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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
18章 権威に群がる者たちの輪舞曲
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第1130話 暴く⑦狙いを定める

「アグネス夫人、子供たちのいるところで、なぜそのようなことを!」


 第二夫人が怒った声をあげると、第五夫人が怯えたように首をすくませる。

 フローリア王女がクッキーを食べていた手で陛下の服を引っ張った。


「どうした?」


 陛下が王女に声をかける。


「あのね、おとうさま。ブルーのお部屋にくさいものをおいてく人がいるの。ほんとうよ」


 フローリア王女は陛下にブルーと呼ばれているみたいだし、自分を陛下にはブルーと言ってるんだね。


「何? ブルーの部屋に臭いもの?」


「陛下、私は臭いと感じたことはないのですが、葉巻やお酒、布、フローリアに似つかわしくない物が、部屋に置かれていたんですの。栞なんかもありましたけれど。フローリアがなぜか臭がって」


 葉巻やお酒に布……それが臭い?


「夫人、それらをどうしました?」


 ロサが鋭く尋ねる。


「もちろん侍女に片づけさせましたわ」


 第五夫人はそれ以外に答えがあるのかと言いたげだ。ま、その通りだよね。


「フローリア王女の部屋に、誰かが忍び込んだということか?」


 直接の被害は第五夫人というより王女殿下の部屋だと知り、第二夫人が目の色を変えた。その迫力はかなりのもので、子供たちは凍りつく。


「なぜすぐに言わなかったのです! 陛下、これは奥のこと。妾にお任せください」


「まぁ、待ちなさい。ブルー。部屋のどこに臭いものがあったのだ? どのようなところに? テーブルの上か? ベッドのそばか? それともおもちゃ箱の中?」


「ベッドがない方のブルーのお部屋よ。本のいっぱいあるお部屋。じじょたちは本は本棚にお片づけしなさいっていうけど、私は床に置くの。いみがあるの。だからちょっとズレていればわかるわ。だってくずれちゃうもの」


「……ブルーの遊び部屋といえば、その前は第四夫人が使っていた部屋だな」


 ! そういうことか。フローリア王女や、第五婦人を狙ってのことじゃない。

 第四夫人の失脚を狙う人が第四夫人の持ち部屋だと思って、何かなすりつけるつもりで〝ブツ〟を置いたんだ!

 第四夫人は顔を青くしている。


「わ、私はフローリア王女の遊び部屋に、そんな嫌がらせをした覚えはありませんわ」


「……第四夫人の部屋のままと勘違いした侍女が、運んだのかもしれませんね」


 第六夫人は穏便に、勘違いがあっただけで悪い人はいないと言いたげに見えるけれど、すなわちそれは第四夫人の「物」であると言ってるのと同じだ。


「第五夫人、どうして物を置いたのが〝夫人〟の誰かだと思われたんですか?」


 少し強めの口調でロサが尋ねた。第六夫人の発言をかき消したいとでもいうように。


「第二王子殿下もご存じでしょう? 私たちの住む離宮は男子禁制。侍女も忠実なものしか側に置きません。夫人が絡んでいなければ、離宮で何かは起こせませんわ」


「ちょうどよく夫人がたがお揃いですね。第四夫人の持ち部屋がフローリアの遊び部屋に変わったことをご存じでしたか、母上」


「もちろんだ。奥のことで妾が知らないはずがなかろう」


 第二夫人が答える。


「第三夫人は?」


「私は知りませんでした」


「第四夫人はもちろんご存じですね」


「はい」


「第五夫人もご存じだ。では第六夫人は?」


「私は知りませんでしたわ」


 にっこりと第六夫人が微笑む。


「第四夫人はお心当たりがおありですか?」


「まさか! 葉巻にお酒でしたっけ? そんな物を買って運ばせたことなどありません。布だって買ったらそのまま服を仕立てていただくのだから、王宮に持ち込むはずはありませんわ」


 第四夫人はハキハキと答えた。


「知らない物を持ち込まれたらそれも不愉快ですし、王女が臭いとおっしゃるのが気になりますね」


 第三夫人が思慮深く言った。


「では、実物をお見せしましょうか」


 張り詰めた空気の中、場違いな明るい声を出したのはアダム。


「実物があるのですか?」


 第五夫人は眉根を寄せて不愉快な表情になっている。


「フローリア王女さまは感知系のスキルをお持ちだったんですね、おめでとうございます」


「感知系のスキル?」


 第五王子、ハイド殿下が首を傾げる。


「臭いとおっしゃるのは、その物に込められた〝魔〟に反応されたのでしょう」


「〝魔〟に反応? ということは、普通の葉巻や酒ではなかったってことですか?」


 コリン殿下が驚いたように言って、


「そんな危険なものが王女の部屋に?」

「なぜ実物が?」


 続いて王子殿下たちがアダムへと質問する。


「はい、コリン殿下。普通のものではなかったでしょう。

 嫌がらせといより、陥れたかったからと思われますね、ハイド殿下。王女殿下の部屋にあったものは、侍女を問い詰めれば手にすることができるでしょう。

 バンプー殿下、私がお見せできるのは、王女殿下の部屋から出てきた実物とは違います。これは市井に出回った危険なものでした」


 アダムは袋の中から透明の何かでコーティングされている栞を出した。

 あ、学園の寮にあったやつ。

 危険な何かは封印されているから大丈夫だと、アダムは請け負った。


「王女殿下、こちらでも臭いですか?」


 王女は陛下の膝の上で、小首を傾げる。


「ちょっとだけくさいけど、そこまでひどくない」


 キリロフ伯を連れてきたところで、勝負に出るはずだったのに、アダムは仕掛け始めた? 何か勝機を見つけたのかな?







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フローリアさまは高位魔物並みの嗅覚スキルを持ってるのか。 臭い人探しに協力してもらえたらセインやカザエルのスパイ探しが捗りそうだけど幼いし狙われたら危ないからやらないのかな? ガッツリ例の商会の物の…
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