とある転生者の呟き
「もう僕も16歳か……」
とうとうこちらで過ごした期間が前世の長さを越えてしまった。
自分のことを「僕」と言うのにもすっかり慣れてしまったなあ。
でもこの16年間、悪くはなかった。自分なりに充実した日々を送ってこれた気がする。
前世、私はごく普通の女子高生だった。
無事に高校受験をこなしたあとは、ごく普通に学校に通い、ごく普通にサッカー部のキャプテンに恋をし、ごく普通に放課後を友達と過ごす。
何も特別なことはなかったけど、楽しい日々を送っていた。
でも突然、その日常が終わってしまった。
最後に覚えている景色は、工事中のビルから落下してくる無数の鉄骨だった。
私はその下敷きになったのだろう。
気がつくと目の前に赤いスクリーンがあった。
どうやら私は死ぬ予定ではなかったらしく、異世界への転生を勧められた。
はじめは意味わかんなかったんだけど、どうやら別の世界で生まれ変わる、みたいな話だった。
私は泣いて元の世界に戻してくれと頼んだのだが、それは無理だった。
だったらと、どうせ生まれ変わるんなら、何かの天才にしてくれと言った。
その世界で、他に類を見ないくらいの天才。
意外とその要望はあっさり受け入れられて、私は別の世界で男の子の赤ん坊として産まれた。前世の記憶を残して。
生まれ変わった私は、確かに天才だった。他の子供、いや大人を含めて簡単にはできないようなことを、次々とこなして見せた。
勉強もたくさんしたなあ。
前世ではあんなに嫌いだった勉強。
でも、高校に入ってから勉強してこなかった事を相当後悔していたので、今回は最初から一生懸命勉強した。
不思議と知識を得ることは全然苦ではなく、むしろ楽しかった。
おかげで、あれよあれよと飛び級し、まれに見る若さで出世していくことができたのだ。
「次の仕事は、調査か」
そう呟きながら、目の前に積まれた書類の一枚を手に取る。
そこには、「凶暴化した動物の対策と原因究明」と書かれている。
場所は、フォーレンの森か。
噂には聞いていたが、どうやら急を要するみたい。
前世では考えられなかったが、今は自分の力が多くの人の助けになっている。
それがとても嬉しい。
「よし、がんばりますか!」
私は、愛用の杖を取り、護衛の騎士とともに森へ向かうのだった。




