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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
18章 権威に群がる者たちの輪舞曲
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第1082話 真っ直ぐな子供たち⑬種をまく

「具体的にはどうする?」


 切り替えが早いところも助かる。


「うちの班で怪しいのはスタンガン君とロイター嬢と思っている。その他2年生で誰か怪しいと思う子いる?」


「ギド・ガラットーニ」


 腕を組んだままブライが言った。

 イザークと同じ藍色の髪の子ね。はかなげ風な男の子。

 星読みの家系だったっけ?


「エトワール嬢とノエルをすっごく気にしてたんだよな。なんでもできるのに、力を押さえてる印象で、そつなくこなすけど本気じゃない感じ。でもあいつが殿下を迎えにいって一晩泊まってみんなと一緒にいたってのも、なんだか嘘くさい気がして。勘だけど」


 あと、特に気に掛かる子はいないみたいだ。


「3人を呼び出して話をするのか?」


「いいえ、そうだなブライはガラットーニくんにわたしとリノさまが対立して、第二夫人に助けを求めるつもりらしいってなことを彼に直接いうんじゃなくて聞かせて欲しいの」


 ブライはちょっとあさっての方を見てから、「わかった」と頷く。


「アダムはスタンガンくんにわたしが明後日城に行くようだってことを伝えて欲しい。アダムもわたしの目的は知らないこととして」


「……ああ」


「わたしがロイター嬢に伝えると警戒しそうなのよねー」


「それならダニエルがいいんじゃないか? アダムに言っておいてくれとロイター嬢に伝える」


 おお、ナイスアイデア!


「ダニエル、お願い。ロイター嬢に何がいいかしら、わたしの弱点になるようなこと……」


「わかったよ、君の弱点にふさわしいことをロイター嬢の耳に入れておく」


 未来の宰相であるダニエルが考えてくれるなら安心ね。


「どの話が黒幕に知らされるかで、騙されているヤツがわかるってことだね」


 そう笑ったルシオにわたしは頷く。


「で、2日後、君は何をしに城に行くんだい?」


「リノさまとお茶をしようと思って」


 公爵さまがリノさまに状況を話したかわからないけど、突然現れたロサに助けられたことで感づいているはず。不安に思ってるよね。


「当面の予定はたったな。それじゃあ私は弟と2年生を迎えにいってくる。みんなは授業を受けてくれ」


 ロサはダニエルと迎えに行くと決めていたようだ。

 そこでわたしたちは解散した。




 種を撒き、明後日の休息日でターゲットとなった子供が釣れるかもしれない。

 あとできることはヒアリング。

 騎士に捕らえられた人たちからの聞き込みで、何かわかったかな?


 ロクスバーク商会。第四夫人が懇意にしていた商会。けれど、元々は第二夫人が紹介したところだという。ロサのお母さん、バンプー殿下のお母さんがかかわっていないといいけれど。

 つまりロクスバーク商会から何か出てきたか。

 ミューエ家から何か出たか。


 そしてもうひとつ。《《何か》》の黒幕、こんだけいろいろしてきて、わたしに精神的苦痛を与えるだけなんて甘すぎる。邪魔になったセローリア家に違法物を持っていたと取り除こうとした。ドラゴンにドラゴンの卵、これは取り寄せるにもとにかくお金がかかったはず。資金源はあるということだ。そんな人たちが目指す巨悪とするわたしに精神的なものだけで満足するわけない。

 物理的にも、もう終わりとなるようなことを用意しているはず。


「アダム」


 隣を歩くアダムに話しかける。


「ん?」


「ロクスバーク商会はなんて言ってるの?」


「濡れ衣だ。陥れられたと騒いでる」


 まあ、そうだろうね。


「リノさまを狙った外国人は何も話してないんだよね?」


「ああ、そう聞いた」


「もし、彼らのすることが成功していたらどうなったと思う?」


 アダムは横のわたしをチラリと見る。


「セローリア嬢は怪我を負っていた。あそこの階段緩く見えるけど、下まで転げ落ちたら割とひどい怪我となったと思う。彼女はかかとの高い靴だったし。そうならなくてよかった」


 ひどい怪我を負ったってことね。


「公爵家の方は?」


「奴隷にドラゴン。世界議会案件になるね。セローリア家の荷だったということになれば、家は取り潰し。セローリア嬢との婚約も白紙に戻るね。公爵さまは良くて一生幽閉」


「そんなあくどいことを考える人が、わたしに精神的苦痛で済ますなんてあり得ないと思うんだ」


 アダムが唇を噛みしめてた。やっぱりそう思ってたんだ。

 でも言わなかったのは、わたし無駄に怖がらせないために口を閉ざした。


「もふさま、ドラゴンは眠らされている状態だったんだよね。どれくらいで起きるだろう?」


『それはわからない。強力な何かで眠らされていると思うが』


「銀龍の卵は、銀龍のところに戻すのかな?」


 アダムに尋ねる。


「そうしたほうがいいだろうね。銀龍が世界を壊さないうちに」


「ユオブリアだけの特別なことってなんだろう?」


「特別なこと?」


「そう。魔法だか瘴気だかわからないけど、ユオブリアだとわかると魔法は解けるようなこと」


 アダムは一瞬考えてわたしが言いたいことを理解したみたいだ。

 手を額にやる。


「それができたら被害は甚大。そしてユオブリアがめちゃくちゃになったあと、集会の主張が真実味を帯びる……」


 ひとつの仮説だ。

 もっと他に何か考えられているかもしれないから、警戒はすべきだけど。

 ドラゴンは国を潰せるぐらいの力を持つ。

 だからドラゴンに手を出すのはアウト。

 この世界の約束事。

 それを幼体といえども2頭。そして卵が5つ。

 銀龍以外どこから取ってきたのかわからないけど。

 ひとつは銀龍で、怒り狂っている。

 親がユオブリアに卵があると気づいたら、ユオブリアを破壊しに来るだろう。

 幼体は眠らされている。その魔法?はいつ解かれるんだろう?

 ユオブリアに感知して解けるとしたら……。

 幼体でもドラゴンは暴れるだろうし、親が卵を取ったのはユオブリアだと思えばユオブリアを破壊するだろう、一瞬で。


「聖女」


「え?」


「現在、ユオブリアにしかないものは聖女だ」


 アイリス嬢の何か……。


「陛下に伝える。魔法士長に眠らせたままにするよう、なんとか手を考えてもらおう」


 アダムが早足でわたしを教室に入れ、そして用事を片付けてくると教室から出ていった。

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