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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
4章 飛べない翼
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第157話 家出少年③伝達魔法



「タラッカ家のご子息のようだ。心配されているだろうから、連絡だけはしておこう」


 そう言って、親指と人差し指を軽く擦り合わせる。

 するとドアは閉まっているのに、小鳥が飛んできて、侯爵さまの肩に止まった。


「伝達魔法を見るのは初めてかな? 目がこぼれ落ちそうだ」


 クスクス笑われた。

 侯爵さまが小鳥に何かを話しかける。そして最後に口笛を吹くと、小鳥は飛び立った。


「さて、これで連絡はよし」


「何だい、レディ?」


「……とてもきれいな魔法です」


「おお、そうかい? ありがとう。少し練習すれば使えるようになるよ」


「リディアは魔力が多くないから無理かもしれないけれど、いつか魔具を買おうな」


 父さまに頭を撫でられる。魔力15ではできないことのようだ。がっかりするフリをする。


「リディア嬢は魔力が少ないのか?」


 侯爵ご子息にわたしは頷く。


「こんなに澄んだオーラなのに、もったいないな」


「オーラ?」


「息子は不思議な形で魔力が見えるんだ」


 へーそういう能力もありなんだ、と驚いた。


「お送りしましょう」


 父さまがそう言うと、タラッカご子息はプイと顔を背ける。


「結構です。今日はここに泊まる」


「……保護者のいない未成年を泊まらせるわけにはいきません」


 悲壮な顔で父さまを見上げる。


「俺はまだみつけていない。だから帰ることはできないんです」


 ドアが開いて、2人の男性が入ってくる。


「賑わってるな。女将、ふたり泊まれるかい?」


「ええと」


 カトレアのお母さんが、困ったように父さまを見上げた。

 父さまは頷く。


「ここでは宿の邪魔になるので、場所を移しましょう。アルノルト、リディアを連れて先に家に帰ってくれ」


「かしこまりました」


 え?


「リディア、また遊びに来て」


 わたしが顔をしかめたからか、カトレアが先回りして言う。


「うん、リディア、またね」


 ミニーにも言われてしまった。

 そんなわたしたちを、ふたりの坊ちゃんは不思議そうに見ている。


「さ、お嬢さま」


 アルノルトさんがわたしともふさまを問答無用に抱きあげる。





 外に出てからアルノルトさんに尋ねる。


「ケインで帰るの? 父さまたちは馬車、どうするの?」


「アンダーさんのところで馬を借りて、私たちは先に帰りましょう」


 馬を借りて?


「恐らく、タラッカさまと従者、それから侯爵さまとご子息さまを家に泊めることになるでしょう。その支度をするよう、私たちを先に帰されたのです」


 そういうことか。


「でも、何でわたしまで?」


「侯爵さまは現在魔法士の最高峰。魔力も一番あります。そんな方とお嬢さまが近くにいるのは、なるべく避けるべきだと思われたのでしょう」


 そっか。それなら仕方ない。

 アンダーさんのところで黒いお馬さんを借りて、家に帰った。




 帰るとアオが出迎えてくれた。ご苦労さまとお馬さんにマルサトウをあげ、ブラッシングをして、後でケインも帰ってくるからねと厩舎に入ってもらう。

 家の中に入れば、暖炉の前の籠の中で、アリとクイ、シロにミルにチョコにワラとシッポがぎゅうぎゅうに詰まって微睡んでいた。チャボがいないと騒ぐと、ピドリナさんがこっちにいますよと教えてくれた。

 ああ、またキッチンか。入っちゃダメと言っても、すぐに入っちゃうんだよね。キッチンに入ると、チャボがピドリナさんの後をついて回っている。


「チャボ、邪魔しちゃダメだよ。これからお客さんが来るんだから」


 言ってて思い出す。アオやアリやクイは避難させないと!

 伝えればとても淋しそうな顔をするので、みんなが来たらハウスさんに回収してもらうことにした。そして夜はわたしの部屋に来るように言った。ご飯も持って行くからねと言えば、仕方ないと言いたげにきゅーんと鳴いた。


 食事の用意を手伝っていると、外が騒がしくなる。アルノルトさんがお出迎えしているようだ。


「お嬢さま、助かりました。こちらは大丈夫ですから、奥さまとご挨拶に」


 もふさまと母さまと一緒に居間でお出迎えをする。

 やっぱり、侯爵さまとご子息さま、そしてタラッカのご子息さまと従者の子だ。

 侯爵さまたちは従者などはいなくて、身軽にふたりで来たようだ。


「すみません、宿屋がいっぱいで、ご主人のお言葉に甘えて泊めていただくことになりました」


「魔法士長さまにお会いできて光栄ですわ。行き届かないと思いますが、ごゆるりとなさってください」


「イザーク・モットレイです。お世話になります」


「オメロ・タラッカです。お世話になります」


 従者くんは頭を下げっぱなしだ。

 アルノルトさんがそれぞれを部屋に案内した。




 ケインの世話が終わったのだろう、兄さまたちが家に入ってくる。寒いと暖炉に手をかざす。

 アリとクイがいなくなった籠の中でシロたちが毛布にくるまっている。今度はちゃんとチャボもいるね。兄さまがケインが帰ってきたよと言えば、一列になりシロを先頭に馬小屋へと帰っていく。



 侯爵さまたちにお風呂に入ってもらい、その後タラッカ坊ちゃんと兄さまたち。と順番に入っていって、食事の時間になった。

 庭に小屋を作り、臨時の食堂とする。父さまと双子の共同作業だ。

 そこにピドリナさんがお料理を運んでくれた。


 今日は熱々グラタンだ! 野菜のトマト煮には大きな塊肉が見えている。それにフォカッチャもどきだ。ふわふわパンは出せないので、パンは元のレシピだ。

 よほどおいしかったのか、子供たちがガツガツと食べてくれて気持ちよかった。従者の子も同じ食卓なんてとためらっていたが、ちゃんと食べてくれているので安心する。

 ホワイトソースって罪だよな。バターと小麦粉とミルクだけで、どうしてこんなにまとめ上手なのかしら。野菜やお肉からでた旨味をぜーんぶ吸い込んでおいしいソースになる。マカロニ大好き。

 トマト煮、正しくはトマトン煮、大きなお肉がホロホロになるまで煮込まれている。柔らかく煮崩れた野菜たちもおいしい。フォカッチャでお皿をきれいにして残さずいただく。


「いやー、どれもおいしかった」


 侯爵さまが満足げに言った。それからお風呂も評価が高い。偉い人や凄い人も気持ちいいことは気持ちいいよね。うん、それは身分なく一緒で。生活の基本だよ。1日の疲れを流すの大事。ためずにいれば明日も頑張れる。やっぱり各村や町にお風呂は必要だ!


「では、お茶にしますか」


 と居間に戻る。




 片付けやらを手伝ってから、アオとアリとクイをわたしの部屋に呼んでご飯にした。遅くなってごめんねというと、ご飯があったかいから問題ないと言ってくれた。熱々のグラタンはおいしいよね。


「もう眠るでちか?」


「うーうん、みんな居間で話してるみたい」


 後で顔を出すつもりだというと、アオは頷きながら大きい肉の塊を頬張った。アリとクイはミルクでお腹がいっぱいになったようだ。なまじっかひよこちゃんたちの成長が早いので、アリとクイがいつまでもミルクしか飲まなくて平気なのかと思ってしまう。食べ終わるとアオたちは部屋で先に眠っているというので、上掛けをかけて、部屋から出た。

 居間に行くとピドリナさんがお茶とお菓子を運んできてくれた。

 兄さまたちは侯爵家のご子息やタラッカ坊ちゃんとも打ち解けたみたいで、早速ゲームを教えたのか、盛り上がっている。それをもふさまが覗き込んでいた。

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