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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
3章 弱さと強さと冬ごもり
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第110話 名も無いダンジョン①たったひとりの冒険者

 アルノルトさんはニコッと笑って、それから言った。


「このダンジョンは一般的ではありません。それがどこかわかりますか?」


 一般的でない? わたしは兄さまと双子と顔を見合わせた。


「あっ。この人、ひとりだ」


「腕に自信があるんじゃない?」


 アラ兄が意見するとロビ兄は首を横に振った。


「いや、〝人〟が全然出てこない。書いてないだけかもしれないけど。メモ書きにあった? 誰かと会ったとか、戦っているのを見たとか」


 そう尋ねられてやっとわかる。

 ノートはダンジョンに入った時のことが書かれていた。日記みたいな感じに。そこに考察したこととか、後から思ったことをメモ書きで足されていた。

 強ければ単独でダンジョンに入ることもあるだろうけれど、他の〝人〟の気配が全くしない攻略ノートだった。ロビ兄のいうとおり、書いてないだけかもしれないけどね。

 ダンジョンは1か所しか行ったことないけど、人とすれ違うし、戦っているのを見かけたりした。時には情報交換をしたりもする。でもそういった記述は全くなかった。


「メモ書き、思いついたこと。〝人〟のこと、全くなかった」


 思い出しながら力強く伝える。


「そうです。記述を読む限り、このダンジョンは彼しかいない、そのように感じました。書いてないだけかもしれませんが。ダンジョンにはレベルがあり、それを超えていないとダンジョンには入れません。門番がいるはずですし。けれどそれを匂わすような記述もどこにもない。ダンジョンは単独で入ったとしても、規制があるので絶対に人とどこかしらで会うはずなんです。ですからこのダンジョンは一般的に知られているものではなく、彼がみつけ、公にしなかったのではないかと思うのです」


「300年前はダンジョンをみつけても報告しなくてよかったのかな?」


 兄さまが首を傾げる。


「いや、ダンジョンの規制は今より昔の方が厳しかったはずだ」


 父さまが言った。

 ダンジョンってある日唐突に現れるものらしい。洞窟みたいだったり、穴だったり、塔だったり。それで近づかないように人は規制をひかれ、強さを誇るものが、それは何なのかと探りに入る。中には大体魔物がいっぱい。その強い人たちや鑑定の力のおかげで、ダンジョンというものがわかってきた。

 中に入らなければそうそう危険はない。適度に入って魔物を狩ることが望ましい。ダンジョン内で魔物が倒れると、それは魔石を残して亡骸は消える。魔石も一定時間を以てダンジョンに還るそうだ。つまり、それらを糧にしてダンジョンは〝在る〟らしい。糧がなくなると一時的に魔物を増やし、自ら糧を得る。時にはそれがダンジョンから溢れ飛び出すなんてことになるらしい。恐ろしい! だから、命を大事にとしながらも、ダンジョンに入り魔物を狩ることを推奨している。人知れずとも魔物が急に溢れ出すので人の目にとまりやすく、野良ダンジョンがみつからない可能性は低いはずなのだが。


「300年前、野良ダンジョンだとしても、今は知られているだろうね」


「でも、ラッキーマウスのいるダンジョンなんて評判になってそうだけど。あ、ラッキーだからみつかってないのか」


「そこです。私はラッキーマウスがウヨウヨいるダンジョンだけに、今も静かに生き延びて、ひっそりと在るのではないかと思います」


「アルノルトは、どこにダンジョンがあるか見当がついているの?」


 兄さまが瞳をキラキラさせてアルノルトさんに尋ねた。


「私はわかりませんが、前マスターのことに詳しい方がいらっしゃるでしょう

?」


「「「「ハウスさん!」」」」


 わたしたちは声を揃え、そしてそこにいたメンバーでメインルームへと転移した。




「ハウスさん!」


 呼びかけると七色のヒレ耳素敵女性が現れる。


『はい、いかがしました? マスターに皆さま』


「ハウスさんは、このダンジョン、どこだかわかる?」


 わたしは攻略ノートを見開いて、ハウスさんに見せるようにする。


 ハウスさんは目を細めた。


『申し訳ありません。家の中のことならともかく、外のことになると私には難しいのです』


 ……そっか。わたしはうなだれたが、アルノルトさんは質問をする。


「では、〝ここ〟からよく出かける場所はありませんでしたか?」


 バッとわたしたちはハウスさんを見た。

 ハウスさんはにっこりと笑った。


『よく、わかりましたね。前マスターは、同じところに頻繁に出向かれてました』


「それ、教えてもらう、できますか?」


『はい、マスター、ご案内させていただきます』


 ご案内?

 わたしは首を傾げた。




 次の瞬間、青みがかった石造りの部屋にいた。

 ベッドがひとつと机がひとつ。本棚とタンス? ドアがひとつ、見える。キッチンらしきものがある。わたしたちは部屋の中央に身を寄せ合うようにしていたが、机の上にモニターが現れた。50インチはありそうな大きなやつ。ガガガっと音がして、そのでかいモニターいっぱいにハウスさんの顔のアップ。


 そのモニターとの間の空間に急に黄色い毛玉をつけた真っ白いものが降り立った。


『リディア!』


「もふさま!」


 急にひよこつきのもふさまが現れて驚く。


『なんだ、ここは?』


「わからない。急に、ここ来た」


『さすが、もふさまですね、私を通さずにサブルームに行かれるとは』


 モニターのハウスさんが目を見開いている。こちらのことが見えているようだ。


「サブルーム?」


 父さまが聞きとがめた。


『ハウスよ、説明しろ。リディアたちをどうしてここに転移させた?』


 強い調子で言ったが、ひよひよひよひよ、ひよこちゃんたちがもふさまの上に乗っかろうとしていて、緊迫感はない。

 ハウスさんはハッとしたような顔をする。


『失礼しました。前マスターは説明はいいから行動に移せとおっしゃられていたので、つい転移を先にしてしまいました』


 丁寧に頭を下げる。


『そちらは前マスターがよく行かれたところに通じる、サブルームです』


 わたしは攻略ノートを読み、そこに書かれていたダンジョンを知りたくて、ハウスさんに尋ねたんだと、もふさまに話した。ハウスさんはダンジョンのことは知らなかったが、前マスターである魔使いさんがよく行く場所に心当たりがあった。それがこの〝サブルーム〟だったみたいで、わたしたちを転移させたのだと。


 もふさまは、わたしが帰ってきた気配がしたけれど、ひよこちゃんたちに暖をとられているため立ち上がることができず、部屋で待っていたようだ。気配が動き、メインルームに行ったのだと思った次の瞬間、わたしの気配が消えた。もふさまはわたしを追いかけて、このサブルームにきてくれたようだ、ひよこつきで。メインハウスが驚くような魔力の使い方をしたみたい。


『アオ、いるのでしょう? ご挨拶しなさい。現・マスター、リディアに』

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