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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
18章 権威に群がる者たちの輪舞曲
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第1058話 放課後の影絵⑯ばらまき

「父さま、媒体を利用して、シナリオを本当にあったことだと思い込ませるようなスキルや魔法って聞いたことある?」


 わたしが尋ねると、兄さまが息をのんだ。


「もしかして一連のことは……」


 わたしは重たく頷く。

 わからないけど、そうだとするとピタッとハマるのよね。


「どういうことだ?」


 父さまの目が鋭くなる。


「レヴィ嬢が思い込みだった話を聞いたときに思ったの。それは彼女の妄想とか病気ではなくて、誰かにそう思いこまされたんじゃないかって」


「思いこまされた?」


 わたしは頷く。


「その他のリノさまを慕う子たちもわたしは知らない子だった。それなのに、わたしが何かしたと思ってる。

 集会の告白するのに演技をする人に選んだところでおかしいと思ったのよね。

 なぜ雇ったんだと思う?」


 父さまは顎を触った。


「いくつか考えられるが、雇って演技させれば、思うように話を持っていくことができる」


 わたしもそう思ったと父さまに頷く。


「それにネタ不足。集会で演説して引き込めるような話を持つ人がいないから。

 シナリオがあれば自由なキーワードを入れられる。たとえばシュタイン領にひどい目に遭わされたというようなね。

 そう思ったときに、今までよくもまぁ、ウチに何かされた人が都合よく集まったものだと思ったのよ。そういう人を見つけ出してかき集めたのかって。

 でも考えてみると、ウチは父さまが領主になってから10年、おじいさまが拝命してからを足してもそこまで古くない。その年数でそこまでいろんな人に影響を与えるぐらいのことができるもの? しかも近隣のモロールやイダボアに何か言われるならともかく、ここは王都よ?

 だからシュタイン家に何かされたっていうのは後づけなんじゃないかって思ったの。最初はグレーン酒で何か悪さをしたんじゃないかと思ったけど、何も入ってなかった。けど、花は何かありそう。

 この集会ではいろいろばらまいているでしょ。それも引っかかっていたのよ。

 わかっていることは少ないけど、〝精神体に攻撃〟できる何かを持つ人がいるのは間違いないと思う」


 と、足が震えてきた。

 少しの間立っていただけなのに。

 控えていたハンナが労ってくれる。


「お嬢さま、さぁ中に入って座りましょう。お飲み物をお持ちします。何がよろしいですか?」


「グレーンのジュースをお願い。兄さまの農場のを」


「かしこまりました」


 父さまがわたしを抱えてソファーに座らせてくれた。

 その横に母さまが座りこむ。


「何か食べられそう?」


 母さまに尋ねられて、お腹が減っていることに気づく。

 そうだ、朝も昼も食べてないのだ。


「母さま、サンドイッチみたいなものが食べたい」


「すぐに作るわ」


 母さまが立ち上がり、スカートの裾がひるがえる。

 アリを乗せたもふさまが横に座った。


「もふさまもアリもお腹は?」


『フランツが用意してくれて馳走になった。サンドイッチぐらいならいくらでも入るぞ』


 そうだろうとは思っていたけど、ふたりともちゃんと食べさせてもらっていてよかった。


「リディー、先ほどの続き、話せるか?」


 わたしは父さまに頷く。


「レヴィ家や他の子たちに、そういうただでもらったとかばらまかれたものを手にしたことがなかったか調べても良さそうだね」


 あーだこーだ話しているうちに、ハンナがグレーンのジュースを持ってきてくれた。食事はもうすぐ運んでくれるという。


「リディー、寮で見たその花はどこに飾られていた?」


「5階の飾り棚と、食堂に入る前のところ」


「そう。リディーは食事をしっかり取って。父さま、少しよろしいですか?」


「……ああ」


 入れ替わるように母さまとハンナがサンドイッチ山盛りと、スープとサラダを持ってきてくれた。

 隣に母さまが座って、わたしたちに取り分けてくれる。

 もふさまもアリもお行儀良く食べた。

 わたしもしっかり食べた。食べたらまた眠くなってきて部屋で休ませてもらうことにした。


 わたしはこのとき頭がまったく働いてなかったと後から思った。

 尻尾切りの後はどうしてもこうなる。今回はそれからまたすぐに人型へと変化したから余計にかもしれない。

 次の日目が覚めたときには、いろんなことが起こって解決された後だった。



 そう目が覚めて、ダンスは出来なさそうだけど、普通に動けるぐらいには回復していた。けれど、父さまから今日は学園を休むように、学園には連絡済みとアルノルト経由できいた。父さま、母さま、ハンナはいなくて、デルとヘリが甲斐甲斐しく働いていた。


 わたしがヘリに飾ってあった野の花はどこで誰にもらったのか尋ねると、やっぱり何かあったのですか?と眉をひそめた。

 昨日の夕方アルノルトが赴いてすでに尋ねたらしい。それはしまったと思って

「気の利いたことをするなーと思って。もうアルノルトが聞いてくれたのね」と濁す。


 ヘリは安堵したようで、昨日アルノルトに告げた同じことを話してくれた。

 あの花束は市場で配っていた。セレクタ商会は王都に進出してきたばかりの商会で、名前を覚えてもらうために、週に一度はこのばらまきをしているという。

 アルノルトから怪しげなものには手を出さないと言われていたので、いつも断っていたけれど、興味はあり。

 今回は商売色の見えない素朴な可愛らしい花束だったので、思わずもらってしまったんだと言った。

 セレクタ商会って、一番最初の集会の……。


 昨日アルノルトが聞きに行ったということはすでに父さまはご存知で、……兄さまもご存知だろう。セレクタ商会の名前は知っているはずだから……。

 とまで思って気づく。


 わからないけど、わたしはあの花束に何かあると思った。

 っていうか、わたしがトカゲとなった尻尾切りした精神体への攻撃はあの花が関係していると思った。

 狙いはわたしだったの? 寮には5階と食堂の前で見かけた。

 わたしって限定だったらいいけど、ばらまいたのと同じように狙われたのが不特定多数だったら? 誰でもよかったら?

 寮のみんな……、わたしみたいに尻尾切りのスキルがなければ、精神体の攻撃を受けるんじゃない? そしてレヴィ嬢みたいに、何かあったと思い込まされたりしちゃうんじゃない??

 


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― 新着の感想 ―
寮は聖樹さまの加護範囲外だし先生もすぐ来れないからレヴィ嬢のような事が起きたらヤバそう。 花を飾るだけで良いならリディアの愛するものを奪っていくのは簡単に出来そうだよね。 きっと香水でも効果あるんだろ…
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