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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
1章 ここがわたしの生きる場所
14/1124

第14話 獲れる日、獲れない日

本日投稿する2/3話目です。

 カールにもう一度罠のことを聞いて、用意するものなどの話し合いが始まった。

 途中までは聞いていたが退屈になってしまった。わたしはもふさまと川に足をつける。


『止めなくてよいのか?』


「ヒートアップしちゃってるから、今、無理」


『ヒートアップとはなんだ?』


「んー、気持ちが熱くなる、燃え盛っている?」


 もふさまに小さい声で答える。

 ビリーに見られている気がする。

 オレたちの川だとは言われなかったもんね。


 今日はシャケが流れてこない。あ、魔力が通ったら、わたしも魚獲れるようになるね。やったー! 貧乏でもなんとか食べていけるんじゃないかな!


 それにしても、全属性とは大盤振る舞いだ。みんな2つか父さまで3つ。全属性って変わっているんじゃないかな。魔力量も多いって大丈夫かな。どっかに目をつけられるとか厄介でしかないんだけど。そういうの隠す方法ってあるのかな。相談したいけど、今母さまのことでいっぱいいっぱいだしなー。


『リディア、真ん中はやめておけ、流れが早いぞ』


 考えているうちに知らずに中央へと行っていたらしい。

 もともとわたしのふくらはぎまでない水量の川だ。流れが両側より強いが、そこまでとは思えない。でもわたしは行く気はなかったし、もちろん頷いた。

 行く気はなかったんだけど、方向転換をしようと思って足を置き、つるっと滑った。

 裸足だったけど、苔がついた石の上にのぼってしまったからだろう、漫画みたいにつるっと勢いよく。


『リディア!』


 転ぶ!


「リディー!」


 そう思ったとき、抱きあげられた。

 助かった!

 わたしの脇を持ってぶらーんと抱きあげてくれたのはビリーだった。


「おい、川では絶対、チビから目を離すな!」


 低い声で兄さまたちに注意する。

 あ。

 兄さまたちの顔が真っ青だ。


「ごめんなさい。ビリー、ありがと」


 兄さまがビリーからわたしを受け取り、川岸に戻る。

 兄さまもビリーも靴のまま川に入ったから足がびっしょりだ。兄さまはわたしを立たせて、ギュッと抱きしめる。

 それからビリーに向き合って、頭を下げた。


「妹を助けてくれて、ありがとう。感謝する!」


 双子もビリーに頭を下げた。


「な、別に礼なんかいらねーよ。ただ、特に水まわりではチビから目を離すな。何が起こるか分かんねーから」


 ビリーがボス猿な理由がわかった気がした。しっかりといつも周りに目を配っていて、対処もできる。それがたとえ気に食わない輩であっても。だから、みんな信頼して慕っているんだね。


「うん、気をつける」


 兄さまが爽やかに笑ったから、女の子たちが顔を赤くしている。


「兄さま、風で、靴乾かす」


「え? 風で?」


 少し考えてから、ビリーに近づいて、ビリーの足元に片手を向ける。ゴーっと強い風が起こったと思うと、ビリーの靴が乾いていた。


「お、すげー、乾いた。風魔法か? お前、魔力もたけーんだな。ありがとな」


 ビリーがにかっと笑った。なんか見たこちらが嬉しくなる笑い方だ。

 兄さまは自分の足元も乾かした。


 アラ兄がわたしがもう川に入っていかないように、スカートを下ろして、足を拭いて靴下を履かせ、靴も履かせる。

 もふさまが川から出てきて、ブルブルっと身震いすると水滴がはじけて、一瞬で水分がとんだ。それ、いいなぁ。


「兄さま、ベアシャケ、こない」


 そう告げると、兄さまは首を傾げた。


「そういえば、今日は見ないね」


「なんだ、チビはベアシャケが欲しかったのか」


 ビリーに尋ねられてわたしは頷いた。


「うん、栄養いっぱい、母さま食べさす」


「なんだよ、母ちゃんがどうかしたのか?」


「母さま、寝てる。いっぱい食べて元気する」


 わたしの言葉にみんな兄さまを見る。それを受けて兄さまは微妙な表情になった。


「具合が悪くてね。だから元気になるものを食べてもらいたいんだ」


 少女たちの心のキュンとした音が聞こえた気がした。

 やるね、兄さま! 親指を突き出したいぐらいだ。


「じゃあ、獣を獲りたいってのも?」


 兄さまたちは頷いた。


 明日の勝負の取り決めをもう一度ちゃんとして、みんなと別れた。森に入る。もふさまが食べられるものを教えてくれたので、それをとりながら帰った。

 そうか、いつも魚が獲れるか、わからないものね。いるときにたくさんとって、干物にしたりしないとだ。保存食……か。実りの秋が終われば、収穫物のない冬が来る。冬の分の蓄えもいるね。あ、わたしの思う四季と同じなのか確かめないと。


 前を歩くアラ兄の服を引っ張る。


「なあに?」


「季節、今、何?」


「今の季節? 秋だよ」


「秋はどんなの?」


「ん? えーと。季節は春、夏、秋、冬ってめぐる。春に木々や草花が芽吹いて、暑い夏を迎え、実りの秋があって、寒くて閉ざされる冬となる。ほら、リーが雪を食べてお腹を壊しただろ、あれが冬だよ」


 もふさまに笑われた。

 そういえば、冷たいのが不思議で積もったところに顔を埋めて食べたら、その後お腹を壊して2日寝込んだっけ。それから寒い日は腹巻をするよう義務付けられた。

 わたしの記憶にある四季と同じ感じだ。それなら秋の今のうちに保存食を作っておかなくては! ということは瓶がいっぱいいるし、それを貯蔵できる場所もいる。4日後には魔力が通るはずだから、そこから全開でやらないとだ。



 朝だ! 勝負の日だ! と目を擦ったが、ベッドにはもう誰もいない。


「お姫様、起きたか。さ、着替えるのを手伝うぞ」


「母さまは?」


「ん? なるべく休んでもらうようにしているんだ」


 わたしの不安を見透かしたように、父さまがぎゅーっとわたしを抱きしめる。


「主人さまが、頻繁に母さまの様子を見てくださっている。リディーに何も言わないだろ? だから悪くはなっていない」


 そうか、もふさまは母さまを定期的に見てくれていたんだ。


「大丈夫だぞ。母さまは大丈夫だ」


 そう繰り返す。わたしにももちろんだけど、自分に言い聞かせているように感じる。

 そうだよね、父さまだって不安だよね。

 わたしも父さまをぎゅーっと抱きしめた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「裸足だし、苔がついた石の上にのぼってしまったんだろう、漫画みたいにつるっと勢いよく」 裸足だったら、苔の付いた石だと直ぐわかるよ。苔の付いて石だと分かって上っていると言うことは、苔が付い…
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