第1104話 Mother④Baby
どの卵も遠慮なくヒビが入っていき。
目の前の白い卵から、黄色っぽいぶっとい腕が出てきた。
『ピカ』
腕を出した隙間に頭をこじ入れるようにして、ヒビが割れて殻が落ちる。
卵を入れていた木箱が倒れた。木箱からのそっと出てきたのは、真っ黄色のレオを小さくしたような姿。藍色の瞳はくりっくり。
『ピッカピカ』
電⚫︎ネズミかっ!?
わたしを見てる?
わたしは固まった。動いたら、悪いことが起きそうだ。
人の手のひらサイズの卵から出てきたドラゴンでも、今のわたしからするとわたしの2、3倍はあるんだよ、赤ちゃんドラゴンは。た、食べられる!?
『ピッカピッカ』
親を呼ぶように鳴いている。その不安げで必死な声に胸がギュッとなる。抱きしめてあげたくなるけど、近寄ったらわたしが潰されそうだ。
隣の卵からも手が出てきた。なんかハウスさんみたいに七色に煌めいているんですけど。やっぱり手がすでにぶっとい。海の主人さまを彷彿させる色だ。やっぱりぬいぐるみレオ体型。
『くりゅくりゅ』
こっちも独特な鳴き方。でもやっぱり必死さがある。
水色の卵から薄い緑色。わたしよりは濃いけど。目は真っ黒。
『ミューミュー』
猫みたいな鳴き声。絶対に何かを探してる。
同時に水色の卵から出てきたのは真っ白の体に目は赤い。
『フォーフォー』
フクロウ!?
最後に黒い卵が割れた。うっ。体も真っ黒。すでに顔がいかつい。けれど鳴き声は
『ミャアミャア』
子猫の鳴き声だ。目は赤い。不安げに鳴いている。
5匹?、5頭の、ぬいぐるみレオみたいな体型の赤ちゃんドラゴンたちは木箱から這い出てきて一層激しく鳴く。
そして、彷徨っていた視線がわたしに留まる。
親近感があったのか、薄いグリーンのドラゴンがわたしに寄ってきて、わたしの体を口で突っつく。
『ミューミュー』
わたしは転がって仰向けになってしまったので、ジタバタしてうつ伏せに。
……動いてしまった。
恐る恐る振り返る。
みんなにロックオンされた!
5匹がわたしめがけてくる。
いやーー、潰されちゃう。逃げなきゃ!
『ミューミュー』
『ミャアミャア』
『くりゅくりゅ』
『ピッカピッカ』
『フォーフォー』
必死にわたしを追ってきてる。声も哀しそうで……。
止まって振り向けば、みんなが寄ってきてもみくちゃにされる。
すっごいチュッチュされてるんだけど、無理だよ、わたしドラゴンのお母さんじゃないから。
『なんと、卵が孵ったのか』
声の方を見れば、もふさまとレオが扉からこちらに向かってきていた。
『親だと思ってるな』
レオが言って、自分の言葉にふむふむ頷いている。
赤ちゃんたちは、やってきたもふさまとレオには目もくれず、わたしをチュッチュしてる。ドラゴンは卵で生まれるけど、最初はお乳で栄養をとるのかな?
『リディア、赤子はお腹を空かせてるぞ』
わたしもこれは乳をもらおうとしているんだって思うけど、わたしにはどうにもできないよ。
「レオ、ドラゴンの赤ちゃんは何で育つの?」
普通のミルクが飲めればいいんだけど。
『〝乳〟だな。けれど高位の魔物は〝乳〟だけでなく、魔力や魔素、他からの生気なんかでも大丈夫だ』
やっぱり〝乳〟なのか。
生気ってどうやってあげるんだろう?
「魔力をあげるってどんなふうにするの?」
『さぁ?』
レオは首を傾げた。
……………………。
「リディー」
呼ばれてハッと見あげれば、扉のところに兄さまが立っていた。
なぜか焦る。
わたしにお乳をねだる赤ちゃんたち。
なんか浮気現場を見られたようなっていうか、……浮気を通り越してる!?
「産んでないから!」
もふさまが通訳すると、兄さまは少し困ったような顔で笑う。
「うん、それはいろいろ無理がありそうだ」
歩いてきた兄さまがもみくちゃにされているわたしを救い出そうとすると、赤ちゃんたちの鳴き声が一層激しく、切なく、必死になり、兄さまは手を止める。
「卵の孵化までふた月以上はあるって話だったけど、早く生まれたんだね」
思案顔の兄さまが、赤ちゃんたちの頭を指で撫でている。
孵化までふた月以上? そうだったのか。
兄さまによれば、一応ドラゴンに詳しい人たちが呼ばれて様子を見たということだ。
ドラゴンの卵は孵るまでに3ヶ月から半年はかかるそうだ。
卵の殻の中の栄養で育っていくので、殻はどんどん薄くなっていく。その栄養素がなくなれば、殻を壊して外に出る。
音の反響を利用して調べたところ、ドラゴンたちの殻はまだかなり厚めだったので、まだ産み落とされたばかりと推測され、余裕を持ってふた月以上としたようだ。
それでまだ監視する人もつけず放置されていたのね。
もふさまとレオが殻の様子を見ている。
『ここは遮断されているところだから、魔素が入り込むことはないんだが……』
『本当だ殻が厚いままだ。赤子たちは殻の栄養じゃなくて、魔力か生気を糧にして早く生まれたんだ』
「魔力をどうやって? あ、もふさまもレオも魔力が高いからその影響で?」
『いや、無意識に魔力や生気を取ることはないはずだ』
じゃあ、何がこの子たちの栄養になったんだろう?
兄さまはもふさまに何の話をしているかを尋ね、もふさまが通訳した。
「リディーはここで何かした?」
兄さまに尋ねられ、首を横に振る。動くと赤ちゃんドラゴンたちに頭が当たった。
「何もしてないよ?」
『そうだな。昨日リディアに歌ってもらって眠って、リディアは夕方まで眠ってた。アランとロビンにご飯をもらって。その後、我らでフランツを呼ぶためにアオのところに行っただけだ』
「リディーはひとりで、ここにいたんだね?」
わたしは頷く。もみくちゃにされていてうまくできなかったけど。
「ピシって音がして。気がついたら5つともヒビが入って、こうして出てきたのよ」
鳴き声がお腹が空いたって切ないのだけ伝わってくる。
「普通のミルクでも平気かな?」
『リディアの魔力をあげたらどうだ?』
「わたしこの姿じゃ魔法を使えないし。もふさま、レオ、この子たちに……」
「……歌ってみたら?」
え?
兄さまは顎のところに握った拳の人差し指があたるようにして、描かれた人のような完璧さでそう言葉を発した。
「ここにいてリディーがしたこと。歌ったことと、食事。……ということは、歌が何らかの作用をもたらしたんじゃないかな?」
そういえば、一人になってからずっと歌っていたけど。
ステータスボードを呼び出す。トカゲになると魔法は使えないし、収納ポケットも使えないけど。ステボが使えるようになってよかった。
!
わたしは目を疑った。
「……当たりみたい」
『どういうことだ?』
「スキルが生えてる。オペラの歌姫に進化して、スキルの〝聖歌〟がある」
路地裏の歌姫は路地裏の人気者を経てオペラの歌姫となった。
『それだ! リー歌ってやれ、お腹を空かせた赤子のために』
考えたいことはあるけど、後回しだ。今はお腹を空かせた子たちに……。
名前:リディア・シュタイン(14) 人族
性別:女
レベル:25
職業:学生
HP:685/731<861時点より228up・以下同>
MP:98793/98793 <13047up>
力:61<1up>
敏捷性:25
知力:87<2up>
精神:95
攻撃:59<2up>
防御:37<2up>
回避:97
幸運:97<2up>
スキル:生活魔法(火SS・水SS・土SS・風SS・光SS・無SS)
自動地図作成(レベル20)<2up>
探索(レベル14)<3up>
仮想補佐(タボ・レベル55)<2up>
隠蔽(レベル16)<3up>
付与(レベル60)<3up>
鑑定(レベル14)<3up>
翻訳(レベル52)<5up>
仮想補佐網・創造(ハウス・レベル851<428up>/ドロシー・レベル163<6up>/フリンキー・レベル63<6up>/NEW ウッド・レベル777/NEW ショウちゃん・レベル97/NEW ウルヌス・レベル45/NEWエルター・レベル11)
NEW 聖歌(レベル15)
厨房の責任者 A
街中の道化師 A
言の葉師 A
オペラの歌姫 B
照明の達人 A
六花のマイスター B
整地魂 B
無知の無 B
羅針盤 C
星読みの先駆者 A
次元の歩道 D
路傍の猫 B
当意即妙 C
空蝉の鏡 C
不撓不屈の赤
一陽来復 C
呪詛回避 B
体免向上 A
NEW 抜苦与楽 C
NEW 万物巡 E
NEW 大陸創造 Z
NEW 脱兎 F
NEW 疎密波 D
NEW 迷霧 C
NEW 雫 D
ギフト:+
特記:
サブハウス・サブルーム、サブサブハウス・サブサブルーム所有、サブサブサブハウス・サブサブサブルーム所有
アランの別荘のサブルーム、ロビンの別荘のサブルーム、エトワールの別荘のサブルーム、ノエルの別荘のサブルーム、フランツの別荘のサブルーム、リディアの別荘のサブルーム所有
NEW ウッド商会&倉庫(1、3、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、21、23、25、27、29、33、35、79、81)
NEW 木漏れ日の間のサブルーム、秘密基地のサブルーム
火星の祝福
水星の祝福
土星の祝福
風星の祝福
原星の祝福
木星の祝福
金星の祝福
闇星の祝福
命運を司るオルポリデ神の祝福
原罪の女神の祝福
遊戯神・レクションの祝福
真価神・バリューの祝福
生命の維持を司る・ウケモミチ神の祝福
洞察力を司る・ソピアー神の祝福
対話神・コミュニティーの祝福
拡散神・ディフュージョンの祝福
焦点神・ライティングの祝福
沈静神・フローズの祝福
造成神・クリエートの祝福
探究神・ソクラの祝福
測りごとを司る・ラシンバン神の祝福
解読を司る・ネイタル神の祝福
空間を司る・スペース神の祝福
影を司る・エア神の祝福
機知神・ユーモアーの祝福
現身神・リアルの祝福
強固神・ポジッティブの祝福
来春神・ターンの祝福
獣神・ボーンラドアの祝福
大地の守護者・神獣・ノックス(冥王神・オーイリシア・属)の祝福
ヘビつかい神・アースピオスの祝福
NEW 慈愛神・ヘスティアの祝福
NEW 時を象徴する・クロノ神の祝福
NEW 大地神・ケブの祝福
NEW 嵐の神・セトの祝福
NEW 音を司る・ハトフル神の祝福
NEW 霧の神・ムンムーの祝福
NEW 雨の神・チャウクの祝福
マルシェドラゴン・ホルクの加護
<追加:生活魔法(火)レベルアップ、路地裏の人気者→オペラの歌姫、照明の達人・六花のマイスター・整地魂・無知の無・羅針盤・星読みの先駆者・次元の歩道 ・当意即妙・空蝉の鏡 ・一陽来復・呪詛回避・体免向上レベルアップ+NEW>