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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
18章 権威に群がる者たちの輪舞曲
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第1091話 駒にされた子供たち⑨自業自得

 メイドはベッドに向かわなかった。

 こちらにお尻を突き出して、机の上を見ている。

 引き出しを開けた。


 え? 


 ブライが何か持ってきてって頼んだのかな?

 いや、部屋にはわたしと、今はいないけどもふさまもいたわけだから、人を呼び込むことはしないはず。


 メイドは最初は恐る恐るだったけど、だんだん大胆に引き出しの中をあさり出した。

 目標物を探しているというよりは手当たり次第、手がかりはないかと漁っているような乱雑さがある。


 これって探ってるんだよね。これ敵の一味かも。見つかったらまずいやつだ!

 って誰もトカゲがわたしだとは思わないはずだけど。

 わたしはカーテンから顔を出して、メイドの奇行を見守った。




 メイドが部屋から出て行き、しばらくしてからブライともふさまが戻ってきた。

 ブライはシャワーを浴びてきたようで、上半身は服を着ないで、首にタオルをかけている。引き締まって割れた腹筋を惜しみなく見せていた。


「ちょっと、レディーの前なのよ、服を着なさいよ」


 ピーピー騒ぐわたしが哀れだと思ったのか、もふさまが魔具を使ってブライに伝えてくれた。


「レディーってどこにいんだよ?」


 と、わたしの鼻を人差し指で突っつく。


「自業自得ね」


 わたしがため息をつくと、もふさまはそれも通訳してくれたので、ブライは首を傾げている。


「普段からそうやって裸で歩き回っているの?」


 しかも今はまだ冬なのに。


「人聞きの悪いこと言うなよ。俺が裸で歩くのが好きな変態みたいに聞こえるじゃんか」


「あら、違うの?」


「突っかかるなよ。あ、腹減ったのか。それは悪かった」


「お腹は減ったけど、そうじゃなくて! ブライたちがいない間に」


 メイドがブライの部屋を漁っていたと教えようとしたのに、今すぐ運んでくると部屋を出て行ってしまった。

 あ、ご飯なら果物をとリクエストできなかった。

 それ以外は食べるのがとても大変なのだ。

 ある程度小さく切り分けてもらっても、そこから噛るのが大変。

 ハンナはよくわかってくれて、なんでもみじん切りにしてくれるんだけど。


『我らがいない間に何かあったのか?』


 毛繕いをしているもふさまに頷く。


「そうなの! メイドが来てね、机とか引き出しの中とか物色してた」


『なんと! 騎士団長の屋敷と聞いたが、そんな者を雇っておるのか』


「事情はわからないけど……」


 と、勢いよくドアが開く。

 大きなお盆に山ほど食べ物を載せている。

 両手が塞がっているから、足でドアを開けたんだろう。


「朝飯持ってきたぞ」


 ブライは床の上にお盆を置く。ひとつの丼にはお肉がマウンテンとなっていた。もふさまの目が輝く。甘辛いタレで絡めてあるのか、いい匂いだ。それと水。それから3斤はありそうなパンの塊に、お皿にはハム山盛りと葉っぱ野菜がこんもりと。蒸した芋も3つある。それからミルクの瓶に、コップがひとつと、小皿がふたつ。

 ひとつにミルクを注いでくれる。

 おお、喉が渇いてたんだ。


「パンはどれくらい食う?」


 ブライは1斤分のパンを割って、わたしに見せた。

 もしかして、それ全部食べるとか思ってる? わたしの体より大きいよね。

 トカゲ化したわたしが5×5は入りそうだ。


 わたしは両手でこれぐらいと示した。


「それしか食わねーのか。そっか。体小さいもんな」


 そう言って、人型の一口分ぐらい、パンの柔らかいところをむしり取ってくれた。それをもう一つの小皿に置き、ハムもパンの半分ぐらい、葉っぱ野菜は少し多めに取り分けてくれた。


 わーい、ご飯だ。


 ブライは1斤のパンの半分ぐらいのところで少し割って、ハムと野菜を挟み、大きな口を開けてアムっと食べる。豪快!

 わたしはお行儀が悪いけど、お皿の半分ぐらいまで身を乗り出して、ミルクをペロペロする。それからしゃりしゃりと葉っぱ野菜をいただく。ハムは顔の半分の大きさはある。カジカジしていくしかないので、時間がかかってしまう。おいしいハムだ。しばらく私たちは食事に集中した。

 ブライは、パンを1斤ずつハムと野菜を挟んで食べる。大きく口を開け、4口で食べ終わる。吸い込まれるようにパンが消えていき、見ていて気持ちがいい。


「さて、腹がいっぱいになったところで、説明に入るか」


 とブライが言った。


「その前に。ブライ、朝練中にメイドが入ってきたよ」


 もふさまに通訳してもらう。


「ん? たまにしか帰ってこないし、掃除は自分でやるからいいって言ってあるのに」


 とベッドを見て、少し変な顔をする。そりゃそうだろう、ベッドメイクされてないもんね。


「机とか、引き出しの中漁ってた」


 ブライの表情が固まる。


「最後に、ブライの枕抱きしめてた」


 ブライは身震いしてから両腕を擦った。


「マジか!?」


「マジ」


 額を押さえて、悩んでいる。

 メイドにふさわしくない人が、エイウッド家に入り込んでいるのは間違いない。

 このタイミングでブライの部屋を荒らしたということは、わたしの失踪にブライが加担しているかと探りが入ったと、わたしと同じように最初は思っただろう。

 けれど、最後の枕を抱きしめたことで別の意味合いも出てくる。


「無駄に筋肉見せてるから、そんなことが起こるんだよ」


 ブライはジトっとわたしを見て、ため息をついた。


「厄介だけど、それは後で調べる。

 それより、これからのことを話しておくな。リディア嬢に危険が及びそうになったらの案で、まだ大詰めまでできてなかったんだ。それが昨日急遽行動に移すことになったから、とりあえず俺んちきてもらったんだけど、今朝方針がはっきりした」


 警備の目が厳しいはずの王宮で、ことが起きそうになってるわけだから、ブレーンたちも慌てたってことか。


「あ、ロサ殿下から伝言。セローリア嬢には話を共有するってよ」


 問題ないので、うんとうなずく。

 なんかまだ見られているので、何か言いたいことがあるのかなとじっと見ていると。


「リディア嬢が体調が悪くなってロサ殿下を呼び出しただろ? あれが城中に噂で流れたみたいだ」


 一瞬、意味がわからなかった。

 あの時、わたしは自分の手で負えない事態になったので、ロサに頼った。でも周りはそんな内情はわからない。

 外側から見えることは、お城滞在中に体調が悪くなったわたしは、第二王子殿下を呼び出した。他の王族と一緒にいたのに。……そしてロサも呼ばれてすぐに来てくれた。

 婚約者のいる殿下を、ああ、そうね、わたし呼び出したんだわ。

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― 新着の感想 ―
騎士団長家にこんな堂々としたスパイ?がいるのやばくない? ただのストーカーならたまにしか帰ってこないんだからいない時に漁れば良いだろうにこのタイミングなのは怪しいなぁ… ストーカー的に新鮮な臭いが良か…
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