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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
4章 飛べない翼

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第160話 商品登録

 要望に沿った3台のバイクと2台のスノボーを制作し終えた日、父さまから明日イダボアに行くぞと言われた。商団の人が来て、都合のいいときにイダボアに来てくれとホリーさんから伝言があったとのことだ。鍛冶屋さんの都合は明日がいいとのことなので、鍛冶屋さんとピドリナと一緒にイダボアの商業ギルドへいろいろと登録しに行くのだ。


 おお、不労所得への第一歩だ!

 事前になんの料理を売るかを話し合った。

 ピドリナは父さまに願いでたようだ。ハンナの誓約書のことを聞いてから、自分もそうしたいと思っていたそうだ。ハンナと一緒にと思っていたが、売り手になることから、できれば先に誓約書を作って欲しいとのことだった。父さまは請け負った。




 イダボアは相変わらず賑わっている。

 前来たときはウチより大きな町を見ることが楽しかったが、今日は領の在り方のひとつとして捉えて見るように言われている。そう言われると……まずい、わたしにはよくわからない。


 ハリーさんのお店に行った。

 人がいっぱいで賑わっていたので驚いた。

「いらっしゃいませ」と売り子さんに声をかけられ、父さまがハリーさんがいるかを尋ねた。

 かわいらしい売り子の女性は振り返って大声を出した。


「店長、お客さまですよ!」


「お客さま?」


 扉が開いて、顔を出したのは。


「シュタインさまに、皆さんでしたか!」


「こんにちは!」


 みんなでハリーさんにご挨拶だ。


「こんにちは。ああ、今日は商業ギルドに登録に来られたんですね?」


「私も見学にいってもいいですか?」と父さまに尋ねている。

 ここまで来たので、醤油と味噌とお酢を買い込む。おにぎりも全種類買ってみた。

 連れ立って商業ギルドに向かう。

 ハリーさんが窓口の人と話して、部屋に案内された。

 連絡が行ったようで、ホリーさんがすぐに来てくれた。ホリーさんて商団の人なのに、普段商業ギルドにいるのかな? 商業ギルドと繋がりが深いのはわかるけれど不思議。


 まず調理器具の査定からだ。登録したいと思っても、全てができるわけではないらしい。誰かが買いたいと思うようなものだと認められる必要があるんだって。その査定者はホリーさんの他に商業ギルドの方がふたり。キビキビした動作の父さまより上ぐらいの人と、真っ白の髭を蓄えたいかつい顔のおじいさんだ。職員のパラクさんと、おじいさんはビターさんだと挨拶をしてくれた。

 鍛冶屋のジンベエさんは、テーブルの上に包丁、泡立て器、鉄板、フライ返し、パウンドケーキの型を並べていった。ホリーさんがまな板になる板と芋を袋から出した。パラクさんが包丁を持つ。ピドリナが持ち方を指南し、芋を両断した。ボウルに卵を割って泡立て器で泡立てる。次々と見ていき、全て、いや、ついでにボウルも加えられ、サクサクとことは進んだ。調理器具を登録できた。


 商品登録とは製作者が商業ギルドを通して登録した製作方法を売ることだ。〝方法〟は売っているけれど、製作者・考え、作った者だという権利は売らずに守られる。それが商業ギルドに加盟している強みである。

 登録商品は誰でも買うことができる。製法を知り、自分だけで使うか、それを売り物にするかで金額は違ってくる。

 誰かが製作方法を買うとわたしたちと共同開発者であるジンベエさんに7:3の割合で入ってくる。ジンベエさんは最初は自分では絶対に思いつかないから共同開発ではないって言われたんだけど、あの時わたしたちは何をどうやったら〝物〟を作れるのかさえわからなかったし、できなかった。中途半端な伝え方でカバーしてくれたジンベエさんの勘と腕に感謝している。なかなか首を縦に振らなかったがやっと共同開発者になってくれた。登録商品が売れればその1割がロイヤリティーとなる。

 こういうのっていろんな穴を潜り抜けて悪いことできるんじゃないかってわたしは思ってしまったが、誓約書の魔法のようなもので取り締まられるようだ。魔法って何でもアリで凄い。


 調理器具の登録は無事済んだ。ジンベエさんは、イダボアでお世話になった工房に今日は泊まっていくということだったので、そこで別れた。



 次は料理の登録だ。

 唐揚げもどき、ハンバーグ、パウンドケーキだ。

 試食用に持ってきたのを食べてもらう。……無言だ。

 わたしとピドリナは顔を見合わせる。ダメなのかな?


「いかがです?」


 ホリーさんが尋ねた。

 パラクさんとビターさんは顔を合わせる。


「食堂を開くつもりは?」


 ビターさんがピドリナに尋ねる。


「ありません」


「本当に? もし、ピドリナがお店をやってみたいなら」


 ピドリナがわたしの頬に手を置く。


「私はこれからもお嬢さまのそばで、お食事を作りたいですわ」


 そう笑った。


「そうですか、では〝レシピ登録〟でよろしいんですな?」


「はい」


 こちらもどれも通った。こちらも共同開発だ。ピドリナも頑として譲らず、わたしが7割となった。調理法云々より、そもそものアイデアが凄いのだと。いやー、全部記憶からのものでわたしが考えたんじゃないんだけどね。でも、この恩恵わたしの人生にしっかり役立てさせてもらうよ!

 それにしても、調理器具のようなものはまだしも、レシピなんてそこに少し違う要素を加えて違うものって言われたらどうするんだろう? ちょっと変えて登録したレシピと違うって言い切られることもあるんじゃないかと思うんだけど……。商売するには絶対にギルドのお世話になるからか、そういったズルは発生しないものらしい。というか今までそんなことは起きてないそうだ。それに、少し付け加えるぐらいでは〝違うレシピ〟にはならないらしい。




 パラクさんとビターさんが出ていって、ハリーさんが外でもふさまと一緒にいてくれた兄さまたちともふさまを呼びに行った。

 もふさまはなぜか兄さまの首に襟巻きのように巻きついて、部屋に入ってきた。


「もふさま、どうしたの?」


 兄さまが苦笑い。


「小さな子が撫でたがってね。自分から私の首におさまってきたんだよ」


『こうするとあまり目立たないようだ』


 いや、真っ白のその毛皮は尋常じゃなく美しくて目立っているけれど。

 ホリーさんがさっきより少しくだけた話し方になる。

 ホリーさんはまず何かの魔具を発動させる。


「盗聴避けです」


 とにっこりと笑う。さすが、いいとこの商会だ。徹底している。

 ホリーさんはスタイリッシュな瓶をだした。


「これは?」


「リンスにこの瓶はいかがでしょう?」


 うわー、リンス用の瓶をわざわざ作ってくれたのか。

 父さまが確かめるようにわたしを見た。


「とてもいいと思います」


「それで、どれくらい作るのは可能ですか?」


 わたしは蜂の巣が手に入ったので、心配してた材料は定期的に手に入ることになったと伝えた。そして〝ビンネ〟がある程度必要なことを。

 リンスの概算、これは家でやってきた。わたしだけの計算だと危ういので兄さまたちに確かめてもらいながらやった。


 1樽にブンブブンの巣8分の1、お酢ビンネが7リットル、匂いづけするならハーブ液を入れ、そこに魔法の水を9分目まで注ぐ。1樽で70リットルのリンスができる計算だ。ちなみにこれで材料費はお酢だけなので、7リットルで700ギルだ。

 1つの巣で8樽できる、お酢が56リットルあれば。そして560リットルのリンスができる計算だ。

 市場への初リンスでは巣を3個までと思っていたので、その3倍(24樽お酢が168リットルあれば)リンスは1680リットルできる。

 何mlで売るかで個数は変わってくる。


 ホリーさんはビンネは問題なく手に入るといい、その分わたしに原価で卸すと言ってくれた。

 ホリーさんは紙に計算式を書きつけて、ひと瓶300mlで売りましょうと言った。

 瓶とお酢のひと樽についての数式を書いて、1樽から1866個のリンスができるけれど念のため1800個のリンスができるとした。そして1つを800ギルで売るのはどうかと言われた。

 そこらへんは父さまに任せた。ひとつ300ml、800ギルで売ることが決まった。内訳は3:7だ。いいの、ホリーさん? 瓶だって商会が作ってくれているし、わたしたちが行けない町で売り出してくれるのに……。それにリンスはランパッド商会のものと矢面に立ってくれる。商業ギルドを通すだけで後はすべてのことを自分たちでやるとなると、商業ギルドにみかじめ料なるものを支払い、それ以外はすべて懐に入る訳だが。わたしたちは商売のことは何も知らないし、最初は表に出るつもりは全くなかったからまる任せする予定だった。今ロサとの取引で領地の水準を底上げする必要があるし、テイクアウトの時短店ならやりたいと思っているから、表にも立つことにはなったが。いろいろ面倒見てもらっているのに、その相談料と言うか教えてもらっている代金が3割って割りに合わない。ウチにありがたすぎる! 


 そう言ってはみたが、これからもいろいろ売り出して欲しいのでとすこぶる笑顔だ。それに、町ではわたしたちが作ったものを売っていいという。ひと瓶800ギルという価格は下げないで欲しいとのことだったけれど、瓶はウチらが用意して、そしてそれが300mlではなくてもいいとのことだ。ホリーさん、太っ腹!


 まず、ひと樽分売ってみようということになった。多分、すぐに残りの2樽を追加してもらうことになるだろうとホリーさんは言った。瓶ができたら届けるというので、よければ今樽があるけれどと言えば、目が点になる。入っているハーブはアラ兄の好きなスッキリ爽やかな香りのものだ。ホリーさんは樽を受け取ってくれた。

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