表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
18章 権威に群がる者たちの輪舞曲
1033/1128

第1033話 地道な調べ物①マハリス邸

 役所で調べてもらえば1発だけど、一介の学園生が調べるとなると、家の遍歴を探っていくしかない。それも記録書から。

 どれも空き家に無断で入ったって感じだね。

 1回目に使用された空き家は、2週間後に壊されて新しく商会が立ち上げられている。セレクタ商会。聞いたことないな。

 一応セレクタ商会のことも調べておくか。

 これは商会などから聞いた方が早そうだ。前の家の持ち主についても、聞いた方が早い。


 わたしは2回目のマハリス邸跡地、スタンガンくんには3回目のロンナイ邸跡地について資料をあたっていくことにした。

 わかることが少なくて嫌になってくる。


「先輩、登記簿を見せてもらうのが一番早くないですか?」


「当然、そうね。でも、目的はなんて言うの? 同意書で一切合切を口外しないことになってるでしょ?」


「どうにでも申請できるじゃないですか」


「もし役所に関係者がいたら? 調べられているって気づかれるわ」


 そこが一番気をつける点なのだ。


「そうだとしても効率が悪すぎます。ここだけは役所から聞いた方がいい」


「だとしても、それは上が判断することだわ。どうしてもそう思うのなら殿下たちに申請をあげないと」


「では、そうします」


 え。

 彼は図書室を小走りに走って行ってしまった。足、早いな。


『追いかけないのか?』


 もふさまは図書室の床にお腹をペタっとつけている。


「ロサたちの判断に任せるわ」


 小声でいって、わたしは本をめくる。

 場所の所有者は確かに登記簿で調べる方が早い。わたしたちが役所に行って手続きを踏んだら目立つけど、ロサたちだったらピンポイントの場所だけでなく、このあたり一体の価値を調べたいとかなんとかいって、集会の行われた場所の周辺丸ごといくつかを調べるはずだ。そうすれば勝手に店でも出す気で調べているのか?と深くは考えられないで、集会のことを調べているとは気取られないだろう。

 それにしてもスタンガンくん、わたしを監視する勢いだったのに、早々にでてっちゃった。いいのかしら?


 マハリス邸跡地。

 う、事故物件か。

 っていうか、お家騒動があり、この地でかなり血が流されたらしい。

 それで買い手もつかなくて10年か。

 お家断絶ね。貴族名鑑を見てみるか。10年前。

 貴族名鑑の本が置いてあるところまで移動。

 マハリス、マハリス。あった。男爵家ね。

 5代目で途切れている。ストレ・マハリス。

 10年前の新聞はっと。

 今度は新聞を束ねてファイリングしてあるところに。

 おっと残念、3年前までのものしかない。

 どうしようかなと思っていると、後ろから声をかけられた。


「ご機嫌よう、シュタイン嬢」


「ご機嫌よう、マッキー先生」


 司書のマッキー先生は優しい茶色の瞳を和ませる。


「調べ物ですか?」


「はい。あ、先生、新聞は3年前までのものしかありませんか?」


「ここにはそうですね。いつのが見たいのですか?」


「10年前です」


「10年前ですか、保管庫にはありますよ」


 すごい10年前のものもとってあるなんて!


「わたしの閲覧は可能ですか?」


「はい、大丈夫ですよ。保管庫内の特別なスペースで、1時間単位の申請で見ることにはなりますが」


「はい、お願いします!」


 ノートを胸に抱きしめて、もふさまと一緒に先生の後についていく。司書さんたちのバックヤードを抜け、並んでいる保管庫。

 こんなふうになっていたんだ!

 マッキーさんはバックヤードで手にした鍵を、3と書かれた部屋を開ける。

 少しだけ埃の匂い。


「こちらです」


 促されて入る。

 中は教室くらいに広い。ほとんどが本棚で、その間は人がひとり通るのがやっと。


「10年前の新聞はこちらですね」


 と棚から新聞をファイルしたものを取り出してきて、少し開かれたスペースになっているところに置いてくれた。


「ありがとうございます」


「終わったら、私に声をかけてください。1時間ごとに私の方もこちらを尋ねます」


「ありがとうございます」


 もふさまは陽のあたっているところに寝そべる。

 わたしは机の上に新聞を広げながら、マハリスお家騒動の記事を探した。

 1月からめくっていく。

 やっと7月に入り、その27日に事件は起こっていた。


 5代目マハリス男爵、ストレ32歳。夫人27歳と子供が3人。嫡男6歳、長女5歳、次女3歳。

 男爵には弟が一人いた。お金の無心にきた弟マージ。彼は断られてキレる。ストレ男爵を撲殺。執事には部屋に入らないようにいって、夫人の部屋に。そこで夫人の部屋にあったと思われるナイフで夫人を刺殺。メイドが悲鳴をあげ、メイドふたり、止めに入った執事も刺されている。そのまま子供部屋に行き、甥や姪を次々と刺した。メイドふたりと執事ひとりが死亡。他怪我人が5人。

 その後、自分の家にて自殺。


 マージには借金があり、取り立て屋に追われる毎日。兄にお金を借りようとしたが今までも幾度も借りていて、返したことがないと男爵が周りに言っていたことから、申し入れを断られ、殺害されたのではないかと思われている。

 ストレ家も鉱山から鉱石が出なくなったことで困窮していた。使用人をグッと減らしていたのもその証拠で、貸せるようなお金がなかったと思われる。

 念のため、数日後まで何か新たにわかったことはないかと読んでみたけれど、目新しいことはなく。主のいないお屋敷で夜に女性の泣くような声が聞こえたとか。長女がピアノの練習をするような音が聞こえたとか。怪談の走りのようなゴシップが載っているだけだった。

 一家惨殺。それも弟が兄の一家を。そんな曰くのある家を集会場に選んだ。

 ただ長いこと空き家だったからか、それとも曰くを知ってのことか。

 これ以上、わかりそうもないね。

 と思った時にノック。

 入ってきたのはマシューさんとスタンガンくんだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
スタンガンくん登場時より脳筋というか直情型?になってない? 監視は良いのか…リディア先輩は口が上手いから誘導された?(してない) 一つ目は曰く付き物件か。罪の告白をする集会の場所としてはよく合ってる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ