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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
1章 ここがわたしの生きる場所
12/1114

第12話 ボス猿

本日投稿する3/3話目です。

「リーも、もふさまもどうしたの?」


 戻ってこないからだろう、双子が呼びにきた。


「話、してた」


 ふうんと双子は頷く。


「あれ? お水飲みにきたんじゃないの?」


 お皿が汚れていないからだろう。


「もふさま、お水飲む?」


『もらおうか』


 わたしはお皿をもふさまの座る椅子に置き、テーブルの上にある瓶をそーっと倒さないようにとって、浅いお皿にお水を入れた。瓶が重たくて注ぐときに盛大に瓶を揺らしたが、広いお皿だったのでこぼさずにすんだ。

 もふさまはぺちゃぺちゃと音をたて、上手にお水を飲んでいる。


『これは波動の上がった水だな。聖域から持ってきたのか?』


「違うよ。井戸の水をちゃふつしたの」


『ちゃふつ?』


「しゃ、ふ、ちゅ」


 なんて言いにくい言葉なんだ!


『くっ、煮沸と言ったのか。ほう、煮沸すると波動が上がるのだな面白い』


 波動はわからないけれど、10分沸かし続けたお湯を飲むといいと聞いたことがある。わたしは沸騰してからゆっくり30を数えてから火を消すことにしていた。なんとなくそのタイミングがおいしいというか、体に馴染む気がしたからだ。



 もふさまを抱っこして居間に戻る。椅子によじ登って気になっていたことを聞いた。


「わたし、いつ5歳?」


 父さまと母さまが顔を合わせた。


「誕生日が知りたいのかい?」


「それもだけど、いつ、魔力通す、する?」


「ああ、魔法が楽しみなんだね? リディーは10月17日・光曜日の生まれだから、10月に入ったら光の曜日に祝福をしてもらえるよ」


 祝福という名の魔を通してもらう儀式は誕生日月に入って、同じ曜日にやるものなのか。


「あとどれくらい?」


 みんなクスクス笑っている。


「明日から10月だから、5日後。その日に教会に行こうか」


 わたしは頷いた。それまでに子供たちに探ってもらう算段を立てなきゃね。


「母さま、寝て。父さま、看病。兄さまたち、ご飯とりに行こう」


 願わくば、子供たちと会えるといいんだけど。


「もふさま、どうする?」


『どうするとは?』


「お家帰っちゃう?」


『お前が光魔法を使い媒体を破壊するまで、ここにいないとだろう?』


 もふさまを抱きしめる。


「ありがとう!」


『友達、だからな』


 わたしは大きく頷いた。


 川に行ったり、森に行って、ご飯の材料をとりに行くつもりだというと一緒に行くという。



 歩いていると、兄さまがもふさまに尋ねる。


「もふさまはリディーだけでなく、私たちが何を言っているかわかるんですよね?」


『わかるぞ』


「わかるって」


「なぜ、リディーはもふさまの言っていることがわかるのか、わかりますか?」


 ああ、それはわたしも不思議に思ってたんだ。


『ふむ。おそらくリディアのギフトに関係するのではないかと思う』


「わたしのギフト、関係しているかもって」


 なるほど、と兄さまたちと頷き合う。

 兄さまはわたしたちに約束するように言った。


「リディーともふさまが話せるのは内緒にしよう」


「内緒に?」


「なんで?」


「父さまも言っていただろ、変わったことができると、評判になるかもしれないって」


「「あ」」


 双子が声を揃えた。


「もふさま、今は森の主人さまというのを隠していてもいいですか?」


『我も煩わしいのは好きじゃない。それでいいぞ』


 兄さまたちに伝える。


「リディーが一番気をつけないとだめだよ。約束できる?」


 わたしは頷いた。



 それにしても目の前を歩いていくもふさまの尻尾が可愛すぎる。小さくてもふっとい、もふもふなのだ! ふさふさで頬擦りしたくなる。

 外を歩くときは兄さまと手を繋ぐ。ひとり逸れてしまったから、今日はきつく握られている。

 もふさまは双子の後をとっととついていっている。

 あの背中にリュックがあったら可愛いかも。羽とかつけちゃう?


「リディー、街で私たちを探る人を突き止めるのに、私たちは母さまの子供ってわかってしまうよね?」


「うん、だから、カールたちにお願いしたい」


「カールたちに?」


 双子が振り返る。


「会ったばかりだよ」


「兄さま、出番」


「どういうこと?」


「兄さま、カリスマ発揮。みんな子分になる。子分、親分の言うこときく」


「かりすまって何?」


 アラ兄に尋ねられる。


「うんとかっこいい、意味」


 ちょっと違うけど、面倒だからいいや。


「リディー?」


 兄さまが足を止めた。


「ん、なあに?」


「おやぶんとか、こぶんとか、そんな考えはよくないよ。普通にお願いすればいいことなんだから」


 そっか、そうだねと兄さまたちは頷き合っている。


 兄さまたち、ピュア!

 でも、そうだね。ただお願いすればいいだけのことか。

 わたしの薄汚れた考えを持ち込んじゃいけないね!


 ……と思った時もあったけれど、そうは問屋がおろさなかった。



 いつもの川原に行くと、子供たちがわらわらといた。その中にはカールたちもいて、ノッポのカールとぽっちゃりのサロはわたしたちを見て、眉を下げた。

 ん?


「来たよ」

「領主の子だ」

「かっこいい」

「バカ、何言ってんだ、領主んとこの子供だぞ?」

「ふわふわの犬だ」


『我は犬でない!』


 もふさまがキッと子供たちを睨んだが、ちっとも怖くなく、逆に子供たちに興味を持ったみたいに見えてかわいい。


「お前たち、何しに来た?」


 比較的体の大きい子が、腕を組んで意地悪げに言った。

 明るい茶色の髪に、深緑色の目をしている。


「魚をとりに来たんだ」


 兄さまが告げると、鼻をならした。


「ここはオレたちが魚をとるんだ。だから他のところでやってくれ」


 数人がクスクス笑っている。

 嫌な感じ。


「小さい子もいるし、ここ以外は流れが急だから危ないよ」


 カールが口を出すと、女の子に言うなって感じで服を引っ張られている。

 そういうことか。


「ここで一緒にとっちゃダメなの?」


 アラ兄が尋ねると、鼻で笑った。

 茶髪はここのボス猿みたいだ。みんな彼を信頼して従っているみたい。ボス猿をうかがっている。


「領主の子供が目につくところをうろつくな!」


 攻撃的な口調で言われる。


「君に会うのは初めてだと思うけど。私たちが何かした?」


 おお、兄さま、優しいだけじゃなく、言うときは言うんだね。


「何かしたじゃねーだろ? 領主のせいで、町がどんだけひどい目にあったと思ってんだよ!」


 前領主、何したんだよ、子供にこんなこと言わせるなんて……。

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