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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
4章 飛べない翼
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第149話 砦⑨空っぽダンジョン

 ダンジョンの門番さんが、おじいさまの馬の手綱をひいた。


「ご苦労」


 おじいさまがダンジョンの門番に声をかける。


「変わったことはないか?」


「はい。溢れる前と同じように静かです。うんともすんとも言いません」


 このダンジョンから魔物が溢れ出る時は、中からゴーっという音がして、外から見ていてダンジョンが縦揺れするように見えるそうだ。だから隠れて見守り、魔物が出ていったところで狼煙をあげるという。もっと早くにわかれば人数を揃えてここで迎え撃つのにと悔しそうにしている。そんな強くないといってもあの大きさだし、そうだよね、辺境の兵士にしたら〝そこまで強くない魔物〟であって、一般的には強いんだと思う。


「中に入られるんですか?」


「ああ、馬を頼む」


 ケインの首とお腹をさすって、マルサトウを少しあげる。運んでくれたお馬さんたちにもお礼にあげて、水と餌を用意しておく。あとのことは門番さんに頼んでダンジョンへと入った。


「もう、これ決まりでしょ」


 ロビ兄が言った。


 マルサトウは揺れていないが、広さとか、突き当たりの感じとかまんまだもんね。


「何が決まりなんだ?」


 おじいさまがロビ兄に尋ねる。


「おれたち、おれたちだけのダンジョンをみつけたんだ」


「ダンジョンを? ……話があると言っていたのはそのことか?」


 父さまはおじいさまに頷いた。


「ここが本当に〝そう〟なのか確かめに、地下一階に行こう」


 父さまが促して歩きながら父さまとシヴァに説明し始めた。

 そうか、おじいさまたちはハウスさんのことも知らなかったっけ。

 話しながらケルト鉱石の取れるところを剣でつついてみたが、他の壁と変わりないように見えた。

 地下1階もがらんどうだ。斜めにつっきり、湧き水のあたりに到達する。水はなかったが少し窪地になっていた。その右側にあるはずの石もなかった。


「ちぇ、石がない」


 ロビ兄が窪地を蹴った。するとギギギーと音がして壁がスライドした。下へと続く階段がある。


「やっぱり」


「ここだ」


「まだ下があったのか!」


 間違いない。ここはアオが住んでいた、元のダンジョンだ。


「地下28階からの攻略もできる!」


 気が早くロビ兄が吠える。


「まさか、辺境でみつかるとは」


 父さまが顎を触っている。


「アオはサブハウスの管理人だから、元のダンジョンへの行き来はできないよね」


「そうだね。元のダンジョンの場所も覚えてないみたいだったしね」


 アラ兄と兄さまが頷きあう。


「でもさ、魔使いさんがミラーってスキル持ってたんだよね? 魔力をアオに移しても、スキルは移せなかったのかな?」


 ロビ兄の疑問にみんな考え込む。


「スキルはその人にだけ贈られるものだからな」


 父さまが答える。


『試しにアオを呼んでみてはどうだ?』


「え?」


『魔力でリディアとアオは繋がりがある。アオはサブハウスと繋がっている。サブハウスの先にはダンジョンがあり、ダンジョンまでもハウスの声は届いていた。ここはダンジョンの元だ、何か繋がりがあるかもしれないぞ』


 なんとなく、そうかもしれないと思う。

 ま、呼んでみるだけだもん、損するわけではないし。

 わたしは頷いて、息を吸い込む。

 そのままの声が届くわけではないと思いながらも、なるべく大きな声で呼んだ。


「アオ!」


 目の前に真っ青なペンギンが現れた。手にはフライドポテトもどきを持っている。


「え? リディア? 兄さま? え、ここどこでち? なんで? え?」


 忙しく周りとわたしたちを見比べて、アオの大パニックだ。


「すげー、アオだ!」


「アオが来た!」


 双子たちは大喜び。

 ガガ、ガガ、ガガガ、プリンターが紙を巻き込んだような嫌な音がした。


「メインさま」


 メインさま?


『マスター、ハウスの魔力が足りないようです。付与の許可を』


「許可します」


 タボさんに答えれば、スッと何かが出ていって、ガクンとなる。兄さまに手をつかまれて、下からはもふさまが支えてくれた。


「どうしたの?」


「ハウスさんに魔力付与した」


 ガガガ、ガガガ。


『マスター、失礼いたします。アオの気配が消えたので追いかけました。申し訳ありません』


「あ、わたしが呼んだから? ごめん。元のダンジョンみつけて、アオと繋がれたらいいと思って呼んでみた。そしたら、アオ来てくれた」


「へ、元のダンジョン?」


 アオが振り仰ぐ。そしてゆっくりと見回した。ぴょんと飛び跳ねる。


「本当でち。ここ、おいらがいたダンジョンでち!」


『なるほど、元のダンジョンでしたか。この空間にアオはいたことがあるから呼び寄せられたのですね』


「ハウスさん、もしかして、このダンジョンから、いつものダンジョンに移動は可能?」


 兄さまが尋ねた。


『……私の管轄ではありませんので私にはできかねますが、アオなら繋げられるかもしれません』


 みんなの視線が集まる。


「え? 元といつものダンジョン繋げるでちか? 知らないし、できないでちよ」


「アオ、大丈夫。みんな初めてのことは知らないものだ」


 兄さまが笑顔で言った。


「どうやったら……」


『アオ、そちらはアオの管轄です。そして種族の能力もある。サブハウスとサブルームの行き来、あれと同じように思ってみては?』


「サブハウスとサブルームの行き来……」


「アオ、ここにいるみんなをいつものダンジョンに連れてって」


「やってみるでち」


 アオがギュッと目を瞑った。景色が揺れたような気がして、次の瞬間湧き水がコンコンと湧き出ているいつものダンジョンの地下1階だった。


「こ、これは」


 そう呟いたおじいさまにアオが言った。


「誰でち?」


 わたしはおじいさまとシヴァをアオに、アオをふたりに紹介した。


 ここまできたのだから、家に帰ってみようということになり、わたしはシヴァに抱きかかえられた。少し大きくなったもふさまにアオが乗る。父さまが本気で急いでサブハウスまで帰ってみようと言って、みんなは頷いた。

 いや、まじで早かった。みんなずっと走っての移動だ。もちろん地下1階の魔物なんて瞬殺だ。あっという間に1階に出て、マルサトウとケルト鉱石を説明して、さらに走り続ける。


 サブハウスを見たときに、おじいさまたちは驚いた。

 サブハウスから、サブルームにいき、サブルームからメインルームに移動。

 ハウスさんに改めておじいさまとシヴァを紹介。ふたりの仮想補佐ともすでに繋がったようだ。

 そしてメインハウスに移動した。


 母さまもピドリナさんも驚いたが、アルノルトさんは平然として見えた。

 おやつを食べているところに急にアオが消えて心配したようだが、ハウスさんから無事とは連絡が入ったみたいだ。

 アリとクイ、ひよこ……小さな成鳥ちゃんたちに大歓迎を受ける。

 戻らなくてはいけないが、とりあえず1杯だけみんなでお茶にした。

 門番がいるから自由に行き来はできないが、5日かかる行程を3時間ほどで行けることになったら、それすごいことじゃない?

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