第1195話 ベクリーヌ滞在⑪見えてきた
「稲妻ちゃん、ありがとう、助かった!」
なんておりこうなの!? 自分もできるから、クイじゃなくて自分がやってもいいって思ったんだね。
「ピッカピカ」
胸を張ってる。ものすごく可愛い。
料理人はドアのところで伸びている。
彼はドラゴンに傾倒していたから、感電させられたとはいえ、ある意味ドラゴンからの贈り物だもん感激するに違いない。
腕輪はクラッシャーくんで壊そうかと思ったけど、何かの時のためにと思い、レオに昔父さまたちにしてもらったように効力だけ落とせるかを聞き、できるというのでそうしてもらった。
いきなり応接間のドアが開く。
兄さまを先頭にアダムとルシオが流れ込んできた。
「リディー!」
足元に転がっている男を見て、ちょっとほっとしてる。
「ひとりでは行動できないからって断ったら、ドアに足挟んできて、魔力封じの腕輪された。もうレオに壊してもらった。クイに雷はなってもらおうとしたら、稲妻ちゃんがやってくれた」
「ええっ。それはすごい!」
みんなで稲妻ちゃんを褒めたあと、お小言がくる。
「でも、なぜドアを開けた?」
「アオとアリに助けを求めにいってもらうためと、対面じゃないと鑑定できないから」
「結果は?」
「ハッシュ、24歳、カザエル民、焦っていると出た。
彼は我らの王が会いたいというから来てくれって言われたの。
ベクリーヌの王さまのことじゃなくて、カザエル王の元へってことだったのかもしれない」
「それはちょっと判断できないし、確めるすべはないな。カザエルの王だったら危険すぎるし」
とアダムに言われる。
「彼は神殿と繋がりがあったはず。カザエルも神殿にかかわりがあったのかな?」
ルシオがわたしも思っていたことを口にした。
「で、どうする?」
倒れた人がいると、落ち着かないものね。
「リディア嬢、たとえば仮部屋を用意して、そこでの会話を全部拾っておくこととかできる?」
「え? そうね仮想補佐が育つ……、あ、録画しとけばいっか。それならできる」
「他の人はともかくカザエルは口を割らないのが多い。この者だけがカザエルなのかわからないから後の3人を気絶させて連れてくる」
とアダムが出ていくと、兄さまも後をついていった。
わたしの仮部屋を複製したルームの隣に6畳ぐらいの何もない部屋を作る。
はめごろしの窓と、開かないドアをつけておく。
予備の録画魔具を取り付け、ハウスさんに録画もするんだけど、この部屋で何が起きているか監視してほしいむねも伝えておく。
カザエル民のハッシュを見張部屋へと移動させた。
「アダムは気絶させた人たちをどうする気だろう?」
「同じ部屋に入れておくんじゃないかな?」
「一緒に?」
「起きたら何が起きたと確認しあうだろうね。彼だけがカザエルなのか他にもいるかはわからないけど、4人は気絶させられここに入れられた意味を探るはずだ。彼の言葉に注意を払っておけば見えてくることがあるはず。口を割りにくいから、こうしてでも話が見えた方がいいと思ったんじゃないかな?」
なるほどね。全員が仲間なら、打ち解けて話すかもしれないし、逆に牽制し合うかも。
カザエルとベクリーヌの人が混じっているなら、ハッシュは言動に気をつけて、自分のいいように話を持っていこうとするだろうね。
口を割らせられない人にはなかなかいい計画かも。
ばさっと音がしたと思ったら、アダムがふたり、兄さまがひとり、男たちを運んできたところだった。
伸びてるね。ルシオと顔を見合わせる。
わたしは鑑定していく。
書記の人。グルノ 22歳 ベクリーヌ民 悩んでいる
会計の人。ノーチェ 27歳 ベクリーヌ民 悩んでいる
雑務の人。ホッツ 25歳 ベクリーヌ民 悩んでいる
私はハッシュだけがカザエルの人だとみんなに伝え、この3人は悩み事があるみたいと伝えた。
悪いけど、気絶したお三方も見張り部屋に入れさせてもらった。
さて。
ハッシュは孤軍奮闘だったようなので、もうそろそろ私を連れて行かなかったことで、彼が捕えられたかアクシンデントが起こったと、カザエルの人たちは思うだろう。
みんなが集まっていてちょうどよかったので、碑石に書かれていたグレナンの成り立ちを話した。皆感慨深く頷く。
「見えてきたな」
アダムが呟く。
「第一王子が生きていらしたら、もっと早く到達してただろうに」
なんでだろう。亡くなった第一王子のこと、知ってるのはたった何日間のことだけ。なのに、アダムの言葉通り、もし王子が生きていたらとっくに終焉のことにも答えが見つかっているんじゃないかって思えてしまう。
「確かに、そんな未来もあったかもしれないけど、私たちも皆で体当たりして一歩ずついい方向に向かっていると思うよ。
それは極限まで悩んで、こうしていくつもの要素が重なって行動していることが意味を持ってくるんじゃないかな?」
兄さまってすごいな。
兄さまの言葉は心に染み渡る。そうかなって思える。
そして、希望を持てる。
一発で見抜ける才覚はわたしたちにはないけれど、体当たりして身につけてきたことはいつか実を結ぶ。その方がきっとパワーになるんじゃないかって思える。
「……そうだね」
哀しそうにアダムが笑って、笑ったのに、わたしは気になった。
そしてそれはわたしだけでなく、兄さまもルシオもいつもと違うアダムに気づいていた。




