第1189話 ベクリーヌ滞在⑤1号の活躍
晩餐が終わり、わたしたちは離れに戻ってきた。
野菜のみの精進料理という感じだった。お酒を飲む人もいなかった。
思ったのが、ここの人たちはあまり食に興味がないんじゃないかなって。
そんな気がした。体の中がきれいになりそうな食事だ。
もふさまは一切食べようとしなかった。
後でお肉をいっぱい食べてもらおう。
夜も更け、おやすみなさいをして、それぞれの部屋に入った。
夜着に着替え、枕とドラゴンちゃんたちの入った籠を持って父さまと母さまの部屋に突撃だ。わたしはクモ1号にもう一度頼んでから、領地の家にとんだ。
ふたりの間に挟まって、アオともふさまを抱きしめて眠る。
いい夢見られそうと思っていたら、夜中に起こされた。
クモ1号が騒いでいるようだ。
時計を見れば3時だよ?
わたしは起こしてしまった父さまと母さまに謝って、戻ることにした。
ふたりともすっごく心配してる。
「部屋に誰か入ってきたって言ってるでち」
誰かということは兄さまたちではないってことだ。
「リディー、父さまが行こう」
「え? だめだよ。第一大陸に父さまがいたら」
「侵入者を捕らえるだけだ」
父さまともふさまが最初に戻る。
もふさまがの判断でわたしも呼ばれとんだ。明かりをつけると、二人の男がのされて気を失っていた。黒づくめの格好をしている。
父さまは部屋から出て応接間を通り他3つの部屋をノックして回った。
3人とも「何かあった?」「どうした?」
と顔を覗かせ、父さまがいてびっくりしてる。
かくかくしかじかと話せば納得で、父さまは引き継ぎを済ませたから戻ると言った。
母さまによろしく伝えてもらうことにして、父さまは帰っていく。
応接間に戻ると男たちはロープでしっかり縛られていた。
「気配もさせずリディア嬢の部屋へ入るとは」
「恐らく神官です」
ルシオが言った。
「神官?」
アダムが鼻で笑う。
「リディア嬢を攫うつもりだったのか? どうやって気配を消したんだか」
「神への祈りは神官が初めに習得すること。祈りは自分の欲を捨て無になってこそ。これは気配を消すのと同じことだ」
神官は神を奉る集団だったから、悪いことに力を使うとは思えずノーマークだった。神力や聖力を使える人が多くて、気配も消せる。有能集団だね、考えてみれば。
「どうする、門番に突き出すか?」
「門番のところを通れたんだろうから、渡したら逃げられそうじゃないか?」
「その通りだ。門番だって気配には気づかずとも無能ではないはず。恐らく魔法で姿を悟られないような何かをしたんだ……」
なんてこと!
「神官だから、神の名の元に縛っておく。眠った状態のままになるはず」
そう言って、何か口にして、2本の指で二人のおでこを触った。
使うのは初めてだそうだけど。
神の子だから、神の言葉で縛ることが可能なそうだ。へー。
ルシオがいてよかった。
「あの神殿はまた一つ罪を増やした」
それにしても微妙な時間に起こしてくれたもんだよ。
じゃ、ここまでにしてあとはまた起きてからね!ともう一度眠る気にはなれず、みんなも同じだったみたい。応接間でみんなと一緒にソファーに座って体を休めた。途中で少しうつらうつらはした。
夜が明けてすぐに門番さんに宰相さんを呼び出してもらう。
やってきたアカさんはロープで縛られた人を見て悟ったみたいだ。
「も、申しわけありません。門番には……」
「いえ。何か魔か、魔に準ずるものをかけられたのでしょう。この者たちを知っていますか?」
アカさんは服で口元を隠すようにして眠っている捕えられた人に近づく。繁々と見てから
「恐らく神官だと思います。神殿にて見たことのある者たちです」
とわたしたちに頭を下げた。
「リディア嬢の部屋に迷いもせず入ったようです」
その言葉の意味を正確に受け取り、アカさんの顔が歪んだ。
部屋は用意されていたけれど、誰がどの部屋を使うかなんてわからないよね。
他の部屋も見回ったかもしれないけど……門番さんと同じように気配を消す何かをしたのかもしれない。けど、同じ神官の部屋に入ったならルシオは気づくだろう。それに3人とも気配に聡い方だし。
わたしがあの部屋を使うのを知っていたのは、ドラゴンの質疑にきたあの4人の人たちのみ。そのうちの誰かか4人全員かは知らないけれど、神殿と繋がっていることが考えられる。
「世界議会員が来る前に王への謁見を願います」
「……承知いたしました」
アカさんは両手を胸の前に出し、指を結び、腕は伸ばしたままで頭を深く下げた。
すぐに戻ってきて、わたしたちは王への謁見の間へ。
陛下は椅子の上で例のやる気のないポーズで座っていたけど、夜着な気がする。
そこまで急いでもらうことでもなかったけど。
捕えた人たちは、こちらの衛兵さんがえっちらほっちら運んできてくれた。
ドラゴンちゃんたちは籠の中でまだ眠っていて、その籠を兄さまが持ってくれてる。わたしはもふさまを抱えている。
「賊がシュタイン嬢の部屋に侵入したと聞いた。それは確かか?」
確かめられて、アダムが答える。
「はい、捕えられているのが侵入した賊です。アカさんに見知った顔かお聞きしたところ、神官だと教えていただきました」
「こちらの落ち度だ。申しわけない。何を望む?」
え? いや、なんか話が早すぎでは?
「望みはひとつ。何のことで、神殿に脅されているのです? その理由をお聞かせください」
アダムも話早すぎ。
いやね、端折ったのはわかるよ。結局会話の行き着く先はそこってことは。
でもさ、もうちょっと、気持ちを確めあいながら進むのが一般的だと思うんですけど。
「歳若くても、さすが使節団だ。そこまで掴んでいるとは」
陛下は顎を触る。
「望みに答えたいところだが、それは言えない。他のことにして欲しい」
ええっ。断ってきた。
「おっしゃらなくても我らは追求をやめません。いずれ詳らかにします。白日の元、声高にさらされるより、今ここで打ち明けてはいただけませんでしょうか? 我々は労力の無駄を省けます。そちらも変に興味を持たれるより、打ち明けていただいた方が良いと思うのですが?」
アダムが上目遣いにうかがった。




