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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
18章 権威に群がる者たちの輪舞曲
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第1049話 放課後の影絵⑦我が友は

 いやいやいや、そんなきれいな〝思い〟ではない。

 実際、首謀者が本当に鵜呑みにしてわたしを巻き込んだのなら、……その時の気持ちでわたしだって怒ったりなんだりするかもしれない。

 ただ、今はわかっていないことが多いから、今の時点ではそうとしか言えないというだけ。


 第二夫人はわたしを優しく離して立ち上がる。

 そしてリノさまに手を伸ばした。


「ブレドの味方でいてくれてありがとう。妾のしたことで、公爵令嬢の未来を困難なものにしてしまったのに。可愛い子」


 リノさまをギュッと抱きしめる。


「妃殿下!」


 リノさまが声をあげた。

 ロサが寄り添って第二夫人を支える。

 夫人がふらついたみたいだ。顔色が悪い。

 陛下も立ち上がり夫人を支えた。


「夫人、休みなさい」


 陛下の優しい声。ドアの前には夫人の侍女たちが待機していたようだ。

 リノさまとロサが支えドアまで送り、ロサはリノさまに夫人をお願いできるかと声をかけた。信頼しあっているのが伝わってくる。

 夫人とリノさまを見送り、ロサが戻ってきた。


「余は元王妃の残した言葉で、王妃がシュタイン家に何かしたのを知った」


 あ、そうかと思い当たる。

 アダムもロサも、賢い人たちというのは、人のいうことを鵜呑みにはしない。

 いくつかの方向から物事を照らし合わせ、初めて〝出来事〟と認識する。

 5歳の時、そんなことは考えなかったけど。

 父さまが陛下に密約を取りつけたこと、よく陛下が納得されたなと後から思った。

 アダムやロサだって他方向から調べ上げるのだ。


 そりゃ、裁判記録で元王妃さまのご実家の近くの街の名前が残され、呪術師の隠れ里がありそうって思ったり、王妃さまが関係してそうと勘繰ったり、そう思いたい人がいればいるだけ話は転がっていくことではある。

 けれど、噂の域を出ない。それなのに王妃さまがシュタイン家に何かをしたって、なぜ簡単に信じたのだろう?

 アダムが疑い深いっていうか、多角的にみる人だったから、陛下はきっともっとそうだと思った。その時の父さまの話だけじゃ弱いはずなのに、よく父さまの意見が通ったなと思えた。

 でも、これで合点がいく。


 王妃さまのその言葉を聞いていた。王妃さまがシュタイン家に何かをしたけれど、思い通りにならなかったと口にした。だから、陛下は父さまから話があった時、情報が合致して取引にのったんだ。事実と認識したんだ。


「双方おさまったかのように見えたが……10年経ち、それはまた向き合うべきことだと浮上してきた」


 陛下が立ち上がる。そしてわたしに向きを合わせ、胸に手をやり頭を下げた。


「リディア・シュタイン嬢には、幼い時から王室のことで迷惑をかけてきた。申し訳なく思う」


 わたしは思わず立ち上がったけれど、なんて言えばいいのか言葉が見つからなかった。


「シュタイン家を巻き込んだことを含めて、全てを詳らかにすると誓う」


 ロサも胸に手をやり、わたしに頭を下げた。

 え? アダムまで。なにも言わず。

 え、ええ?

 そこにいた全員が胸に手をやり、わたしへと誓いを立てる。


『我が友はかっこいいな』


 もふさまがわたしを見上げる。

 深い森の色の瞳がキラキラして見えた。

 わたしは言葉が見つからなかったけれど、わたしも胸に手をやり、皆さまの誓いを受けた。

 こんな人たちを前に、わたしはなにを躊躇(ちゅうちょ)していたんだろう……。


「もうひとつ、話しておきたいことがある」


 陛下がおっしゃると、ロサとアダムが顔をあげた。二人は聞いていたことっぽい。


「バッカス関連のことだ。……今回のこともバッカスも関係しているかもしれない。王族の中に、裏切り者がいるようだ」


 え?


「リディア嬢、君が記憶を失った時の名前、それは組織からそう呼ばれたんだよね?」


 ロサに確かめられる。

 そりゃそうだ。わたしは自分の名前も忘れたんだもの。

 組織の中で〝トスカ〟と呼ばれていた。親に置き去りにされた魔力のない哀れな子として。


「トスカはバンプーの名前と同じ」


 だから?


「トスカは女性に適した呼び名。200年ぐらい前の王族で勇ましい姫がいた。第四夫人が陛下に願ったんだよ」


 そうだったんだ。女性名、男性名って概念あったのか。気にしたことなかった。女性の名って区別があると知ったのも初めてだし、王族でその名前のお姫さまがいたのも初耳だ。


「第四夫人は星見に詳しく、女性名を入れるとバンプーの運勢が良くなると信じていた。存在が〝中庸〟になり、負の星周りの影響を受けにくくなるとおっしゃったそうだ」


 へー、中庸の考えをお持ちなんだ、第四夫人は。

 星見は(そら)の動きに合わせた行動をすると、宙に後押しされ発展しやすいというところからきている。

 占星術は星の軌道を測り、過去にあった事実を照らし合わせ、未来に役立てる学問で。星見はそこから派生したもの。人、個人に焦点を当てていく。


 どういう使われ方をするかというと。

 占星術でこういう星周りの時は、雨があまり降らない。雨が少なくても育つ農作物を多く育てる。

 この星周りで、災害が多かった。災害に備える。

 星見では個人の生まれた時のネイタルチャートをよんでいく。

 星周りを人の一生に置き換える。

 占星術では対策を考えるためで、星見では星周りに何かを足して軌道を変えることを考える。

 たとえば前世でいう流し雛のように、代わりを作り、それに負をおってもらう、とか。

 たとえば結婚して、パートナーの星周りで相殺する、とか。

 たとえば名で、運を変える、とか。

 星見にもいろんな考えがあるそうだ。


 第四夫人は星見に強くて、バンプー殿下に女性名を取り入れることで、星廻りをよくしたようだ。


 でも記憶を失ったわたしに、バンプー殿下の名前である〝トスカ〟を名づけられたことが、裏切り者とどう関係してくるのだろう?


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時系列は母さま解呪→第一王子毒殺未遂からのマハリス事件→王妃廃人化? それなら王妃の廃人化と呪詛返しは関係ないのかな? 呪詛返しされたのは媒介を贈ったメイドとトルマリンさんだけ? 第四夫人が裏切り者…
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