第13話 傷跡
本日投稿する1/3話目です。
「父さまは悪いことはしない!」
ロビ兄がボス猿につかみかかる。
アラ兄がその間に入ろうとする。
それをやめさせようとディンクがアラ兄の服を引っ張り、そのディンクを女の子が止めようとして、子供たちが団子状態になった。
兄さまは額を押さえてから、ロビ兄を引っ張りあげようとしている。
『どうするのだ?』
もふさまが呆れている。
わたしもいい考えがあるわけではないのだと、もふさまにジト目を送る。
仕方ない。息を吐いて、大きく吸い込む。できる限りの大声で!
「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
みんな驚いて動くのをやめて、わたしに注目した。
「リディーどうした? ごめん怖かった?」
兄さまが一番に駆けつけて、かがみ込みわたしの頬を両手で包み込む。
「リー、どうしたの?」
「リー大丈夫?」
ロビ兄も、アラ兄もすぐに来てくれた。
「ケンカ、だめ」
兄さまたちはうなだれたが、ボス猿は勢いづいた。
「なんだ、そんな小ちゃいのに頭が上がらないのかよ、弱っちぃなー」
カチンときた。
「本当に弱い、は、自分より弱い者、攻撃すること」
思い当たるのだろう顔を赤くする。
「町行ったとき、みんな怒ってた。前領主、何した?」
「なんだよ、前領主のしたことだから、関係ないっていうつもりか?」
「父さま、先代がここ貧乏にした言った。だから父さまが領地立て直すって」
「口だけならなんとでも言えるよな」
「ひねくれてる」
といえば、女の子が笑い出した。
濃い茶色の髪をひとつに三つ編みをしている。
兄さまと同じぐらいの背丈だ。
「マール、何笑ってんだよ!」
女の子はマールというみたいだ。
「ごめん、ビリー。でも9歳のあんたより、そのちっちゃい子の方がよっぽど大人なんだもん」
ボス猿はビリーというみたいだ。
「あたしはマール、8歳。こっちはビリー」
「フランツ、7歳だ」
「ロビン、6歳」
「アラン。ロビンと双子だ。妹はリディア、もうすぐ5歳だ」
アラ兄がわたしの頭を撫でた。
「リディーが言うように、何があったのか聞かせてくれないかな。来たばっかりで本当に何も知らないんだ」
みんな顔を見合わせて、ボスのビリーがなんと言うかを窺っている。
「税をあげるだけあげて、払えなくて立ち退かされたのが何軒もある。そこを変なのに売って、奴らは土壌をよくするとかいって変な薬撒いて土地をだめにした。隣の隣の家まで作物が育たなくなったんだ」
そりゃひどいな。怒りが爆発するのももっともだ。
「すぐ行くべきだけど、いろいろあって、父さま、まだ話しに行けてない。行ったら、ちゃんと話す。父さま考える」
「あんなー、土地ってのはだめになったら二度と戻らないんだよ」
「あきらめる、だめ。あきらめたら、そこで終わる」
「領主だからって土を生き返らせることができるわけじゃないだろ。できないこと言うな! 希望を持たせてどん底に落とす気かよ?」
強く言われて、気持ち的には怖くもないのに、目頭が熱くなる。
ビリーの頭をマールが勢いよく叩いた。
「あんた、4歳の子に八つ当たりするんじゃないわよ」
ハッとしたようにわたしを見た。
「口が達者だからついムキになっちまった。おい、悪かったな!」
……悪い子じゃないね。
嬉しくなって、わたしは笑った。ビリーの顔がさっきより赤くなる。
兄さまに抱え込まれ、そしてビリーを睨みつけている。
「君たちが私たちを嫌う理由はわかった。で、ここは君たちが魚をとる場所で、森で獣をとろうとすれば森も君たちのものだと言うの?」
「あたしたちも悪かったけど、あんたもそんなにとんがらないでよ。おチビちゃんが怖がるよ」
ね、というようにマールはわたしを見たが、わたしは首を横に振った。
「怖くない、だいじょぶ」
「ふん、新参者が獣を獲るのは無理だ。しょうがねーから、ここを……」
「カール、罠のこと、もう一回教えてくれる?」
「……うん、いいよ」
カールが控えめに返事する。
「あんたも意地張らないで」
「ビリーが獲ったことのある獣って何?」
「でっかいノシシ」
ビリーが両手をいっぱいに広げた。その背中をマールが思い切り叩く。
「嘘言わない。これくらいよ」
マールが広げた手は50センチはあるだろう。けっこう大きいね。
「新参者だけど、それより大きなの獲ってくるよ」
兄さま、どうした!? 言ったのがロビ兄ならいざ知らず、兄さまがそんな好戦的になるなんて!
「うん、おれたち、初めてだけど!」
「絶対、大きいの獲る!」
双子までどうした!?
「そこまで言うなら勝負してやろうじゃないか。明日、オレとお前たちどっちが大きいのを獲れるか勝負しよう」
「ちょっと、あんた、初めての子と」
勝負を持ちかけてきたビリーにマールが注意する。
「だから、オレはひとり。お前たちはチームになっていい。カールたちも手を貸したいやつは手を貸してやれ」
「……大きさの判定?」
「数でも大きさでもいいけど、全部の総合でにするか」
「勝負なら……」
兄さまが言いかけるとビリーがかぶせていってくる。
「お前たちが勝ったら、オレはお前たちのいうことをきく」
「君が勝ったら?」
「オレの言うことをきけ」
「ひとつだけにしよう。負けた方が勝った方の言うことをひとつきく。私、フランツとビリーの勝負だ。それでいいか?」
「いいぞ」
なんかどんどん決まっていってるけど……。
「兄さま」
服を引っ張る。
「どうした、リディー?」
そんな勝負事しちゃっていいの?と聞こうとしたが、今まで見てきた中で一番決意を込めた目で、盛り上がっている。なんかスイッチが入っちゃったみたいだ。だめだ、こりゃ。わたしはこっそりため息をついた。




