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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
3章 弱さと強さと冬ごもり
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第108話 シュタイン領の一歩目(前編)

 父さまにおいでをされて、父さまの膝の上におさまる。ひよこちゃんは後で存分に愛でよう。


「売りたいもの、いっぱいあります。売れるもの、どうなのか、わかりません。それ教えて欲しい、と。理由あって、2年利益倍、次から前の年より利益上しないと、です。それも、覚えておいてもらえるといいです」


 みんなで相談した結果、ある程度のことはホリーさんにはバラすことに決めていた。

 商売においてスペシャリストだから、初心者のわたしたちより、よっぽどわかっているはずだからね。


 グッドなタイミングで、ピドリナさんが紅茶を持ってきてくれた。ロサがくれたやつだ。

 ホリーさんとハリーさんは微妙な表情で黙ってカップに手を伸ばし、一口含む。


「……紅茶、ですね」


「南のレミゼト王国の最高級のものだ」


 ホリーさんは額を押さえた。


「私でよろしいのですか?」


 顔をあげ、とても真剣な顔でホリーさんが言った。


「私は支部長です。……うちの商会にはもっと上のものがいっぱいいます。ご紹介することもできます」


 そう付け足した。


「わたし、ホリーさんがいい」


「娘のいうとおり、私たち一家はあなたに知恵を貸してほしいと思っています」


 ホリーさんが一瞬うつむく。そして顔をあげた。


「精一杯、努めさせていただきます」


 わたしは振り返って父さまと顔を見合わせた。

 よかった。紅茶を出すだけで、ホリーさんたちは王族が関係しているとすぐにわかったんだ。拒否られる可能性もあったけれど、ホリーさんはわたしたちの手をとってくれた! 

 紅茶自体は価格は高いが売っていないわけでもない。ただロサからもらった紅茶は相当いいものだとピドリナさんが言って、アルノルトさんがホリーさんにこれを出せばきっと気づくと思うと教えてくれたのだ。ある程度バラすと決めたけれど、取引のことはロサが秘密と言うから、詳しくは言えない縛りがあり、どうすればいいか悩んでいた。でも彼らは極上の紅茶がどういった意味のものかを察し、目標を言っただけで、納得し多くも聞かないでくれる。



 それから夕方まで、売りたいと思うものを、どんどん見てもらった。


 目玉の〝鞄〟はどれも売れるとのことだった。ただ、客層を絞り、それぞれ客層に合わせた商品にする必要があるので、こちらは本格的に売り出すのは夏前ぐらいになりそうだ。それまでいくつも詰めることができた。冬ごもり中は見せたりすることができないから、滞るのは仕方ない。


 領地のお母さんたちが作った、手袋や帽子、腹巻や編んだパンツは即買いしてくれた。母さまはどれをいくらで買ってもらったかを書き留めている。

 そして雪が降る前にもう一度馬車を寄越すから、それまでに商品を追加することは可能か聞かれて、母さまはゆったりと頷いた。


 わたしはリンスの説明をして、お風呂の時に使ってくれるように頼んだ。

 お風呂で使ったリンスは、素晴らしすぎると大絶賛。自分も買うから、ぜひほしいと言ってくれる。ただ量は作れないと言っておく。ブンブンの巣が大量にあるわけではないからね。

 匂いをつけたのも喜ばれ、さらにあの石鹸もすっごくいいという。

 あれは最初から作ったわけでなく、ただハーブを足しただけだというと驚かれた。そしてちょっと何か考えていた。



 海の魚とお肉、どちらが食べたいか聞いたところ。声を揃えてお魚とのことなので、頑張ったよ。

 お刺身は少なめにしておいた。生は抵抗あるかもしれないからね。その代わり手をかけて、塩をして昆布じめしてみた。ねっとりと旨味がましておいしいと思うんだ。

 カマの塩焼き。帆立のバター焼き。ほっこりするカボッチャの煮物。何種類ものキノコと小さな海老、白身魚と出汁で作った土瓶蒸しを真似たスープ。大きなエビは上に味噌で作ったソースを塗ってこれでもかってほどチーズをのせた。

 海藻サラダは海ブドウを散らした。食感を楽しんでほしい。

 炊き立ての炊き込みご飯。ゴボーとニンジ、出汁になる帆立を小さく切って。


 例のごとくわたしのお手伝いはちょっぴりだが、ピドリナさんがどれもおいしく仕上げてくれる。

 昆布じめはねっとり旨味がたまらないね。これに醤油をちょんとつけるとまろやかな甘みを堪能できる。カマの塩焼き、お行儀悪いけどほじるようにしていただく。わたしは頬のところをごっそりいただいた。目に痛いぐらいの真っ白の引き締まった身がとてもおいしい。プリップリの大きな帆立の上でバターが踊り、お醤油で味が際立つ。キノコと海のもので作ったスープはスダチに似た果実をキュッと絞る。あー、おいしい。体中に沁み渡っていくようで、しみじみとおいしい! 大きなプリプリの海老にはたんまりチーズが。おいしくないはずがない! サラダももりっと食べてもらえた。ピドリナさん特製のドレッシングがこれまたあとを引くのだ。そこまででもお腹がいっぱいになっていたけれど、炊き込みご飯は格別なおいしさで、手を出してしまう。

 ハリーさんとホリーさんも顔をゆるっとさせていっぱい食べてくれたし、満足げで、とても嬉しい。

 兄さまたちも初めての炊き込みご飯におかわりがとまらなかった。


 食後のお茶でお腹を落ち着かせていると、料理とお菓子は売り出さないのかを聞かれた。大量に作るのはピドリナさんに負担がいきすぎるのだと話した。

 すると、レシピを売るのはどうだと言われた。

 特許みたいな感じで登録して、そのレシピを売ることができる。作った人が自分で食べるか、作ったものを売ってもいいかは、選べるそうだ。売ってもいい場合は金額を高くできるわけだ。

 レシピを売ると、その代金、作ったものを売った時の何割とか、そして商業ギルドに取引代行代を引かれたものが月一で入ってくるようにすることもできるらしい。不労所得だ。それ、いいね。

 ピドリナさんにカフェでもレストランでもお店を持ってみたいのか聞いてみたら、やるのも面白そうだとは思うけれど、自分が頭に立ってやる気はないとのことだ。それならレシピを売るのもいいね。

 レシピ登録などはイダボアの商業ギルドに行く必要があるため、そちらも春になってから始動させることにした。


 とりあえず、帽子や手袋などフォバルの毛糸で作ったものを売るだけでも違うから。そしてリンスはホリーさん持ち帰り案件となった。

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