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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
18章 権威に群がる者たちの輪舞曲
1123/1128

第1123話 逆の定義⑤突破口

「最大の利点は、ドラゴンはユオブリアを潰さないってことだ」


 あ、そうだね! 最悪のシナリオは訪れることがない!


「これもリディア嬢の功績だね」


「でも、陛下に知らせたんだよね、ドラゴンのこと。ってことは潜入者にもバレてるってことだよね?」


 アダムは首を振った。


「そのことは陛下と宰相に留めてもらってる」


 ナイス判断!


「現在、潜入者として怪しいのは第五夫人と第六夫人。他の人の可能性もあるから決めつけるのは危険だ」


「第六夫人は琥珀湯とアズのお茶の場にいたんだよね? だったら除外で第五夫人が怪しんじゃないかな?」


「……ただ飲まないこともできるからな」


 ダニエルに考慮点をあげられ、ルシオがそっかとうなずく。 

 そうだ。そういうこともできるね。


「そのお茶の時に第六夫人に怪しいところはなかった?」


 ロビ兄に尋ねられる。


「特になかった、と思う」


『リディアが見逃しているだけかもしれない、その時のこと詳しく話してみれば?』


 レオに言われて、わたしは思い出そうとした。


「あの日……第四夫人と話して、リノさまと話した後に連れて行かれたのが第二夫人のところで。終わって部屋を出たらアガサさまがいらして、アガサさまに誘われるままにお邪魔したの」


「ということは、最初からお茶をするはずではなかったんだね?」


 ダニエルに確かめられてわたしはうなずく。

 いく先々でお茶をいただいたからお腹がタポタポだったのを覚えている。


「部屋にはコリン殿下と、第三夫人、それから第六夫人がいらしたわ。第六夫人とお話するのは初めてだった。少し苦めのお茶とお菓子が用意されてた」


「琥珀湯とアズ入りの菓子は最初から出されたんじゃなかったんだね?」


 わたしはアダムにうなずく。

 それでどうしたんだっけなー。

 目をつむり思い出そうとする。銀龍を撫でて記憶をたぐる。


「あ、アガサさまがピアノを弾いてくださって、それを聞きながらお茶をいただいたのよ。とても素敵だったわ。それで第六夫人から楽器は何を嗜まれているのか聞かれたの」


 思い出した! それでハープを用意してくださるとかいうから慌ててピアノを弾いたんだっけ。

 みんなふんふんと聞いてくれる。


「アガサさまが今度連弾しましょうと言ったら、コリン殿下までバイオリンで参加するとおっしゃって、アガサさまがそれなら、わたしがハープ、アガサさまがピアノ、コリン殿下がバイオリンで、第三夫人のお好きな『雨のワルツ』を演奏しようという話になって。

 そしたら第六夫人もその時は自分も聞きたいっておっしゃったわ。

 じゃあ、それなら、陛下にも聞いていただくのはどうかって提案されて。

 殿下や王女さまはそうしたいみたいだけど、第三夫人がそんなことをしたらわたしが悪目立ちするから、陛下を交えずのお茶会にしましょうっておっしゃられたのよ」


 みんなほー、という顔をする。


「第六夫人が差し出がましかったと謝られて、みんなが許したわ……」


「どうした?」


「いや、たいしたことではないんだけど」


「それでも言ってくれ」


「気に掛かったといえばそうなんだけど、たいしたことではないと思う。

 第六夫人はわたしにも謝ったのよ。コリン殿下にも王女殿下にも。

 それでコリン殿下は自分たちが勝手にはしゃいんだから謝らないでとおっしゃって、第六夫人はコリン殿下の手を取って、王子殿下と王女殿下がお優しい、ありがとうございますってそれに対してお礼を言ったの。コリン殿下は少し顔を赤らめていた。それを見守る第三夫人もあたたかく微笑まれていて。……何もおかしいところなんかないのに、何か気にかかったのよね」


 そうだ、なぜか微笑んでいる第三夫人が、いつもの微笑みとはちょっと違う気がしたんだ。


「第三夫人がお茶がすっかり冷めてしまったと新しいものに変えるようメイドに指示して。その時に第六夫人から神獣のことを聞かれたんだったわ」


「神獣のこと?」


 ダニエルが驚いたようにピクッと反応した。


「どんなことを?」


「アガサさまもコリン殿下も目をキラキラさせていて。第六夫人から神獣さまがどんな姿なのか聞かれた。だったよね、もふさま?」


 もふさまはゴロンと横になり顔までぺたっと床につけていたけど、尋ねると顔を起こした。


『リディアは大地の守護者と空の守護者の容姿を伝えた』


「そうそう。そしたら今度は聖獣の姿を聞かれて、話したらもふさまのことバレるから神秘的で堂々とした姿って言ったの」


 もふさまは起きあがり、体をフルフルとふる。毛並みが綺麗に整った。


「その後に聖獣さまとどう出会ったのかを聞かれて、聖獣さまの領域で迷子になって助けてもらったと言ったら、シュタイン領の奥の山は聖域だっておっしゃられて。思わず聞き返したの。だって聖獣さまに会ったことは広めてないから」


 王族にはもふさまのことが伝わっているから、わかっていたのだろうと思ったけど、「いつ」会ったのかは言ってないから、不思議に思ったんだ。ま、わたしが行ったことがあるのは領地、王都のみだけど、ダンジョンで会ったのかもしれないし、バリエーションはあるじゃない? 


「迷子と聞いて小さい頃、つまり領地での出来事かと思われたそうよ。そこで琥珀湯とアズ入りのお菓子が配られたの」


「なるほど。潜入者、そして裏切り者かどうかはわからないけど、ミープ・ロイター嬢の後ろが誰かわかったよ、第六夫人だ」


「えええ? どうしてわかったの?」


「ロイター嬢に君の弱点を伝えたんだ」


 わたしたちはダニエルから発せられるその次にくる言葉を待った。


「リディア嬢は実は神獣さまの姿が怖いんだと言っておいた。その姿を見ると足がすくむって。本当は怖いから加護してもらえると思っていないようだって言っておいた」


 え。


「神獣はどんな姿って言ったんだ?」


「えっと。火を纏ったツノの生えた馬のようなお姿の方と、真っ白な小鳥のようなお姿って言ったと思う」


「きっと第六夫人は君が火を纏ってたり、ツノが生えた馬は怖いと思っているだろうね」


 ダニエルが愉快そうに笑う。


「ロイター嬢を使って何かしていたのだとしたら、やはり怪しいな。潜入者かどうかはわからないけど」


「僕たちには利点がいくつもある。向こうの手もほとんど潰している。

 そして向こうは切り札があると思っているのも、僕たちには有利に働く。

 あとは集会を崩せる突破口があれば、崩していけばいいだけだ」


「ブライに食いついてくる何かを待つしかないのか……」


「そういえば、9年前の呪いの実行犯って誰だったんだ? 9年経ってから制裁を下されたその貴族は?」


 イザークに尋ねられる。


「廃妃の元侍女が前々モロール領主の夫人だった。その領主夫妻が転落事故で亡くなった。けれど実行犯はその侍女頭が使われたんだ」


 兄さまは淡々と伝える。


「はっ、自分の手を汚さず、断れない下の者にやらせるところに虫唾が走る!」


 ロサが憤る。


「頼まれた元侍女も、自分の侍女に押しつけたんですね」


 ルシオが胸の前で十字を切ってから手を組んで祈った。


「自業自得なところもあるけれど、結局、廃妃が発端だものな」


「廃妃に目をつけられたところで気の毒だとは思うよ、メイダー伯も」


 そう呟いたのは兄さまだ。


「メイダー伯? その名前どこかで見た」


 え?

 アダムは目を押さえてうんうん唸っている。

 そして唐突に顔を上げる。


「あれだ、ミューエだ」


「ミューエ?」


 カドハタ嬢の婚約者。集会煽動者である。


「ミューエは庶子だったんだ。母親が侍女をしていてお手付きになり、奥方から追い出された。その後メイダー伯のところで働いていたけれど、まだ若いのに急になくなって、息子はミューエ伯が引き取ったんだ」


 メイダー伯の侍女で若いのに急に亡くなった……。

 侍女頭の頓死。

 すーっと血の気が引く。

 わたしの気持ちに呼応したように、うつらうつらしていた赤ちゃんたちがパッと目を開けて、不安そうに鳴き出した。

 肩に手が置かれる。


「リディー、違うよ。あれは呪いが返っただけだ」


 その言葉でみんな状況が見えたようだった。わたしが何に打ちのめされたのかに。


「全く廃妃はいつまでリディア嬢を苦しめるんだ」


 ロサがテーブルを拳で叩いた。


「ミューエの崩しどころがわかった。これを解決して、しっかりと終わらせよう。廃妃の呪縛からもね」


 そうアダムが締め括った。

 

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― 新着の感想 ―
うーん…幼体の方は解決してないのが結構心配。 話題にしなかったということは卵の種族と被ってなさそうだし。 幼体の種族ともフレデリカ様が介入してくれた時に話して置いた方が良かったんじゃ? さすレオ、頼…
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