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女と幼竜の邂逅

「はあ、どうしたらいいのよ」


 組織に命令されて鉱山都市に潜入したはいいけれど、何から手をつけていいのかわからない。


 なにしろ、鉱山がある火山地帯は灼熱地獄。人間である自分は耐える事ができない。


「竜人にやらせればいいじゃない、こんな仕事」


 アウラライト鉱石。幻と言われているその鉱石の鉱脈を秘密裏に見つけてこいだって?

 そんな、あるかどうかもわからないモノを、私にどうやって探せと?


 とにかく、竜人の協力者を探すしかない。

 だが、私にとってはそれがとてつもなく高いハードルなのだ。


 何しろ、私は極度の人見知りだ。


 初めて会った人と、目を合わすことすらできない。


 友達? は? 何よそれ。


 一応、女の武器ってやつを駆使できるかもしれないと思って、女の姿で潜入してみたんだけど。

 これって、逆に男の姿の方が良かったんじゃないかしら。


 この街の竜人の鉱夫は、ガサツそうな人ばっかりだ。


 色恋よりも、男の友情!とか言いそうな感じ。


 ああ、うざい。

 そんな奴らの相手なんか、死んでも嫌だわ。


 そんなことを考えているうちに、なかなかの手詰まり状態に陥っていた。


 しかもこれは、裏の組織の仕事。堂々と表通りも歩けやしない。


「まあいいわ、適当にやったふりして、見つかりませんでしたーって言って帰ろ」


 だって、今まで誰も見つけたことないんでしょ?


 いつもの狭い路地をぶらつきながら、適当な時間つぶしを探していた、その時。


 道端で、ぐったりしている物体を発見した。


「……え、なにこれ」


 動物? の、死体?

 いや、違う。これは、ドラゴン? ドラゴンの赤ちゃん?


 こんな小さいドラゴン、初めて見た。


 私は、引き寄せられるようにそのドラゴンに近づいていき、それを抱き上げた。


 あ、まだ、生きてる。でも、ひどい傷だ。

 あちらこちらから血が流れている。瀕死の状態に見えた。


 私は無意識に回復呪文を唱えていた。こんな私の魔法で、全快するかどうかはわからなかったが、気がつけばそうしていた。


 幸い、傷はそれほど深くなかったみたいで、なんとか私の魔法で傷は癒えたみたいだった。

 すると、ぱちっと目を開けたその幼いドラゴンは、私の方を見て、嬉しそうに一声鳴いた。


「え、か、かわいい」


 思わず、抱きしめてしまった。

 幼い頃から一人だった私は、何かを愛でることも、可愛がることもなかった。自分にそんな感情があることも忘れていた。


 でも、この目の前にいるつぶらな瞳の幼いドラゴンは、私に向かって全幅の信頼をよせるように鳴いた。それが可愛くて仕方なかった。


「よしよしよし。かわいいなあ、お前は。どこから来たの?」


 ドラゴンは、また一声鳴くと、私を引き連れて小さな建物に入っていった。そこが自分の家だと言わんばかりに。


 その建物には、年老いた竜人が二人住んでいた。

 そこで、このドラゴンが傷ついて倒れていたこと、それを治療したことをなんとか伝えた。

 二人の竜人は、私の話を疑う素振りもなく信じてくれた。

 そして、そのドラゴンは勝手にうちに住み着いてる奴だから、君の好きにすればいいと言ってくれた。


 私は、ドラゴンに「ミルラ」という名前をつけた。


 私が何かの名付け親になるなんて、想像もしていなかったわ。


 ミルラは、私にとても懐いてくれた。

 ドラゴンが何を食べるのかわからなかったので、いろんなエサを与えてみた。

 でも、ミルラがそれを食べてくれることはなかった。


 ただ、ミルラは何も食べなくても、いつも元気いっぱいだった。私が会いにいくと、すぐに私の胸に飛び込んできてくれる。


 そんなミルラが愛おしくて、毎日毎日、ミルラに会いにいった。


 ミルラに鉱石探しを手伝ってもらおうかと、ちょっと話してはみたんだけれど、何を言っても嬉しそうに一声鳴くだけだった。

 言葉が通じてるのかどうかもわからないし、まあ、いいや。



 ある日、組織から帰還命令が来た。

 私は、すぐに出発しなければならなくなった。

 別の仕事が入ったので、次の場所に移動しろというのだ。


 組織の命令は絶対だ。逆らうことはできない。

 私は、その日の夜にはもうダスカを離れていた。


 心残りがないとは言わない。なにせミルラは、私に初めての感情を与えてくれた存在なのだから。

 でも、自分はそうするしかなかったのだ。



 いつか。


 いつか、絶対会いに行こう。


 それがたとえ、何年先、何十年先になっても。



 その時、ミルラは、覚えていてくれるかな。



 覚えていてくれると、いいな。

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