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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
18章 権威に群がる者たちの輪舞曲
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第1075話 真っ直ぐな子供たち⑥ロードショー(中編)

 褒賞会っていうのもわたしは初めて聞いた。

 年度末に、今年1年で国に貢献した人を讃えるらしい。

 主導は王妃さまとなる。元王妃さまが寝込まれてからは第二夫人が毎年やってきたことだそう。


 でもさ、国に貢献したというのなら、褒めるの陛下でよくない?と思わず思ってしまって言ってみたら、苦い顔して教えてくれた。


 陛下が褒めるとなると……世の中にはいろんな考えがあるそうだ。

 陛下が褒めるようなことなら、それなりの対価があるべきという人もあれば、君主に言葉をもらえればそれだけでありがたいことではないかという意見もある。自分が信じていることがあるわけだから、陛下のなさることが同じでも、信じている向きで尊きことと卑しいことを民衆に同時に抱かせることになる。

 ぶっちゃけると。

 王様から金品もらったぜ! 周り:いいな。王様って神のような存在なんだからさ、言葉で十分じゃね?

 王様から言葉もらったぜ! 周り:嬉しいけど、ケチ臭くない? そんなの腹の足しにもならなくね?

 なんにしても文句としか思えないような評価がされ、もらった人も傷になるくらい嫌なこととなったそうだ。

 そんな山あり谷ありがあり、結局、国母である王妃さまと会うことができて言葉もかけてもらえる褒美ということで落ち着いていったという。

 王なら尊かったり卑しかったりすることが、王妃となると違うのかって疑問も出るけれど、なんというか、みんな〝母〟には弱いようだ。本当不思議なんだけど、王は国の〝父〟とは思いにくく、どちらかというと〝神〟寄り。王妃は国母であり、民衆を慈しむ存在。だからって廃妃となるようなことをしたら別だけど。

 なんというか国母からだと、たとえ言葉をかけるだけだとしても、民衆をみていてくださる。ありがたや〜となるらしい。

 さっぱりわからんけど。母からもらうものは、なんであれ嬉しいようだ。

 本当不思議だよね。そして当事者より周りがそういう風習を作っていく。


 国の貢献度という点があやふやで、そう落ち着いていったのかもしれないね。

 誰もが認めざるを得ないちゃんとした功績だったら、認められた時点で陛下が国からの恩賞や褒美を出すもんね。


 空からの視点で展開するカメラワーク。

 登頂口に裏から駆け上がっているロサたちが見えた。

 下の方に並んでいる、褒賞者や来賓の人たちも見える。

 褒賞者は一様に緊張している。

 ロサが一番上にたどり着いた時、ステージにクローズアップ。第二夫人は奥に見えた自分の息子に驚いたようで目を大きくした。

 第二夫人の驚きに呼応して、リノさまも目を見開く。

 とカメラワークがまた全体を映し出し。


 あれ、来賓の座っている人たち。その一番後ろの人が椅子の後ろを気にしてから、手だけ後ろにして指を振っている。

 黒い何かが登場口目掛けて飛んで行き、リノさまの足元に!

 足を救い上げたような動きをし、リノさまがバランスを崩しそうになった。

 その細いウエストにがっしり腕を絡めて引き寄せたのはロサ。

 秘密基地から全速力で走ったのだろう。いつも涼しげな出立(いでたち)のロサが顔に汗をかいている。そしてリノさまを抱き込んだまま座り込んだ。


 指を動かしていた男はスッと手を膝の上に戻す。

 会場はざわめきだす。「なんだ?」「何かあったのか?」とざわざわにしてる。

 始まるのは今かって時に急に王子殿下がやってきて、アシスタントのリノさまを抱きしめて崩れるように座ったんだものね。

 何かのパフォーマンスにも見えないし。

 カメラが舞台上に寄った。


「何事か?」


 第二夫人はロサに静かに尋ねた。

 拡張機機能でもあるのか、第二夫人の声は下まで届いただろう。声を張り上げているわけでもないのに。みんなシンとした。


「何が起こったかはこれから釈明していくとして。

 城内で魔法を使った者がいる。名乗りでよ」


 会場はしずまりかえった。


「ブレド殿下」


 リノさまが恥ずかしそうにロサの名を呼ぶ。

 ロサは冷静に見えるけどテンパってたんだね。ずっとリノさまを抱きしめていたことに気づき、起き上がり、リノさまを開放した。


「イザーク、捕縛せよ」


「ハッ」


 イザークが胸に手を当て、そして会場を一瞥。手を振ったと思ったら、網のような何かが空中に撒かれ、それはただ一人、来賓席の後ろの手を動かした男のところにゆき、椅子ごと縛り上げた。


「な、なんだこれは!」


 大声を出す、来賓席の男。


「なぜ、名乗り出ない?」


 ロサが非常に怖い顔で男に尋ねた。


「な、何をおっしゃっているのか」


「魔法残滓を調べた。お前に残っている」


 イザークが冷たく理由を告げる。


「な、何かの間違いだ!」


「私が間違えることがあっても、魔力は誤魔化すことはできない」


 騎士たちが駆けつけてきて、下の方でロサに向かい胸に手をやる。


「その者を運べ」


 騎士たちは胸の前で拳を反対の手に打ち付け、了解の合図をして、男を囲む。

 アラ兄が動いてルシオに何やら耳打ち。

 ルシオが指を口にやり、ぴーっと澄んだ音が響く。

 男が気を失い、その3つ隣の細い男性もなぜか倒れた。


「その人も捕縛してください」


 ダニエルが冷静に言う。

 イザークが魔力を解くと、椅子の上から崩れて地面に倒れた。

 騎士たちはふたりの男を捕縛して、連れて行った。


「皆、邪魔をした。ユオブリアのために尽くしてくれたこと、王族の一員として嬉しく思っている。誇ってくれ」


 そして夫人に向き合う。


「母上、邪魔をして申し訳ありません。続けてください」


 ロサは夫人とリノさま、それから会場の人たちに礼をして、後ろの階段から消えていく。

 夫人は会場にとっておきの笑顔を向け、何事もなかったかのように儀式を始めた。

 そこで映像は終わる。


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― 新着の感想 ―
陛下、『神』寄りにしては舐められてるのかってくらい言うこと聞いてもらえてないけど、神が地上から居なくなって神への畏れを忘れて久しいから陛下も軽く見られてるんだろうか… こっちは間一髪だったなぁ… イ…
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