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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
19章 レベルアップと北の聖域

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1191/1222

第1191話 ベクリーヌ滞在⑦隠すべき事

 陛下は謁見室の奥まで行って置物の一部に偽装されていたレバーを下ろす。すると、それまで座っていた立派な椅子がガタンと鳴った。

 戻った陛下が手をやると椅子が床と一緒に動く! 椅子をずらすと、下へと続く階段が見えた。


 陛下はアカさんに誰も謁見室に入れないようにと言ってから、わたしたちを促した。

 人一人が通れる幅の細い階段だ。そこを降りていく。

 手すりがない階段はとても怖い。どうしようと思ったら、兄さまが小脇に抱えてくれた。狭い幅だと思ったけど、兄さまが器用なのか、無事下へと降りることができた。石造りの広い部屋。


「こっちだ」


 陛下はずんずんそのまま進んだ。

 ひとりでに外側に並んでいた灯りがともる。

 広間にいくつかの見上げるほど大きな石碑があった。


「貴公らに詫びと、そしてこれから友好を結ぶのに覚悟を見せよう。

 この地は何もない。あるのは……瘴気だけ。これは先祖が残した石碑。

 ああ、うっかりした。グレナンの古語が読めなければそう書いてあるかわからないな。けれど誓おう、我は嘘はつかぬ」


 アダムが何気なくわたしをみた。わかってると頷き返す。

 わたしはどこの文字でも読むことができる。もちろんグレナンの古語であっても。


「我らの新しい名はグレナン 誇り高く生きよ

 我らは海を渡り 厳しい地から新大陸へとやってきた

 もう灼熱の昼と 凍りつく夜に怯えることはない

 カザエルの名を捨て 羽ばたけ 強く生きよ」


 え。

 あ。

 わたしには注釈も出てくる。グレナンの古語=カザエル語、と。

 ってことは……。

 みんながわたしを見るから、陛下が口にしているのは、本当に書いてある通りだとうなずく。


 いつか第一王子が言ってた。第四大陸にあったエルダーという国。そこと第一大陸にあった国のグレナンの言語が似ていると。

 第四大陸は本当に厳しい地だった。あそこから船で新大陸を目指そうとする人がいてもおかしくない。

 そして人が少ない新大陸には危険な森が広がる、瘴気の溢れた大地だった……。

 グレナン民はカザエル民だったんだ。

 カザエルの第四大陸に残ったのが、滅んだエルダーやミネルバ。

 大陸を渡り、第一大陸に居着いた人たちがグレナンと名を打ち出した。

 カザエルと知られると非難されるから。


「わ、私たちはここまでつかんではいませんでした」


 アダムが陛下に告げる。


「初めは言うつもりはなかった。一番知られなくないことをつかんでいないのはわかっていた。だが、秘密にしたかったがために我らは神殿にいいように利用され、民も苦しんだ。貴公らのような年若い使節団が、グレナンのことをつかんでいても我らに敬意を払い、そして気持ちを慮ってくれていた。

 こんな過ちは繰り返すべきではない。我は其方らにかける。若い世代を信じる。

 我らの祖先がやってきたことを受け止め、新しい関係を築く時なのだ」


「民は知っているのですか?」


「グレナン民だということはな。滅ぼされた一族だ。それが伝わればまた命を奪われると怯えている。高齢者はカザエルの血が流れていることも知っているはずだ。こちらこそ、口を閉ざすことだと思っている」


「カザエルのことはある時まで秘め事としていただけると助かります」


 アダムがそういうと、陛下は首が傾く。


「どういうことだ」


「カザエルとグレナンが同じ資質を持った民だったということで、繋がったことがあるのです」


「犯罪の温床だと?」


 陛下は自虐的に笑う。


「いいえ。自然を慈しみ尊敬の念を強く持つ民です。研究熱心で瘴気のことをよく知っている。

 カザエルのことが知りたかったのです。でも情報がなかった。

 いつのことからかはわかりません。神だか神に準ずる者が〝世界〟に干渉をしていました」


 陛下は何を言っている?という顔になりかけたけど、何かを思い出した表情になった。


「カザエルのことは情報が出ていない。皆よく知らないのに何かをしてきたというように言い怯えています。カザエルにはやり遂げた実例もあり、それが犯罪と受け取れるもので、それでも捕まえることができず、神がかった力を感じていた。

 だから人々はカザエルを恐れていたんです」


 アダムの中で一連のことの歯車がカチッとはまったようだった。


「瘴気の木、ご存じですね? 赤い石がとれる。その石を砕くと不思議な力が備わる」


「なぜ、それを……」


「それはグレナンの知ること。だから繋がらずわからなかった。

 でもグレナンはカザエルだった。カザエルも知ることだった。

 いや、ガザエルだから知っていたのかもしれない。

 そうか、第四体陸に瘴気が溢れてないのは、使ったからなのかもしれない。瘴気の木は元々、第四大陸にあったのですね?」


 アダムが確かめる。

 陛下は何も言わなかったけど、固くなった表情が物語っていた。


 陛下は奥の碑石に視線をやった。

 アダムは続ける。


「カザエルはその神だか神に準ずるものを、いつの頃からか自分たちに降ろしていたんだと思います。

 人族が願ったのか、神が願ったのかはわかりません。

 カザエルの犯罪とは神か神に準ずるものが手を貸したものだった……」


「な、何を言っているんだ?」


「すみません、取り乱しました。

 我らは今、神だか神に準ずるものに戦いを挑まれています」


 陛下は硬い表情のまま、次の言葉を待つ。


「それは直接姿をかたちどれないか、この〝世界〟に立つことはできないのでしょう。だから依代を使った。瘴気の木を使って、乗っ取りやすくして、人を操って犯罪を起こした」


「何のために?」


「わかりません。何か願いがあるのか、それこそ暇つぶしなのか、それこそわかりません。けれど、着実にそれは大きな戦いとなることがわかっている。聖女が目覚めましたから」


 王は息をのんだ。

 閉ざされた地でも、世界議会から聖女誕生のニュースは伝わっただろうからね。


「聖女の予想では、悲惨な未来の割合の方が大きい」


「ここまで言っておいてなんですが、確証があるわけではありません」


 アダムは歩いて、兄さまの肩に手を置いた。


「けれど、この者は神がかった何かを断つことのできる剣を持っています。瘴気の木のところに案内いただけませんか? もしそれをこの剣で断つことができたなら、瘴気の木は神がかった何かが創った、植えたものと判断できる」


 そうだ。意識を乗っ取ることのできる石。そんなのを誰が作り出したの?

 直接干渉できない神が、世界を掻き回す手段。意識を乗っ取り、思うようにことを運ぶ。肉体を持てない神か、神に準ずる何かが。

 わたしは少し動いて、奥の碑石の文字を読んだ。


 グレナンの歴史だった。

 ニキというのが、先導者の名前だろう。

 瘴気が少なくなり、赤い石の木が育たなくなったとある。それで新天地を目指した。瘴気の多い大陸をニキは知っていた、とある。

 そしてその木を植えたと。

 人々は新天地に希望を持ってやってきた。ガザエルの名を捨てるためだと思ってた。だけどニキはいろいろおかしくなっていく赤き石の木を持ってきていて、新天地に植えた。

 人々はニキを支持するものと、カザエルの名を捨てたいものとに分かれた。やがて赤き石の木を讃えるものは、新しき地から出ていった。

 残った人々がグレナンを名乗る。それから、人々は瘴気と赤き石について研究を始めた。


 アダムが熱く言った。


「その者は研究熱心な民の近くにそれを植えたんです。そして何かをさせてきた」


 カザエルは第四大陸で共和国になる時に締め出された少数民族と言われてきた。それがいつしかお金で犯罪レシピの売買をし、お金を貰えばどんな汚いことでも請け負う。

 そのレシピといい、被虐性といい、人では在らざるような非道な種族と侮蔑されている。

 でもそれは……。赤き石の木、つまり瘴気の木から取れる赤い石で催眠状態のようにさせ、何かをさせられていた……。


 彼らは共和国を作ることで国同士の話し合いになった時、第四大陸を出た。

 新天地でやり直すためと思っていたが、恐らく依代のニキにより導かれた。瘴気をだいぶ使ってしまったから。そして、第一大陸に辿り着く。

 彼らはふたつに分かれた。グレナン、そしてカザエルと名乗るものとに。

 第四の厳しい地にいた彼らには第一大陸は同じように祝福のない地だったものの、他の人たちと違い、住み着くことができた。

 研究熱心な彼らは危険な森を研究する。多くある瘴気を使って、うまく生きることができないかと研究を重ねた。

 瘴気の木。そこで取れる赤い石の不思議に迫った……。

 一方、出て行ったカザエルは自我があると思いながら、神だか神に準ずるものに支配され、その者の願う何かのために、犯罪武装集団と呼ばれるようになっていった。

 それがカザエルの真相?

 

「カザエルの発端がこの地だということを言わないで欲しいのは、その者、神だか神に準ずるものに我らが知ったという事実を気づかれたくないからです」


 王は押し黙った。時を置いてから顔を上げる。


「まだ言葉は持てぬが、赤き石の木の地へ案内しよう」

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― 新着の感想 ―
言語が似てる云々も王子様のヒントだった?! バッカスの謎技術力と瘴気の扱いに長けてるのを見るに新大陸から出ていったカザエルだけでなく、残って研究をしてたグレナンも支配されてた人がいたかカザエルと繋がり…
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