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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
18章 権威に群がる者たちの輪舞曲
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第1046話 放課後の影絵④呼び出し

 寮に帰りると、寮母のロッティー女史が訪ねてきた。

 秘密裏に王宮に向かうようにとのことで、馬車まで案内すると言われる。


 普通の馬車だったけど、アラ兄、ロビ兄、アダムも乗っていたので、わたしももふさまと乗り込む。アダムも詳しい話は知らないそうで、緊急で呼ばれたと言った。

 少し不安はあったけれど、皆と一緒だからそこまで深刻にならずにすんだ。


 通された部屋には、ロサ、ダニエル、ブライ、イザーク、ルシオ、兄さまがいた。山のような食事が運ばれてくる。ビュッフェ形式で、好きなものを好きなだけたんと食べろということらしい。もふさまとアリの食事も、きちんと大肉盛りで用意されていた。

 部屋の中はわたしたちだけになったので、アリも飛び出て、もふさまと並んでご飯を食べ出した。

 挨拶もそこそこに、わたしもいくつか気になったものを選んでプレートを作り上げ、テーブルにつく。だって、お腹がすいた。

 隣に兄さまが座り、果実水を置いてくれる。わたしのを持ってきてくれたみたい。


 お礼を言っただけで、食べるのに集中。4分の3平らげたところで、周りにも目が行くようになった。みんな談笑しながら食べていた。

 兄さまはお茶を飲みながら、わたしを眺めている。


「兄さま、食べた?」


「夕食は済んでいたんだ」


 嘘だなと思った。多分、軽食をおやつの時間に食べただけだろう。

 そして兄さまの前に置かれたお皿の上も、ほとんど汚れてない。ちょこっとしかよそってないに違いない。


「このソースの麺、兄さま好きだと思うよ。持ってこようか?」


「いや、いいよ。それより、リディーの好きそうなデザートがあったけど、持ってこようか? お姫さま」


 それやったら、完全にパシりにしてることになるでしょ。


「自分で行くから、大丈夫よ。兄さまはなぜ呼び出されたか知ってる?」


「私も知らない。ね、リディー、スタンガンくんはどうだい? 君を困らせたりしていない?」


 そこまで言われて思い出した。


「あ。兄さま、ごめんなさい、昨日は寝落ちしちゃって」


 最初に思い出して謝るべきだったのに。挨拶もそこそこに食事に気がいっちゃったし。昨日は最初は普通に話していたんだけど、クラリベルのことが頭にあったから、途中からクラリベルのことしか話してなかった気がする。彼女の詳しい家のこととかはもちろん話してはいないけど、夢が叶わないだろうと思っている話はした。家に帰らないといけないだろうことも。

 うん、なんか一方的にずっと話していた気がする。

 兄さまはふふっと笑う。


「リディーは何かに一生懸命になると、その他のことを忘れるから。わかっていたことだよ。眠る前のリディーは甘えん坊になって可愛いし」


 わたしは問答無用で兄さまの口を押さえる。


「兄さま、黙ってて」


 兄さまはこくこくと頷いた。

 ふぅーと息を吐いて、手を離す。

 誰にも聞こえてないよね?


「へー、甘えん坊のリディア嬢か。なになに?」


「少し幼くなる感じかな。兄さ……」


 わたしはなにをいうかわからない兄さまの口を再び塞いだ。


「ストップ! ブライこっちに来て。本人が〝甘える〟真髄を見せるから」


「え? なんか怒ってない? 甘えるって顔じゃないんだけど」


 その時ドアがノックされた。陛下が入ってきて、みんな立ち上がり礼をした。

 助かったな、ブライ。


「急に呼び出してすまない。昨日の報告を受け、来てもらった」


 昨日の報告で?

 それに試験のメンバー全員でもないのね。

 まずは座ってと言われて驚く。ビュッフェスタイルのご馳走も、真ん中にあったテーブルの上もきれいになっている。

 一瞬で会議室になる。お茶をみんなに配ると、使用人さんたちは出ていった。


 陛下の近くになってしまった。

 お誕生日席が陛下で、宰相が後ろに立っている。

 陛下の右側の列がアダム、わたし、兄さま。アラ兄、ロビ兄。

 アダムの対面はロサ、そして順にダニエル、ブライ、イザーク、ルシオだ。


「いっときは、箝口令を敷いてしまおうかと思った。このことだけは伏せるように。けれど、切り離せない〝原罪〟となるのだろう」


 陛下が黙り込む。居心地の悪い時間。

 原罪?


「いや、すまぬ。どう話せばいいかと思ってな。ブレド」


「はい」


 陛下がロサを呼ぶと、ロサが返事をする。


「お前は公平さを求めるゆえ、此度こたびのことに胸を痛めるだろう。これは余の過ち。それを忘れてくれるな」


 なんか深い、怖いっぽい話だなと予想できてしまう。


「そしてリディア嬢。謝っても謝り尽くせぬが、王宮を束ねるものとして、君にここでまた迷惑をかけたことを謝罪する」


 え?

 また迷惑をかけたって、何?


 わたしの膝の上の手に、兄さまの手が合わさる。

 謝罪するって言われても、それが何かわからないと、何も言えないんですけど。


 と外が騒がしくなった。

 小さなノックの後、ドアが開かれる。


「誰も通すなと……」


「陛下、申し訳ありません。妾が無理をいいました」


 第二夫人……。

 陛下が立ち上がる。


「まだ寝ていなさい。顔色が悪い」


「いえ、妾のしたことです。伝える義務があります。あなたも入りなさい」


 ロサが第二夫人に駆け寄って支える。そして夫人の後ろを見て、少し驚いている。

 夫人は顔が青ざめている。手も小刻みに震えていた。

 そして、その後ろに立ったのはリノさまだった。


 宰相が陛下の隣に椅子を持ってきて、そこに第二夫人はお座りになった。

 体調が悪そうなこんな時でさえ、背筋を伸ばして座れられて姿勢がいい。

 その隣にロサが椅子を持ってきて、リノさまもお座りになる。


「夫人が、リノ嬢に聞かせたくて連れてきたのだな?」


 陛下が念を押す。


「そうです。妾は過ちを犯した。こんなことが二度と怒ってはなりませぬ。まだ成人していない子たちに、容赦のない話だとは思いました。

 けれど先日、第三王子殿下がおっしゃられた。出来事は年齢に合わせて訪れてはくれないと。次代の〝悪手を学ぶ機会〟になればいいと存じます。

 ……いえ、このせいで皆を巻き込んでいるのだから、それは悠長すぎるな……。

 いや、妾は謝罪したいだけなのかもしれない」


 なんか、とっても深刻??


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― 新着の感想 ―
フランツは知らないだろうが今日はスタンガンくんより困ったことが起きてるんだよね。 一件は和解済みでもう一件は先生にぶん投げてるから詳細不明なんだけどさ。 昨日ってことは集会場調査の話か?側室候補?襲…
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