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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
3章 弱さと強さと冬ごもり
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第103話 肩の力を抜いて(前編)

 やはり、みんなメインルームで見守っていてくれたようだ。


 アルノルトさんとピドリナさんは見事な戦いぶりだと絶賛してくれた。


 母さまからはありがとうと言われた。もっと強くならなくちゃねと涙を拭う。しんみりしていたのに最後には王子殿下に対してマナーがなってなさすぎだと笑顔で注意され、作法の短期集中講座を増やすと宣言されてしまった。

 もちろん、あれは対等に話を持っていくためにわざと言葉を崩したんだと言っても焼け石に水だった。それから字の大きさを揃えてかけるようになりましょうねとにこやかに言われて、字を書く練習もすることになった。うわーん。


 双子にはかっこよかったと言われた。本命がいてわたしを表立たせようとしていたことや、課題のことがなんでわかったんだとまくし立てられたので、女の勘と言っておいた。本気で怯えている。ふふふ、少しずつ種明かしをしていこう。


「私を守るために、利益を倍になんて無茶な取引して……」


 兄さまが落ち込んでいる。


「わたしこそ、兄さまたち、巻き込んでごめん」


 本当はそれが一番申し訳ない。


「巻き込む?」


 アラ兄が首を傾げた。


「アラ兄もロビ兄も、兄さまも、ロサ苦手なのに、友達ふりしてもらう必要ある。ごめん」


 兄さまたちは、わたしとまた別の理由でロサが苦手っていうか、嫌いとはまた違うのかもしれないけど、なんかね、空気が違った。避けれるものなら避けたいオーラが出ていた。だから、ロサと会う機会を設けるのは良くないわけなんだけど。わたしだけが会うことになると問題ありすぎだから。


「巻き込むだなんて、リディーはすっごくよくやってくれたよ? ロサのこと、……うん、友達にはなれないと思うけど、リディーとふたりで会わせる気はないよ」


「うん、オレもロサ、好きになれないだろうけど、リーのことは守るよ」


「リーはおれたちのことも、よくわかるんだな」


 3人とも許してくれたし、ロサと会うとき一緒に行ってくれるみたいだ。ロサに偽装の全てを任せるには不安があるから、少し考えておこう。




「リディー、成果を出すあてはあるのか?」


 父さまの顔は真剣そのもの。

 わたしは父さまに抱き上げるよう強制して抱っこしてもらい、父さまの顔を両手で包んだ。


「父さま、楽しもう!」


「?」


「領地、豊かしたい、みんな思ってたこと。その願い、と、ロサと取引、一緒だった。だから、わたし、ついてる!」


 兄さまの落ち込みも解除されてない。


「兄さまも、そんな、顔しないで。わたしたち、やれる! 特に2年、考えなくても、いける。2年で、これからのこと、ゆっくり考えればいい」


「なんで2年は考えがなくてもいいんだ?」


「レアワームで、領地、利益、マイナスだった、でしょ?」


「マイナス?」


「借金だった、でしょ?」


 父さまは頷く。


「それなら、少し、頑張れば1年目は軽く倍いく。次の年も、それぐらいなら、大丈夫。次、年からも、利益出るよう、調整しながら豊かする。それ考えるの、大変ぐらい」


「え? そうなの? もっと大変なことじゃないの?」


「豊かになる、普通に、大変。豊かになりたいから頑張る、普通のこと。普通に頑張ればいい。だいじょぶ」


「リディーがそう言うと、本当にそんな気がするな」


 まず、みんなの気持ちを〝大変なこと〟から〝普通のこと〟へと移行させていく。

 有利な契約に持っていきたいがために、大変そうなていをとったからね。でもそれはロサに対してのもので、契約内容はやりたかったことの延長上でそこまでのこととは思っていない。


「そ、普通、頑張る。どうしようもなくて、利益でないで、契約ダメなったら、よくないけど、外国でもどこでも、逃げるでいい。もふさまと、さよなら嫌なだけ」


 気持ちを楽にするために、逃げ道もあることも言っておく。


『なんで我とさよならになるんだ?』


「だって、もふさま、森の主人さま、でしょ? 外国、護りの森、外れる、でしょ?」


『空か、海か、地下に住むのか?』


 ?


「普通に、地上、思うけど。母さま、外国、空か海か、地下住むの?」


「いいえ、そんなことないわ。この国と同じように地上で暮らしているわ」


『なら、問題ない』


「外国でも、他の大陸、でも、もふさま、一緒、行ける?」


『ああ、森だからな』


 ? 


 話の途中だったが、守護補佐の魔石を出してもらって、みんなにも言葉がわかるようにしてもらった。

 もふさまにいろいろ聞いた結果、驚いた。


 わたしはてっきり、森の主人って言うから、森林の〝森〟を護る聖獣だと思っていた。

 もふさまは〝北の森の主人〟と呼ばれているらしい。

 聖獣は他にもいるけれど、もふさまレベルの使命を持った仲間は3人。

 北の森の主人であるもふさまの他は、東の空の主人、南の地下の主人、西の海の主人、と呼ばれている。東西南北のそれぞれの守護者なのかと思いきや、それも外れていた。

 北に住む地上の護り手、東に住まいがある空の護り手、南に主に暮らす地下の護り手、西で生まれた海の護り手、らしいのだ。生まれとか、主にいる場所の東西南北を付きで呼ばれているようだった。


 ってことは、地上全ての護り手なの?と尋ねればそうだと言う。護り手の〝森〟の定義はなんと〝地上〟だった。なんか思ってたのより、さらにでっかい存在だった。ずっと一緒にいてくれてもちろん嬉しいのだが、世界中の地上すべてが護るところならば、見回りとかしなくていいものなのか尋ねたら、眷属が見回っているからいいんだって。


 父さまたちも普通に〝森〟の守り手だと思っていたそうだ。

 人族に語り継がれてきたのが、葉っぱと同じ色の瞳をした、真っ白の大きな獣が森を守っている。実りがあり、暮らして行けるのは森が守護されているからこそ。森の主人さまは森の奥深くに住むので、見かけることはないが、主人さまが森を守ってくださっているから、人は生きていける。そう伝えられてきたらしい。


 初めて父さまたちがもふさまと会ったとき、わたしがもふさまの口の近くにいたから母さまは混乱してペチンと叩いたけど、父さまはすぐにその言い伝えを思い出したそうだ。兄さまも然り。

 そっか、それは嬉しい誤算だ。

 そっか。どこに行っても、もふさまといられるんだ!

 そう思ったら、わたしも、気持ちがもっと軽くなってきた。


「もふさま、何、楽しい?」


『楽しい、ことか? ……リディアたちといると、いろいろな体験ができて楽しいぞ。〝食べる〟のも楽しいな。うまいともっと楽しい。獣や魔物を追い立てるのも楽しいが、魔物狩りやダンジョンは面白かった。一緒に狩るのが楽しいことだと知った』


「もふさまと、ダンジョン探索、ウリになるかも、ね」


『どういうことだ?』


「もふさま、きっと、教える好き。言葉、魔具使って話す、できないけど。子犬、一緒ダンジョン、戦う。体使って、教える、人気出る!」


「言葉もわかりやすいけど、もふさまが尻尾で叩いて教えてくれたりして、あれでもわかったよ」


 ロビ兄が証言してくれた。

 もふさまは人と触れ合うことが、きっと好きだ。そう言ったら違うっていうと思うけど。


「もふさまとダンジョン攻略、ツアー組む」


「ツアー?」


「行脚、巡覧? んーー、ダンジョン、何階、もふさまとダンジョンアタック。お土産つき。一緒行きたい人、募集する」


「もふさまが先生で一緒にダンジョンを攻略するんだね、階を決めて限定で」


 兄さまに頷く。実際やるならもっと実現しそうなことに落とし込む必要があるけれど、もふさまが人といるのが楽しいなら、やれることはある。


「楽しい、伝わる、お金、なる」


 わたしはそれを伝えたかった。

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