔を見るに、実際にあるかどうかは別として、呪いという言葉自体は聞いたことがあるみたいだ。


「違法になるけど、お金を出して人を呪うことができるみたいなんだ」


 兄さまが静かに話し出す。説明し終えると、再び静けさが舞い降りた。

 みんな顔を青くしている。刺激の強い話をしてしまった。


「ごめん、話したの、危険な人相手なこと、言いたかった。情報、聞いたことだけでいい」


 訴えかけると、泣きそうな顔をしていた。


「……貴族ってのは、怖えな」


 ビリーが低い声を出す。


「……大人たちに話した方がわかることがあるんじゃない?」


 眉を八の字にしてマールがそう言ってくれる。


「大人は〝立場〟があるから。知ってしまったら無理をさせることがあると思うんだ。だったら何も知らない方がいい」


「立場ってなんだよ、意味がわからない」


 ディンクがいえば、ヤスが答える。


「お前んちだって、父ちゃんより母ちゃんが強いだろ。父ちゃんがなんか情報仕入れても母ちゃんに話すなって言われたら言えなくなるだろ?」


「そっか!」


 系統的には例えは合っているのかな、ディンクは納得したようだ。みんな頷いている。どうやらお母さんが強いお家が多いようだ。


「……そんな感じで〝立場〟があるから、大人たちは勝手に話してて、それを子供が偶然聞くだけがいいと思っている。それを私たちに教えて欲しいんだ」


「お願いします」


 頭を下げると、隣で兄さまたちも頭を下げた気配がした。

 誰かの足が近づいてきた。ぽんと頭に手が置かれる。


「危険なことはしない。ただ手伝いをしている時に偶然聞いたことを、お前たちに伝えるだけだ」


 ビリーだ。


「おれも」


「おれも」


「私も」


「あたしも」


 みんなから声があがる。

 協力が得られる。これでまたひとつ、母さまを助けられる可能性が上がった。

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